前向きな消去法のススメ
会社を始めて5年半。
一つ前のnoteでも書いたが、ここ半年間は大きな過渡期だった。
デザイン・制作業、飲食業、ライフスタイルブランドの運営と、幅広く事業に取り組む中で、伸びる事業、停滞する事業の明暗がはっきりと分かれ、会社経営の舵取りの取捨選択を迫られる期間になった。
上手くいかない事業を見ていくと、やはりそこで働くメンバーのモチベーションに陰りがあることに気づく。ではなぜモチベーションが離れているのかを分析していくと、「理想と現実がかけ離れている」事実に行き着いた。
事業に取り組む中で難しいことは、「自分達がやりたいことと、自分達が求められていることは必ずしも一致しない」ということだ。
何をするにも、世の中に求められていることでないと上手くいかない。
例えば店舗経営であれば、その土地のその風土の中で、そこで生活する人々に受け入れられなければ、お店は繁栄しない。
そんなことは当たり前ではあるが、当事者としてやっていると意外と気づけないことも多い。
自分の理想を追い求めてしまい、冷静に消費者視点に立ち返ることを怠ってしまう。
以下は本で読みハッとした一節。真理だと思う。
例えば飲食業であれば、料理やカクテルに向き合えば向き合うほど、提供物の精密性や複雑性を上げたくなる。
だけど、店舗によっては、それが求められてないこともある。
求められていないというか、そこにいる利用者が、提供物のこだわりを理解出来ないのだ。
自分が良いと思うこと、理想としていることがお客様に理解されない現実を直視すると、提供者は当然モチベーションを失ってしまう。
提供物へこだわるということは、その分工数が上がることを意味するため、オペレーションの中で犠牲にすることも多い。技術を要することで属人的になり、代替性を損なうことで、運営効率は下がっていく。とても難しいことに、現場はめちゃくちゃ頑張っているのに、成果が上がっていかない。
つまり、理想と現実がかけ離れていることで、どんどん悪循環に陥っていくのだ。
これはデザイン事業にも同じことが当てはまった。
実績が少ない僕達にとって、「自分達が作りたいものを自由に作る仕事」ではなく、「クライアントが作りたいものを、限られた予算で形にする仕事」が大多数を占め、デザイナーのモチベーションは失われていった。
こういった悪循環が起きると、事業は思うように伸ばせなくなり、停滞していく。
ここ最近、どうしたら良いかずっと考えていて気づいたことは、停滞するということ自体が、自分達の方向性が間違っているというヒントだということだ。
そんな思いを巡らせる中、以下のツイートが流れてきて、自分の気づきを正確に言語化していると頷いてしまった。
これは本当にそのとおりで、間違った方向に努力している時は、がんばっているのに前に進めない。前に進めない理由を考えていくと、ヒントは必ず顧客(世界)からの反応にあると実感する。
消費者視点になって考えてみると、「これは自己満足だったのかもしれない」と気付くことも多い。
何かしら噛み合ってないもの、理想と現実がかけ離れていたものは自然と破綻して消えていく。だけど、全てが消えるわけでは無く、残ったものは必ずある。
それが自分達が追求するべきものなんだと思う。
消去法というとネガティブに聞こえるが、残ったものに活路を見出し、自分達が追うべき提供価値や、向かう方向を定めていくことが大事だ。
思えば、僕達が始めて池尻大橋にLOBBYというバーを始めた時も、前向きな消去法だった。
飲食業界出身じゃない自分達には料理を伴う業態は難しい。
機材の先行投資が大きく、かつ昼に稼働しなければならないカフェ業態も無し。
となると、専門機材無しで安価に店が作れ、仕込み無く仕入れ品だけで飲み物を提供できるバー業態に辿り着いた。バーならば、昼の仕事があっても、自分達が夜の現場に立つことができる。
(バーテンダーという仕事の奥深さは、店を始めてから目の当たりにし、それからは必死で勉強しながら知識を身に着けていった。)
決してバーをやりたくて始めたわけではなかったが、そこに活路を見出して、モチベーション高く、楽しみながら成長させてきた。
「正しい方向に努力している時は勝手に前に進む」の言葉通り、上手くいくことはスムーズにことが運んでいく。
これは会社経営だけでなくて、自分自身のキャリアにも同じことが言えるのではないだろうか。
生きていると判断を間違えることは度々あるし、頑張っていても成果が出ないことに直面する。
そんな時は、前向きな消去法で、自分が向かう正しい方向性を見定めるチャンスなのかもしれない。