レビュー「金融リスク管理を変えた10大事件」
こんばんは。たくたくです。今回は以前の「物理全史」に引き続いて読了した本のレビューを書いていきます。
今回は「金融リスク管理を変えた10大事件」という本を読みました。詳しい内容の前にamazonのリンクを置いておきます。
さてこの本で書かれているのは金融の世界における事件とその後のリスクへの管理手法の変化の変遷です。最初は破綻による信用リスクの話から、最後にはプログラムトレードによる市場の大混乱まで記載されており、まるでいたちごっこのような事件と対応の歴史を読むことができます。
加えて著者がリスク管理の部門の方ということもあり、種々の事件の際にどのような印象を持たれたのかという観点からもコラム的に記載が為されていて歴史ではあるものの断絶した過去という感覚にはなりません。むしろその感覚から当事者としての著者の思いが伝わる分、事件が起こるたび関係者はどれだけ胃が縮む思いをしたのだろうかと思ってしまいます。
僕としては一番頭に残っているのはやはりリーマンショックの大本たるサブプライムローンについての章です。この章ではサブプライムローンへの解説とそこから派生していく証券化商品について書かれており、その商品を扱う銀行や買い手である投資家についても触れています。
その中で一番怖いと感じたのは非常に商品が複雑化していく中でその正しい価値がいくらなのかわからないほどに進化していく、そしてその商品を扱う量もバカみたいに増えていくという状況にあったことです。しかも買い手である投資家すらその商品の仕組みや最終的に元本が家にたどり着くことすら知らない状態だったと、恐ろしい記述が至る所に出てきます。リーマンショックについては僕自身知らないわけではないですが、やはり追い直すと異常という言葉が似あうとしか言いようがないかと思います。
全体としては上に書いた通りではありますが、基本的に金融の事件の発端、最中の出来事、後始末とその後の規制対応で構成されています。全体を読み終えて感じるのは「足らぬを知る」ということの重要性でしょうか。
「足るを知る」というのは当たり前の言葉ですが、そうではなく「足りない」ことを知らなくてはならないと強く感じます。なぜなら先のリーマンショックのところでも書きましたが、自分がその商品について理解していないことを知っていたら投資家は買っていたでしょうか。さらに殆どの金融会社の中でサブプライムローンに絡んだ証券化商品が一体いくらと算定すればいいのかわかっている人間が非常に少ないことを知っていたらどうだったでしょうか。
他にも、本書籍では担当の人間の認識の問題から大事件に発展しているものも書いてあります。そこでも共通しているのは「足りていない」ことを「知らない」という状態です。足りていると思っているから追加の施策を取らず問題がどんどんと大きくなってしまい、最終的に大事件になってしまったというわけです。
勿論、その施策で全ての問題の発見をできるかというのは不可能です。しかし現状で問題ないからこれからも問題ないと考えるのは危険です。よりよい施策や対応を取れないか、さらに状況や前提が変化しても問題ないかと考え続けて思考を拡張し続けなくてはならないと考えます。
今回の読書では金融事件を通して思索をめぐらすこともでき非常に良い時間を過ごせたかと思います。なお、こちらはグローバルな事件について扱っていますが、日本版もあるのでいずれこうにゅうしたいと思います。
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