#今日の短歌 「現代学生百人一首」入選作 祖父の愛情がくれた短歌
落ち込んで「辛い」とぼやく僕の手を祖父が黙ってギュッと握った
東京都 東洋大学(大学院) 1年
小田切 拓
母校が全国の学生から募集している「東洋大学現代学生百人一首」2015年度の入選作。
応募総数56,972首(小学生部門も含む)の中から100首に選ばれてその中の優秀歌15首にも入った。NHKラジオでも朗読して貰えたらしい(聴きそびれた)。
受賞、分かりやすさ、歌壇の人からの感想。全ての人を満足させる一首なんてあり得ないし、僕の歌は「わかりづらい」と賛否両論になりがちだ。そんな自分にとって、これほど多くの人に受け入れてもらった「幸せ者」な歌を作れたことは他にない。
この歌は、頭からしっぽまで、事実である。ちょうど応募する時期の年末。長野から来てくれた祖父と家族皆で近所を散歩していた。この記事の見出し画像のような夕焼けに包まれながら。
僕はしょーもないことで悩んで「辛い」とか「もう無理」とか「耐えらんないかも」とか撒き散らしていた。
祖父は苦労人で、そのぶん社交的で、一代で校長先生になるくらいの人だ。そして、いつも孫思いで優しいおじいちゃんである。
それでもこんなに情けない僕の姿を見たら、甘えるな!と叱り飛ばすことも、くだらないなと笑い飛ばすこともできたはずだ。
お喋りが上手で太陽みたいなムードメーカー。そんな祖父が黙って近づいてきてギュッと手を握った。僕は黙って握り返して、自分を恥じた。
あの時に握ってくれた手の感触は流石に覚えていない。でも、そうやって祖父が励ましてくれたことはずっと忘れないだろう。
こんな愛情で包んでくれたおじいちゃんのことを詠んだ歌なんだから、愛されないわけないよね。
そんな祖父は、90をとうに過ぎた今も長野で元気でいてくれている。
ありがとう。
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