ゲストハウスをやってきて、なぜショップをやろうと思ったのか
こんばんは。
倉敷の美観地区を拠点に『株式会社行雲』という会社をやっている犬養といいます。
弊社の『ゲストハウス有鄰庵』を閉業のお知らせを書いたnoteから、いくつかゲストハウスに絡めた話をしてきました。
お陰様でゲストハウス関連の方でフォローしてくださった方もいるので、この流れでゲストハウスをやってきたことの周辺にある話も書いておこうかなと思います。
今回は、ゲストハウスをやってきてなんでショップをやろうと思ったか、いや、やらねばと思ったか、という話です。
「地域のため」という目的
私たちの会社のショップは『美観堂』といいます。
「岡山・倉敷のほんとうにいいものを」をコンセプトとして、2017年に美観地区に店舗をオープン。
この『美観堂』というショップをやろうと具体的に決めたのは、『ゲストハウス有鄰庵』を始めて5年を過ぎた2016年のこと。
『有鄰庵』の隣にある物件を借りられるかもしれない、という話があったときのことでした。
それはほぼちょうど、僕がこの会社の代表に就いたタイミングと同じで、その頃はまだ『有鄰庵』というゲストハウス&カフェともう一軒の宿のみを運営している会社でした。
(それから4年が経ち、今では合計の店舗数は7軒になっています)
それまで、もちろん『ゲストハウス有鄰庵』は、地域の魅力を伝えることをテーマとしてやっていました。
一度チェックインしてもらってから、美観地区内のごはん処をゲストさんの好みに合わせてご紹介したり。
(そのために自分たちでは夕食を提供していませんでした)
夜にゲストさんとあれこれ話しながら、次の日に行ってほしいおすすめの場所をご紹介したり。
ただ、次第に私たちが美観地区で事業やお店をやっていることの意義を考えるようにもなりました。
岡山県内で、美観地区でお店をやることの意義と重み
ゲストハウスで近隣のおすすめのお店を紹介することは、もちろんゲストさんには喜んでもらえるし、美観地区としての賑わいにもつながると思います。
ただ、「美観地区だけのことでいいのだろうか」と考えるようになりました。
つまり、美観地区だけでなく、もう少し外向きに倉敷や岡山という範囲に広げて、その作り手や生産者の方たちに直接的に貢献できる事業をするべきなのではないか、という考えです。
というのも、美観地区というのは岡山県内で最大の観光地であり、国内外から多くの人が集まってくる場所だから、ということがあります。
美観地区自体が賑わうのももちろん大事ですが、岡山を代表する場所として、人がたくさん集まる場所でその地域のいいものを紹介し、売る。
そうして獲得した外貨を、岡山県内の作り手や生産者さんに還元する。
そういう事業をしないといけないのではと考え、ショップを立ち上げることにしました。
あまり人がいない場で、農業にせよ工芸にせよものづくりをされている方の最大の悩みは、やはり周りに人がいなくて売ろうとしても売れないことです。
その人たちのために、美観地区にお店を構えられる自分たちがもっとできることがあるのではないか、ということでした。
その土地に来たら、その土地に関わるものを買ってほしい
少し余談です。
そうやって考えて立ち上げた『美観堂』は、岡山のものしかお取り扱いをしていません。
近隣の県の方からお話をいただくことはあるのですが、ありがたくすべてお断りをしています。
ただ、地元メーカーの直販店ではなくて私たちのような複数の商品を取り扱う小売店では、美観地区内で同じようなポリシーをもったお店って未だにありません。
僕は自分がどこかの土地に遊びに行ったときもそうですが、ある土地に行ったらその土地に関わるものに触れ、味わい、買ってほしいと思ってしまうんですよね。
それが一人の消費者・観光客としてその土地のためにできる応援行為になるわけですし。
それなのに、意外と小売店側がどこでも買えるようなキャラクターグッズや、他地域に発注した雑貨などを売るのを止めないんですよね。
もちろんそれは買う側の意識の問題でもあるんですが、僕は少なくともお店をやる立場としては、そういうことはやりたくないと思っています。
どこでも買えるような商品を取り扱うお店の理屈としては「こうすることでお客さんが買う、そうでないと売上が立ちにくくてやっていけないから」ということなんだと思います。
でも岡山なら岡山で、きちんと目を向ければ魅力的な商品、あるいは商品になる手前のものでも面白い素材はたくさんあるわけなので、そこに目を向けようとしないのはお店としての怠慢だと思うんですよね。
と、偉そうなことを言って立ち上げたお店なので、まずは自分たちが「岡山のものだけでこれだけいいお店にできる!」ということを証明しなければいけません。
地域の小売業の難しさと、そこで求められること
ただ、小売業って原価と利益率の面で、とても厳しい商売ではあります。
もともと飲食業や宿泊業をしていた私たちの会社からすると、特にそれを痛感することも多い、立ち上げからのこの数年間でした。
僕は地方の事業で価値を生むには、最近よく言われる「編集力」よりも「何もないところから価値を生み出す企画力」の方が大事だと考えています。
こないだもこんなツイートをしました。
それは特にこの小売業の話に通じるものがあります。
ここで言う「編集力」という定義は、以下のようなことです。
「その地域にまだ埋もれている価値を発掘し、そこに自分たちの解釈を交えて世の中に発信する力」
ただ、そうした発掘や発信にとどまらず、新しい商品やサービスをゼロから生み出す企画力が小売業では特に求められることなのではないかと思います。
だって、そうでないと最初にお店を始めた時なんか7掛け、よくても6掛けでの仕入れになるんじゃないでしょうか。
それでスタッフの人件費や家賃を払おうとしたら、損益分岐を超える売上額はかなりの額になってしまいます。
そういう意味で、僕は弊社の『美観堂』のことを「セレクトショップ」とは捉えていません。
既存の商品をただセレクトするだけだと自分たちが付加できている価値が薄いですし、小規模なお店から始めるには原価が高止まりしすぎてしまいます。
その売上原価や売上総利益(粗利)の点からも、ショップをやっていく上では自分たちで新たな商品を生み出すことが必須だと思います。
地域のいいものには付加価値が必要なことが多い
その「企画力」から逃げていたら、その地域の資源に付加価値を与えることはできません。
また、その地域に本当の意味で必要とされる人材、もしくは会社にとってもいてくれてありがたい人材を育てるという意味でも、そうした企画力を身につけた人を育てないといけないとも感じています。
そもそも、地域の「いいもの」というのは、まだこれから磨くことで光るダイヤの原石のように誰かが付加価値を与える必要があることが多いです。
それだけに、少なくとも弊社としては、まず自分たちがそこに付加価値を与えられる存在でないといけないと思っています。
会社としてそのように「ゼロから新しい価値を生める」人材を育て、輩出できるような存在になることが、会社にとってもスタッフにとってもより幸せなキャリアを進めることになるのだと思うんですよね。
最近の僕の一連のnoteを読んでもらえている方は、ここまできて、僕が『ゲストハウス有鄰庵』を閉業する理由の三つ目のところで書いた、スタッフのキャリアプランの話に結びつくことが分かってもらえるのではないでしょうか。
弊社が「地域のいいもの」から生んだ実例をいくつかご紹介
一応、弊社としての実績も多少はあるので、ご参考までに紹介させてもらいます。
『美観堂謹製 黄ニラしょうゆ』
『美観堂』オープン以来、不動の一番人気商品。
岡山特産の高級食材・黄ニラを漬け込んだ、だし醤油です。
地元で創業150年の歴史を持つお醤油さんとのコラボで生まれた、『美観堂』のオリジナル商品。
ちなみにこの商品に限らず、うちの商品やウェブ、リーフレットなどのすべての制作物は、僕がディレクションをして、いろんなデザイナーさんとお仕事をして作っています。
『きびだんフィナンシェ』
岡山で最も有名なお土産「きびだんご」に使われる穀物「きび」をつかった、洋菓子のフィナンシェ。
これは弊社のスイーツ店『はれもけも』ですべて製造しています。
岡山とフランスとの出会いなので、パッケージは桃太郎一行がフランスを旅しているもの。
新しい岡山土産にしたいと思って生み出したもので、こちらもよく売れるようになってきました。
そんな『美観堂』ではプロジェクトマネージャーを募集中!
そうやって立ち上げて、今年で3年が経った『美観堂』。
まだまだ至らないところも多々あるお店ですが、現在プロジェクトマネージャーを募集中です。
美観堂公式noteでも募集記事をアップしているので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
それでは!
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