「とりあえず起業」から6年半、ようやく辿り着いたスタート地点。& Supplyのこれまでとこれから。
2018年7月に会社を立ち上げてから6年半が経った。
僕が経営する株式会社and Supplyは、社内外多くの方に支えられ、ありがたいことに無事今日まで事業を続けることができている。
31歳の時、事業計画も無く会社を立ち上げてから様々な変化を経て、当初とは思いも寄らない今に行き着いた。現在はLOBBY、nephew、Hone、Staff Onlyという飲食店4店舗に加え、ライフスタイルブランドMYTONEを運営している。社員は26名になり、アルバイトスタッフを含むと50名を超える組織に。昔はとにかくリーダーを避けてきた自分が、こんなに多くのメンバーを率いることになるなんて想像もしていなかった。
そんな6年半の中でも、特に2024年は大きな転換期となる1年間だった。
会社としては史上最も飛躍的な成長を成し遂げ、未来への新たな展望が見えている。客観的にその事実を見ている中で、なるほどこれが自分達がやるべきことだったのかと、これから向かう先が明確になった。
そんな2024年の飛躍を経て、2025年は第二創業期として、新たな方向に舵を切ることに決めた。
このnoteでは、「& Supplyとしてこれから何をしていくのか」を、社員やお客様、これから関わってくれる方々へ宣言する意味を込めて記していく。
設立から時系列的に書いていくので、今 & Supplyで働くメンバー、これから入りたいと興味を持ってくれている方に読んでいただきたい。1.9万字とかなり長文だが、僕が考えていることや、& Supplyの組織としての方針がよくわかると思う。
※僕達のことを知らない方には実感しづらい内容が多いとは思うが、奮闘する中小企業のリアルな歩みということで読んでもらえたら嬉しい。
これまでの歩み
& Supply立ち上げの経緯
前述の通り、& Supplyは6年半前、2018年7月に僕が一人で立ち上げた会社だ。独立当初は、元々会社員時代に専門としていたWebマーケティングの仕事で生計を立てていた。ありがたいことに前職の担当顧客から引き続き発注をいただけ、広告運用やコンサルティングをメインに仕事をしていた。
学生時代から30歳を期に自分で何かを始めようと考えていたので、会社員時代はひたすらそこに向けて準備をした。日系、外資系二社を渡り、新規営業から既存顧客へのルート営業、更に広告運用まで包括的に経験した。独立後に自分ひとりで顧客との仕事を完結できるスキルを身につけるため、計画的に転職、部署異動を行いキャリア形成を進めた。そうして、「専門職のWebマーケティングで食いっぱぐれることは無い」と確信したタイミングで独立に踏み切った。予定の30歳からは1年遅れて、31歳になったばかりの頃だ。
元々なんとなく独立を考えていたことに加え、会社員時代の経験がそれを後押しした。一言でいうと、巨大組織に馴染めなかったのだ。特に、一社目の日系企業でこの原体験を得た。
僕が働いていた会社はITの大企業だったので、そこには多種多様な人が働いていた。当然、休日の過ごし方や趣味、着る服の傾向等興味の向く先は異なるので、仕事を主な起点に繋がる関係性だ。それは社内はもちろん、社外の取引先にも同じことが言えた。
仕事で関わる現場では気の合う人々に巡り合うことができず、職場では必要最低限の関わりを貫いた。昼休みはデスクで食事をとってからスタバに籠もり、飲み会やゴルフといった社内イベントには参加しない。部署全体の飲み会でも2次会には行かず、颯爽と帰る若手社員だった。当然先輩や上司からは可愛がられていなかったので、出世ルートには全く乗っていない。
とはいえ働いていたのは営業部署。営業として避けられない飲み会も少なくない。取引先の代理店との飲み会が嫌すぎて、皆が目を離した隙に金網を登って途中で帰ったり、盛大に酔っ払ったふりをして道路に突っ伏して追手を撒いたりと、あの手この手でかわしながら働いていた。
職場の関わりを最小限にする分、仕事が終われば昔からの仲間達と、三軒茶屋の行きつけの店に集まる日々を過ごしていた。周囲の仲間達は働く業界も近く、ライフスタイルや興味関心も同じだったのでとにかく気が合った。
週末はキャンプに行ったり、イベントを主催して似たような仲間達を集め、徐々にその輪が広がっていった。その時にも一緒にいたのが、& SupplyのCOOの倉嶋歩であり、全店舗の設計を担当している土堤内祐介である。(倉嶋は大学生時の学生団体の仲間で、土堤内は高校時代からの同級生。それぞれ15年以上の付き合いになる。)
こんなふうに、「職場でモヤつきながらも働き、退勤後に仲間達と充実した時間を過ごす」形で、公私を切り分けて日々を過ごしている人はとても多いと思うし、世の中の当たり前なのかもしれない。
でも僕は、この状況には耐えられなかった。
もしこの仲間達と仕事をしていたら、どんなに心から毎日を楽しめるだろうか。
人生の三分の一の時間は仕事に費やすのだから、仕事の時間に共感できる仲間に囲まれていたら、毎日が更に充実するに違いない。
仕事と遊びの境界線を無くした生き方を実現したい。
そんな場所がないなら、自分で作るしかない。
「公私関わらず、共感できるライフスタイルを持つ人々と日々を過ごすことが、自分の人生にとって重要なのだ」ということに気付いた僕は、以前からなんとなく考えていた独立を形にし、この理想の場作りを自ら実現化することに決めた。26歳頃の話だ。
そこからは独立に向け力をつけるためだけに転職と部署異動を重ね、会社の肩書がなくても生きていけると確信を得たタイミングで起業し今に至る。特に事業計画はなく、「とりあえず起業」した形だ。
この時に気づいた自分の価値観は、& Supplyの空間作りやブランド作りでも生き続けている。
最大公約数に好かれるものを作るのではなくて、「世界の中に、少なくても確実に存在する自分と同じ趣味嗜好の人達」に届くものを作る。
これは僕が事業に取り組む上で大切にしている考え方だ。
▼独立当時に書いたnote。この時はアーティストエージェンシーを標榜していた。
& Supplyという会社名の由来
& Supplyという名前は、「自分達のアイデアを通して、既存の概念をアップデートする新しい価値を生み出そう」という意味を込めている。
26歳くらいの頃、土堤内と原宿を歩いていた時のこと。「Denim & Supply」というラルフローレンの派生ブランドを目にし、これだ!と思いついた。
当時の僕は、「会社員は合わないとモヤつきながらも、明確なやりたいことはなく行動が起こせない」と、悶々とする日々を過ごしていた。
好奇心は強いので、新しいことにすぐ飛びつくも、続かずにまた別の興味に移ってしまう。それがコンプレックスでもあった。共感する人は多いはずだ。
そんな時に、このDenim & Supplyというワードを見てビビッと来た。
Supply = 供給する
「〇〇 & Supply」という形にすれば、冒頭に何が来ても成り立つ。
これを見た時に、「その都度興味のある物事に取り組み、世の中へ供給する内容を変えていくのも良いんじゃないか。自分のミーハー心を否定するのでなく、肯定してしまおう!」と思ったのだ。
時代や場所によって提供価値が変わるのを前提にすれば強みになる。
自分達が供給するものは、既存の概念をアップデートするアイデアなんだと定義した。
この時に、将来自分の会社を作ったら、会社名は& Supplyにしようと決めた。
(この流れで26歳当時僕達が始めたのが Paint & Supplyというレタリングユニットだ。今は忘れ去られてしまったが、当時は雑誌等メディアで引っ張りだこだった!)
こんな背景が後押しして、飲食店やブランドの運営など、未経験でもその時興味が向いた事業にチャレンジしてきたのが & Supplyのあり方である。
設立初期:LOBBYとデザイン会社の立ち上げ
先述の通り、独立初期は一人でWebマーケティングの仕事をしていた。
クライアントを複数社抱え、自身でもアフィリエイトメディアを運営しそれなりに成功したので、一人で生きる分には十分過ぎる程の売上が作れた。
だが、この形での寿命は持って3年だろうと思っていた。
プロの仕事はそんなに甘くない。第一線を退いた自分のマーケッターとしてのスキルセットはどんどん陳腐化していくのは間違いなく、日進月歩で進化するWebマーケティングの領域では活躍できなくなるはず。
同時に、独立したのに会社員時代と同じことをやっている日々に、「自分は何をやってるんだろう」と虚無を感じたのもある。幸い利益が出ていたので、やりたいことを形にする軍資金はあった。一人だったので、自分に向き合う時間もたっぷりあった。
「本当にやりたかったことはなんだろう」と考えた結果、学生時代からずっと夢だった空間プロデュースの事業化に舵を切ることにした。
やることが決まったらあとは行動に起こすのみ。
まずは仲間集めということで、当時京都に住んでいた土堤内を説得しに訪れ、「使えるお金はあるから、人生かけてやりたいことやらない?」と問いかけた。
「やっぱり自分達の理想の空間、人が集まる空間を作りたいよね。」
彼が答えたその言葉をきっかけに、飲食店をつくることにした。選んだ業態は、昼の仕事も並行して運営できるバーだ。
バーの開店準備が始まってから程なくして、倉嶋が当時働いていたケニアのスタートアップを辞め、日本に帰国する話を聞きつけた。すぐさま一緒にやろうと誘い込み、仲間が三人になった。二つ返事で仲間入りしてくれた二人には、感謝してもしきれない。
こうして、2019年の4月、一号店のLOBBYが生まれた。
誰一人としてバーテンダーの経験は無かったので、YouTubeや本で勉強し、バーにも足繁く通いながらなんとか形にしていった。
LOBBY立ち上げの経緯の詳細は、以下のnoteに記している。
過去に記したnoteやインタビューでも伝えてきた通り、LOBBYは自分達ができることを世の中へ発信するためのショーケースとして作ったお店だ。飲食業での収益化を目指すというより、空間プロデュースを請け負うための事例を作るのが目的だった。
だからこそ、「最大公約数に好かれるものを作るのではなくて、世界に少なくても確実に存在する、自分と同じ趣味嗜好の人達に届くものを作る。」という価値観をそのまま形にしている。
古びた雑居ビル。どこに入口があるかわからない導線を抜けると、高い天井の抜けた空間が広がる。ビルなのに、上下階が繋がったメゾネット仕様が珍しい。
初めて物件を見た時に、「これこそが自分のアイデアを形にする場所だ。」と直感した。
ここなら、普通の人はあまり入ってこない。
お店を知っている人や、未知なものに飛び込む変わり者だけが辿り着ける場所。飲食店としては避けられる物件だが、互いに共感しあえる仲間に巡り合うための場作りにはうってつけの物件だった。
その目論見は的中した。分かりづらい場所にある排他的な入り口は、こし器のように、ある種のスクリーニングの機能として働いた。
実際にLOBBYの初期は、ライフスタイルの価値観が似ている人々が集まり、人と人とが繋がり合うコミュニティになっていた。「LOBBYに行けば誰かがいる」状態ができ、自然と人が集まってくる場。LOBBYを起点に& Supplyにも仲間が増え、チームも少しずつ拡大していった。
この時から2023年末までは、自分達のことをデザイン会社だと標榜していた。将来的に空間プロデュースを事業の中心とするために、まずはグラフィックや内装設計等デザイン制作を事業主体としていた。
クライアントワークで食べていくと決めていたし、そのための行動をしていたので、社内にデザイナーも増えていった。
当時の僕と土堤内は32歳、倉嶋は30歳になる年代。
まだ若く子供もいなかったので、昼も夜もとにかく働いていたが、労働だと思ったことはない。とにかく楽しくて、自然とそうなっていた。
共感できる仲間と、仕事と遊びの境界線を無くした生き方を実現する。掲げた理想をまさに体現でき、充実した日々を送っていた。
(余談として。よく友人と会社はやらない方がいいという意見を聞く。僕の場合は、友人達と取り組んできたこの6年半は最高の時間だった。二人のおかげで常に充実した日々を過ごせたので、友人とやってきて心から良かったと思っている。)
増える自社事業:MYTONEの立ち上げ
好調な日々が続くのかと思いきや、人生そう上手くはいかない。
LOBBYとデザイン事業の経営が軌道に乗ってきた2020年、コロナ危機に直面することになる。他の会社同様、僕達も窮地に立たされた。
デザイン案件はほぼ全てが消し飛び、緊急事態宣言でLOBBYも営業ができない。
頭を悩ませた結果、「やれることをやろう」と始めたのがホームグッズブランドMYTONEだ。
平面のグラフィックデザインで作れるファブリックアイテムなら自分達で完結できる。「どうせやることもないし、やってみようよ!」と、勢いだけで取り組んだ。
▼以下がブランド立ち上げ時のnote
立ち上げたはいいものの、当時の売上は泣かず飛ばず。
程なくして緊急事態宣言は解除され、デザイン業も通常稼働に戻ると、会社のリソースはメインの事業に再配分されていった。そもそもMYTONEも、自分達のデザイン事例にする目的も強かったので、クライアントワークを目の前にして必然的に優先順位は下がっていった。
MYTONEが大ブレークを果たすのはそこから3年後の話だ。
2号店 / nephewの立ち上げ
飲食店にも人が戻り始めると、今度は2号店となるカフェの立ち上げが浮上する。
LOBBYは業態的にも立地的にも嗜好性が高く、排他性が高いお店だった。そこで、「もっと間口が広く、街のインフラになるような飲食店に挑戦したい」と考え、カフェバーの企画が持ち上がった。
そうして2021年4月、代々木八幡に出店したのがnephewだ。
▼nephew立ち上げ期のnote
nephewはオープンからSNSで一気に拡散され、瞬く間に人気店となった。
自分達がデザイン会社として熱を込めて空間投資した内装が、「インスタ映え」という言葉で消費されてしまったことに戸惑いを覚えながらも、「現代の店舗運営において何が重要なのか」学びの機会となる出店だった。
この頃から、僕の中で事業としての飲食業に興味を持つようになる。
LOBBYは、「自分と、自分の周りの人が欲しい場所を作る」という考え方で、狭く深く作っていた。
一方nephewは、朝から夜まで営業し、「老若男女あらゆる人がいつでも使えるお店」を目指した。来店客の多さは、多くの人の喜びや幸せへの貢献に直結する。その結果が売上・利益として反映されていく。事業主として、大きなやりがいのある仕事であると再認識した。
そんなnephewの繁栄は、僕自身が現場に立っていても作れなかったと思う。僕や倉嶋は、立ち上げ初期以降は殆ど現場に入らず、マネージャーに任せる運営方法を取った。
nephewの繁栄の礎を築いてくれたのは、カフェ部門を立ち上げてくれた黄川ケイミだ。
彼女が作った焼き菓子とコーヒー、接客というコンテンツをベースに、メンバーがやりたいことを形にできる組織風土を作り上げてくれた。
「自分達ならやれる」と、どんどん新しいアイデアを実行し、成果を上げ続けるチームになった。この風土は今でも残っており、開業以来絶えず成長を続けている。
この経験によって、
・店舗運営は人が全てであること
・マネージャーの働きによって店の成長が左右されること
を学んだ。
3号店 / Honeの立ち上げ
二店舗を運営し、飲食業にどっぷり浸かり始めた僕は、今度は食領域に興味を持ち始める。
色々なお店を食べ歩く中で、いつかは食事が楽しめる空間を作りたいと思うようになっていた。
nephew立ち上げから半年程経った頃、興味本位で物件を探していると、またまた面白い物件に出会ってしまった。
ちょうどその頃、当時LOBBYの2Fにあったオフィスが手狭になり引っ越しを考えていたので、この物件をオフィスとレストランが同居する新たな拠点にしようと決めた。
そしてnephewのオープンから1年3ヶ月後、2022年7月にHoneがオープンする。
▼Hone立ち上げ時のnote
バー、カフェときて、今度はレストラン。
僕達自身レストランで働いたことがなく、料理やワインのサービスも未経験。またも未開の領域への挑戦に心が躍った。
料理人のツテもまったくない中、店作りの工事が始まった。不安は多少あったが、適切なアクションは起こしていたので、なんとかなるだろうと思っていた。
過去の経験からわかったこととして、何かを始める時は、先に動き出してしまったほうが良い。
何かを始めるにあたり、完璧な準備を整えるのは不可能だ。でも、動き出して期限を決めてしまえば、それまでにやるべきアイデアが出るし、実行できるようになる。人間、なんとかしようと思えば、なんとかできるものなのだ。
Honeにおいても、程なくして後のシェフとなる富田からの応募が届いた。
素人集団の中で唯一の経験者として獅子奮迅の活躍を見せてくれ、Honeが立ち上がった。
彼の加入もまた、& Supplyの飲食業を一段上にレベルアップさせる重要な出来事だったと思う。富田の料理を起点に、料理人や食好きな層から& Supplyが認知され、飲食業に真剣に取り組むチームのイメージが形成された。
それまでは、どうしても「& Supplyは片手間で飲食をやっているチーム」と見られている節を感じていた。実際に& Supplyに応募をしてくる人は、「カルチャー領域で何かがやりたい」人が大半で、「飲食業でチャレンジしたい」人は稀だった。
だが、Honeができてからは、料理人やサービス等、飲食業を生涯の生業とする覚悟を持った人々からの応募が増えた。
この変化を引き起こしたHoneの存在意義は会社として非常に大きい。レストラン業態の経営は飲食業のなかでも最高難易度だと実感しているが、その分多くの恩恵をチームにもたらしている。
このように、各チャレンジのフェーズで、局面を大きく打開する仲間が加わり、チームをアップデートしてくれた。チャレンジを続けるからこその成果だ。
Honeでは、立ち上げから1年ほど、僕も倉嶋も現場に入りサービスを担当した。急な人員部不足によるやむない対応だったが、結果的にこれが功を奏した。
現場に入るにあたり、レストランに関わるあらゆる仕事を一から学び、そしてその魅力や喜び、難しさや葛藤を目の当たりにした。
レストランとは、お客様から預かった数時間を特別な時間に演出して、幸せな感情を作り出す仕事だ。そのために、料理や飲物、内装、サービス、音楽等あらゆる手段を駆使する総合格闘技。預かる時間も金額も大きい分、責任もプレッシャーも大きいが、だからこそやりがいがある。
人々が料理に空間に、目をキラキラさせて楽しむ姿を目の当たりにすることで、その場を提供する自分も喜びを得られる最高の仕事だと思う。
同時に、そのために必要とされる知識量や業務量の多さ、結果として生まれる長い労働時間や高い原価率からなる低い営業利益率は大きな課題だ。これは構造上の業界課題なので、多くの経営者が頭を悩ませているし、僕自身常に打開策を考え続けている。(これについては後の章で述べる。)
また、Honeでは集客の課題にも直面してきた。
他の店舗と同じく、裏通りの更に奥まった場所に出店したため、外から中が閲覧できない。普通に歩いていて目に触れる場所に無いので、集客難易度が高い。この立地で30席・客単価1万円弱のレストランを毎日満席にするのは簡単ではない。
飲食店は立地が重要とよく聞くように、人通りが多い道で、店内が見える場所に出店するほうが絶対に良い。駅前の路面にあり、1日2,000人が通れば月に6万人に存在を届けることができる。でも、裏通りの奥まった場所にあり、外から見えない得体の知れないお店は、この6万リーチが無いところで戦わなければならない。つまり、オンラインリーチを取り続けるしか無い。
だから僕達は、InstagramやGoogle Mapsを最適化し、オンラインでの集客活動に力を入れている。
飲食店を収益化するためには、毎日、全ての営業時間帯を満席化する努力が不可欠だ。そのためにはマーケティングの力も必要になる。現場でこの課題に直面する経験がなければレストラン経営はできないので、Honeでの勤務は実りのある時間になっている。
デザイン会社としての停滞とリーダーとしての葛藤
こう書いていくと、どんどん新しいことにチャレンジして堅調な成長に見えるが、デザイン業には暗雲が立ち込めていた。全てが順風満帆に進むほど甘くはない。
店舗が増え、自社事業が増えるに反比例し、デザイン業は縮小するようになっていく。案件数が年を追うごとに少なくなっていき、売上は下降線を下っていった。
売上が下がってくると、とにかくまずは案件獲得が必要になる。だが、その時点で僕や倉嶋は毎日動き続ける複数の自社事業を横断していたので、自らが営業活動の時間を増やすのは難しかった。
そこで、デザイナー陣にも営業目標を設定してしまった。これが大きな仇となる。
本来得意とする仕事ではないことをやらせることになってしまい、チームの歯車は全く回らなくなってしまった。結果的に、チームの自己効力感も下げる結果に繋がってしまったと思う。
この失敗を経て今思うのは、とにかくメンバーには「得意なことにフォーカスしてもらう」のがベストだということだ。一人ひとりのメンバーが、体が自然と動いてしまうことに集中できる環境を整えるのが、リーダーの役割だと実感している。
Honeができてから1年後。2023年の期間は組織の停滞期で、退職者も続き、なかなか思うようにいかずに悩みが多い時期だった。この時期の停滞は、リーダーである自分の力不足に他ならない。
振り返ると、自分自身何に集中するべきかが曖昧になってしまっていて、行き当たりばったりな経営になってしまっていた。
そんな当時の心境を以下のnoteに綴っている。
大前提理解すべき事実は、「全員がめちゃくちゃ頑張っている」ことだ。客観的に& Supplyを見た時に、誰一人として手を抜いているメンバーはいなく、全員が真剣に仕事に取り組んでいる。それは今も昔も変わらない。
であれば、伸ばせないのは頑張る方向が間違っているということ。リーダーの責任である。
正しい方向性を見つけ、チームをそこに集中させて成長に導くことがリーダーの使命だ。また、事業成長とメンバーの成長のスピードは相関している実感がある。リーダーはメンバーの成長にも責任を持っている。
僕自身がやりたいことに共感し、数ある会社組織の中で& Supplyを選んでくれたメンバーには、将来この場にいたことを肯定できるような成長を約束したい。
そのためには「抜本的に何かを変えなければならない」のを自覚していた僕は、熟考の末一つの結論に辿り着いた。
それが、「クライアントワークを脱却し、自社事業へ集中する」という方針だ。
この方針を基に、2024年初頭から実施したことを次の章でまとめていく。
方針転換と、2024年にやったこと
クライアントワークを脱却し、自社事業へ集中する
先の章でも書いたように、元々僕達が飲食店を始めたのは、将来の空間プロデュース業への事例とするためだった。それがいつの日か、僕の中では目的が入れ替わっていた事実に気がついた。
以前自分がイメージしていた空間プロデュースの定義は、箱とコンテンツ作りを受託し、ハードウェア(空間)を生み出すまでの仕事だった。空間が完成したらクライアントへ引き渡し、自身は運営には介在しない。
だが、自社事業を通して、ハードだけを作るのでは関わりが断片的になり、理想の場作りは実現できないことを強く実感した。
場作りは、空間が完成して終わりではない。むしろスタートだ。
その場で生まれる人との関わりや喜びを提供する事業活動を通して場が育ち、意義を持っていく。そこに介在する人々が変われば、場は様相を変える。まさに生き物だ。これはブランドにも同じことが言える。
自社店舗と自社ブランドの運営を経て、僕は自分自身で作り出した場を育てることにこそ意義とやりがい、喜びを見出していた。
空間の作り手として、ハードもソフトも責任を持って運営したい。
いつの間にか、「事例づくりための飲食店」「事例づくりのためのブランド運営」から、「本業としての飲食店」「本業としてのブランド運営」に目的が変わっていたのだ。
この頃の社員の顔ぶれも、この意思決定を後押しした。
2024年初期の段階で20名弱の社員が在籍する中、デザイン事業のメンバーは2名のみ。残る社員は全員が自社事業を専任としていた。
そんな状況の中、僕自身が顧客担当としてクライアントワークに出向くのは、優先されるべきアクションではないのは明白だ。リーダーの時間は組織のものであり、メンバーのものである。リーダーは組織の利益が最大化される活動に集中すべきであり、「自分が稼働してなんとか売上を立てる」短期的な目線から脱皮しなければならないと決意した。
(とはいえ、仕事の依頼を全て断ち切るというのは簡単ではない方針転換だった。前職から担当し、独立当初から発注していただいた得意先にお断りの連絡をいれる際は、言葉にできない気持ちになった。この決定にあたり、せっかくお声がけいただいたお仕事を断ってしまった方々には大変申し訳なく思う。)
こうして大方針を定めた2024年。
僕自身はクライアントワークから組織づくりへリソースを大きく転換し、以下の変革を行った。
①ビジョンの定義
②マネージャーへの権限委譲
③人への投資:社員主義とコーチングの開始
それぞれ簡単に解説していく。
①ビジョンの定義
組織の価値の明文化は、それぞれの事業体の自走を促進するフェーズにおいてはやはり重要だ。
社員数が少ない頃は、各メンバーとのコミュニケーション機会が十分にあり、全ての意思決定に自分が介在するので必要なかった。ところが、多店舗展開し、社員が20人を超えてくると、月に数回しか顔を合わせない社員も出てくる。それぞれの部門で、それぞれのメンバーが意思決定をするシーンが増えていく。今後もこの状態が加速すると考え、全員の立脚点を揃えるための定義を作ることにした。
それが以下だ。
■& Supplyとは:心が躍る瞬間を、空間を通して創造する場作りチーム
まずは自分達は何者かを再定義した。以前はデザイン会社と標榜していた名乗り方を、場作りチームと書き換えた形だ。
& Supplyで行っている飲食店とMYTONEというホームグッズブランドの運営は、全てが場作りに直結している。家の外の場作りが飲食店、家の中の場作りがMYTONE。飲食店とホームグッズの運営を通し、日常の中で幸福感を味わえる場作りを行うのが& Supplyというチームである。
目的が場作りにあるので、例えば飲食店舗での各要素は、心躍る場を作るための手段として位置付けられる。
内装や音楽といった空間、料理やカクテルといった飲食物は全て手段になる。
この定義は重要だ。
特定の修行をした職人気質の人々は、その磨き上げた技術の提供が目的になっている人も多い。自身の料理やカクテルで人を喜ばせるというのが最上段の目的で、それ以外の要素が手段となる考え方だ。もちろんそれも素敵な考え方で、良い悪いではない。ただ、場作りが目的となる僕達とは基本スタンスが異なる。
あくまで& Supplyは場作りが目的となっているので、選ぶ手段は場所や時代、ターゲットに合わせて変化する。必然的に、料理やカクテルも、顧客志向で打ち出すことを求める。
この考え方が異なる方々とは過去にうまくいかなった経緯があるので、改めて明確化した。
■Vision :「まるで旅をしている時間」を日常に作り出す
僕が定義する旅とは、
・物理的な移動だけではなく、「日常から離れ新しい価値観との接触を通して自分自身に向き合ったり、新しい自分に出会うこと。
・五感が研ぎ澄まされてワクワクしたり、心が高鳴る瞬間のこと。
まるで異国の地に降り立った時のように、見るもの全てが新鮮で、発見がある。そんな瞬間が日常にあれば、毎日を前向きに、ポジティブに暮らすことができるはず。& Supplyは、まるで旅をしている時間を演出する場を作る。
店を出るその瞬間に、または、自分が好きなもので彩った自宅の部屋で、「明日からもまた頑張ろう!」と前向きになれる場作りを目指す。
加えて、ここでは割愛するが、ミッションやパーパス、行動指針も定義した。目指すべき形を言語化したことで、日々の現場運営における意思決定の基準が以前よりクリアになったと実感している。
②マネージャーへの権限委譲
次に、明確な組織図を作り、公式のマネージャーポジションを設置した。
それまでは、メンバーのチームでの役割が定義されておらず、役職や役職手当も設置していなかった。個々人が考えた非公式の役職を名乗ることも承認していたので、チーム内での責任領域が曖昧になっていた。
実際の目標設定は経営陣が実施している部門も多く、現場への権限委譲が十分できていない状態だった。
問題の予兆を察知すると、経営陣がトラブルシューティングで介入する。すると一部門が復活するが、また別の部門が停滞する。そんな行き当たりばったりの経営状態が全社的な停滞の原因だった。
その状態を打破するため、2024年初頭を期に各チームから一人ずつマネージャーを選抜し、権限委譲に踏み切った。役職手当を付与し、明確に職務を与えた。
各チームごとに自ら目標設定を行い、それを達成するための戦略や打ち手を毎月提示する運用に切り替えることで、チームの自走力が格段に向上した。
マネージャー陣は急激に難易度が高い職務と責任を担うことになったが、各自奮闘しながらやりきってくれている。
今後は営業利益という指標を元に、店舗経営における全責任の委譲を進めていく。
③人への投資:社員主義とコーチングの開始
加えて行ったのが人への投資だ。
& Supplyは、その事業性質上、店舗にはかなり大きな投資をしている。内装などハード面での投資額は同規模事業者よりも圧倒的に大きい。
一方で、ソフト面、すなわち自分含めた人に対する投資は断片的になっており、十分だったとはいいづらい。
今後のさらなる成長はこのソフト面への投資を抜きにして成し得ないのは間違いない。そう思い、人への投資に踏み切った。
まずは社員主義を掲げ、社員中心の営業体制に変更した。
それまでは最低限の社員数で運営していたが、フルコミットする人の数が増えるほど成長が加速する実績があったため、全社的に体制を刷新した。
現在は、Honeに8名、nephewに6名、LOBBY & Staff Onlyに3名と、店舗数にしては多くの社員を抱えている。MYTONEチームも2024年初頭は社員1名だったのを、3名まで増加させた。
この「人への投資」は結果的に功を奏し、各部門において売上・営業利益を飛躍的に増加させることに成功している。
さらに、組織開発のコンサルティングを外部の企業へ依頼し、組織コーチングのプログラムを開始した。
Energizeという企業に請け負ってもらい、マネージャー陣を中心にコーチングを受けている。
コーチングは、僕自身が長く興味を持っていた領域だ。
先述したように、以前の& Supplyは経営陣がトップダウン型で目標を決定し、各部門へ落としていく体制だった。とはいえ事業数が多いため全てを見きれず、緊急を要する部門へリソースを寄せてなんとかする後手に回る経営が常態化していた。
これは他ならぬ経営者である僕自身の力不足が原因だと自覚していた。
この状態を抜本的に改善するためには、僕自身が組織づくりを学ぶ必要がある。
調べていく中で、コーチングという手法があることを知った。まずは自分が受けてみないと始まらないとコーチを探し続け、ついに理想的なプロコーチが見つかった。奇跡的な偶然もあり、知り合いづてにそのプロコーチを紹介してもらい、念願叶って実現に至った形だ。
▼Energize秦さんが出演する動画
このコーチングへの投資額は少なくない。
我々のような小さな規模の飲食業で、この額のコーチングに投資している会社はなかなかないと思う。勇気がいる投資判断だったが、開始から2ヶ月で、既にこの投資を利益に転じられる程の明確な効力がチームに生まれている。これからの成果が楽しみだ。
こう書いてると、しっかりした会社に勤めている方は、「普通のこと言ってるな」と思うかもしれない。僕も会社員時代ならそう思っていた。
でも、0から立ち上げ、経営者が自分もプレイヤーとして各セクションに介在しているような小さな組織体では、この組織づくりや仕組み化、教育など人への投資は本当に難しい。トップ自ら組織開発にリソースを投じるということは、自分が動けば作れる短期的な売上・利益を捨て、長期の成長にコミットすることを意味する。
しっかりと組織化され、人材教育にも多大な資金と時間を投じている大企業は本当にすごい。会社員時代に当たり前だったことのありがたみに、今更ながら感謝と敬意を日々感じている。
2024年の成果
上記の方針転換と変革を行った2024年は、先に書いたように史上最も大きな成長を成し遂げることができた。
12月の全体売上は前年比188%を叩き出し、7月〜12月の6ヶ月だけで、前期の1年間とほぼ変わらない売上数字に着地している。
MYTONEが前期比430%という大ブレークを果たしたことが大きいが、飲食部門も136%と着実に成長している。年商1.2億円を超える店舗が2店舗生まれたりと、過去からは想像できなかった成長率だ。
▼MYTONEの成長について記したnote。これを書いた5月時点での月商は1600万円だったが、現在は月商3000万円を超える規模に急成長を遂げた。
この結果は、現場で日々100%を出し尽くしてくれているメンバーのおかげだ。特にこの半年間のメンバーの成長は目覚しく、数年前は予想できなかった大きな成果を出すチームへと進化した。
2024年7月〜2025年6月の7期は、以下のように昨年対比200%の大幅成長を実現できる見込みだ。
この成長の前提として、チームが進むべき正しい方向性への軌道修正が成功したと捉えている。
正しい方向性を見つけ、チームをそこに集中させれば、自ずと歯車は回って加速していく。
悩んだ末の2024年の大転換は、「このチームが進むべき道」として正しかったことを結果が証明してくれた。
これからの & Supply
ここまで、時系列事に& Supplyのこれまでの歩みを振り返ってきた。
最後に、この事実を踏まえて、これから何をしていくかを書いていく。
大方針:会社として拡大し、社会への貢献範囲を広げる。
まず大方針として、& Supplyは会社組織として拡大し、社会への貢献範囲を広げ続けると決めた。
飲食業は日本各地に店舗を増やし、MYTONEは取り扱い商品の幅を拡充し、同じく出店も行い、より多くの人が利用できるサービスを提供していく。
元々僕の起業理由が、「共感できる仲間と、仕事と遊びの境界線を無くした生き方を実現する」だったのは先に記載した通りだ。当時は組織規模を拡大するつもりは全く無く、場作りにおいても、「周囲の仲間が集まれる場」という狭い範囲の目的を設定していた。
この「共感できる仲間を増やす」という考え自体は今も変わらないが、場作りにおいては、その輪を広げていくべきだと考えるようになった。
僕は開業時から今でも1号店のLOBBYに立ち続けていて、そこに集まる人の変遷を見ている。お店を運営する人なら分かる通り、そこに集まる人の顔ぶれは変わっていく。人生が進めば、それぞれ住む場所もライフスタイルも変わる。当然のことだ。
それは社内でも起きている。この6年間で、僕達自身の環境も大きく変わった。家族ができて、人生の優先順位や方向性が変わることもある。自分自身が定義した「周囲の仲間」の顔ぶれも少しずつ変わっていくのだ。
そうなった時、自分主体で仕事をしても、残るものは限定的になってしまう。それであれば、自分達がチームで作る場を起点に、より多くの人の人生に貢献する仕事をしていきたいと考えるようになった。
メンバーに事業を任せるようになり、新しい化学反応が起き、自分が想定していなかった広がりが生まれるシーンを日々目にしてきた。& Supplyの信頼する仲間が、場の魅力をどんどん広げてくれる。
そんな拡張する場を作り続けるのが自分の役割だと考えている。
6年半やってきて、経営者としての考え方も変化した。
当初は世の中への貢献なんて1ミリも考えてなかったので、なるべく雇用を抑えたり、税金対策で利益を減らして法人税を抑えたり、あの手この手を投じていた。自分の利益の最大化しか考えていなかった。
ところが、絶えず生まれてくるやりたいことを実行に移すと、必然的に組織が拡大し、以前想定していなかった課題や葛藤が同時に生まれる。自分の役割が変わり責任が増えていくことに、「なんでこんな大変なことやってるんだっけ」と思うこともあった。
そんな成長過程で向き合う課題に一つ一つ向き合いながら、色々な経営者の理想や思考に触れ、自分は本当は何がしたいのか問い続けてきた。その結果、「自分も彼らのように、事業を通して社会に貢献したい」と考えるようになった。
事業を拡大するということこそが、社会貢献に直結する。
店舗、ブランドを拡大し、雇用を生み出す。可能な限り日本の生産者に発注し、日本のものづくりの維持に貢献する。場を増やし、人々が日常の中でちょっとした幸せを感じる瞬間を増やす。そして利益を生み、なるべく多くの税金を払い、自分が生まれ育った日本に貢献していく。
そのために、今後は事業展開を加速させていく。
出店は増やすが、当初掲げたものづくりのコンセプトは変えない。
「最大公約数に好かれるものを作るのではなくて、世界に少なくても確実に存在する、自分と同じ趣味嗜好の人達に届くものを作る。」
世間の流行りに迎合したり、巨大資本のプロジェクトに巻き込まれるような出店の仕方はしない。合理的に仕組み化を徹底する、チェーンストア理論の考え方も今は持っていない。
「まるで旅をしている時間」を日常に作り出すというビジョンに則り、& Supplyだからこそできる、既視感ない新しいチャレンジを形にする出店を模索していく。
Stay Smallの価値観のまま、どこまで行けるかという挑戦だ。
(良い物件のお話があれば、是非ご紹介をお願いします!)
飲食業を持続可能な産業へ
そんな壮大な計画に先駆けて、まずは従業員の労働環境の整備に舵を切った。特に、飲食業の環境整備を行った。
飲食業と聞くと、労働環境が悪いイメージがあり、実際にグレーな状態で運営している企業が少なくない。我々のような小規模事業体では常態化している業界課題だ。業界的な慣習と、低い営業利益率が根源にある。
職務的にも環境的にも厳しい修行を経て独立に向けた経験を積み、晴れて自分の城を建てる。飲食業に奮闘する人々は口を揃えて「いつか自分の店を出したい」と話す。
だが、そんな王道的なキャリアパスは近年崩壊しつつあると感じている。
ここ数年で、店舗を立ち上げる初期費用(設備、内装施工、家具什器にかかる費用)が大きく上がった。少なくともここ東京では、僕が6年前にLOBBYを作った頃に比べると、1.5倍から2倍にまで高騰してるのではないだろうか。一昔前は1,000万円あればある程度は形にできたが、今はカフェのような軽飲食でもこの額では足らないと思う。
客単価が高いレストランのような業種であれば、その価格の妥当性を裏付けるためにも、内装への投資が必要になる。目の超えた現代人は誤魔化しが効かない。住宅で使うような安価な建材を多用してしまうと、日常から離れた特別な時間を提供する飲食店の役割を満たせなくなってしまう。
50平米の広さがある物件で、客単価1万円を超えるレストランを作ると仮定したら、初期費用が2,000〜3,000万円は必要になるのではないだろうか。
(もちろんサイズやエリアなど色々な条件があるので一概には言えない。僕個人の見解である。)
飲食業での修行を経て、この額の資金調達を成し遂げられる人はどのくらいいるだろうか。元手資金がなければ銀行からの融資額も増やせないため、現実的ではないのが正直なところだろう。そしてこの状況は今後もっと加速していくのは間違いない。「いつかは自分の店を」と口にする若い人達は、この状況を真剣に考えるべきだ。
20代の修行期間は賃金が低い。そこに耐えて技術を習得し経験を積み重ねても、独立の糸目は掴めない。
未来が描けないとなると、他の産業への人材流出に歯止めが効かなくなる。
僕も飲食業の経営者として、この課題のど真ん中で葛藤してきた。
ただでさえ国内の働き手が少なくなる中、この状態を放置していては飲食業は立ち行かなくなる。前提条件を変えないと、産業としてのアップデートはできない。
この状況に一石を投じるべく、& Supplyではまずはじめに以下のように労働環境を整えた。
見込み残業を超えた分は、当然残業代も出る。
労働基準法に100%則るという他産業では当たり前のルールを遵守し、公明正大に事業を展開していく。
今後1年間で見込む社員の平均年収は約450万円。3年後には平均550万円への底上げを目指す。
中長期のキャリアパスが描ける会社になる
前章で書いた出店の拡大は、働く従業員のキャリアパスが描ける環境づくりも目的としている。
出店機会が多ければ、社内でマネージャーやシェフになるチャンスが開け、先の展望が描けるようになる。今現場で働いている各メンバーが事業責任者となり、新しい価値を築いていく未来が楽しみだ。
出店数の拡大に応じ、複数店舗を管轄するエリアマネージャーや店舗開発のポジションも新設していく。
ずっと現場で腕を奮うこともできるし、経験を経ることで、社内で新しいキャリアが開ける体制を構築する。こうして、飲食業を持続可能な仕事として成り立たせていく。
この未来を実現するためには、理想を掲げ、常に現状の外側への歩みを続けるメンバーが必要だ。
自分の専門領域を超えて新しい仕事に挑戦し、自らの未来を切り開いていく。今まで身に付けた能力だけにしがみつかず、常に視点を広げ、新しい領域のスキルを学ぶ。誰かに与えられるので無く、自分達で勝ち取っていく。
そんな仲間を増やしていく。
是非この考え方に共感する方は、& Supplyの門をたたいてもらいたい。
▼& Supply飲食チームのメンバー
おわりに。 第二の創業期に向けて。
これまでの歩みを経て、今後自分がどのように舵取りをしていくのかを詳細に伝えたくて、1.9万文字の超大作となってしまった。
6年半をかけて、ようやく& Supplyの土台が固まった。目指す方針が明確化し、これからは更にスピードを上げていく。まさに、第二創業期だ。
これまでの6年半、様々な失敗と葛藤を繰り返してきたが、振り返ると全てに意味があった。直面した困難や壁が自分達を成長させてくれたので、& Supplyの過去に関わってくれた全ての人々に心から感謝をしている。
そして今当事者として事業を推進してくれているメンバーや、これからチームにジョインしてくれる方々には、もっとワクワクする変化が起きると約束する。
色々なことがあったが、僕にとっては常に今この瞬間が一番楽しく、面白い。自分がこんなに経営という仕事にのめり込むとは思っても見なかった。
考えや方針は変わってきたが、根底にある価値観は変わらない。
& Supplyという場を通して、共感できる仲間を増やし、仕事と遊びの境界線を無くした生き方を実現する。この理想を実現するためのリーダーに、僕自身も成長していく。
第二創業期メンバー募集
これから事業が拡大していくに当たり、& Supplyの第二創業期を一緒に作り上げるメンバーも募集している。まだまだ発展途上だからこそ、やりがいに満ち溢れた職場だと思う。
興味をいただける方は、是非以下の応募詳細をご確認いただきたい。
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・店舗マネージャー
・ブランドアシスタント
・グラフィックデザイナー
・デジタルマーケティング
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