アントレプレナーシップ教育とは何か?
こんにちは、タクトピア代表の長井です。この記事では、教育事業者の視点から「アントレプレナーシップ教育とは何か」について紐解いていきたいと思います。いくつかの角度から書いてみようと思いますので、皆さんの考える「アントレプレナーシップ教育」の解像度を上げられたらと願っています!
■記事一覧(リンクから飛べます)
0. 私がアントレプレナーシップ教育を専門にするまで
1. アントレプレナーシップ教育とは何か?(本記事に掲載)
2. なぜ、アントレプレナーシップがすべての人に必要なのか?
3. どのようにアントレプレナーシップ教育を実現していくか?
4. 最新!中高でのアントレプレナーシッププログラム事例
5. その他の新しい学びとの接続
1.まずは言葉の意味から
「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」という用語は、辞書的には「起業家精神」と訳されます。この訳語が曲者だと個人的には思っています。
まずは「シップ(-ship)」を除いたアントレプレナー(entrepreneur)という単語をみていきましょう。辞書によれば「起業家」と訳されるわけですが、この訳語はもともとの語義からするとかなり狭い意味しか指していません。この単語はフランス語由来で、entreは英語で “inter”、preneurは “taker”に相当し、合わせると「間を取り持つ者」となります。ここから解釈していくと、アントレプレナーとは誰かの需要と供給をマッチさせたり、違う分野同士の知恵を結合して新しいアイデアを実現したり、世の中の課題(不足・不満・不便・不安)に対して解決策を導入したりできる人のこと、と言えそうです。
このイメージと「起業家」という言葉を比べると、どうしても後者は「会社を立ち上げる人」「事業立ち上げを生業とする人」といったイメージがついてしまい、日本の教育を受けた人々の苦手意識を助長してしまっている印象があります。アントレプレナーは、何もスティーブ・ジョブズのような孤高の天才である必要はないし、いきなり世界規模の社会問題や数十兆円規模の市場を相手にする必要はないのです。
さらに「シップ(-ship)」という接尾語は「(前につく語の)性質・状態」くらいの意味ですが、なぜか「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」を訳すと「起業家精神」と物々しい雰囲気になってしまいます。「フレンドシップ(friendship)」の訳は「友情」と自然な訳になっているのに、アントレプレナーシップの訳語の物々しさは何なのでしょう。訳語をあてた当時、それだけ馴染みのない概念だった、ということかもしれません(それが今にも続いている、とも言えそうです)。
まとめると、アントレプレナーシップとは「AとB(例えば需要と供給や、課題と解決策)」の橋渡しをして世の中を良くしようとする思考行動のあり方と言えそうです。そう考えてみると、アントレプレナーシップを育成・発揮する機会は普段の生活にも溢れています。起業していまの仕事や立場を変えなくても、世の中に対してできることはたくさんあるし、そこがスタート地点で何らおかしいことはないわけです。こう考えると、アントレプレナーシップ教育の存在がぐっと身近に感じられるのではないでしょうか?
2.アントレプレナーシップ教育を一言でいうなら
上記のことを踏まえて、タクトピアなりに思い切ってアントレプレナーシップ教育を一言で表現するなら
ことであると考えます。
もう少し長めに表現するなら、アントレプレナーシップ教育とは
ことを指す、というのがタクトピアでの定義です。
3.アントレプレナーシップ、4つの誤解
私はタクトピアを創業した2015年から、新しい学びの中核としてアントレプレナーシップ教育を提唱してきました。日本では今に至るまで「アントレプレナーシップ」が新しい概念であり続けているため、折に触れて中学校・高校の先生や保護者さんから投げかけられる「素朴な誤解」に対して答えてきましたし、その都度理解をいただいてきました。アントレプレナーシップを理解する助けになればと思い、簡潔にその内容をまとめてご紹介します。
4.まとめ
今回は3つの切り口から「アントレプレナーシップ教育とは何か」について描写してみました。いかがでしたでしょうか?
おそらくこんな疑問が挙がってくるのではないかと思います。「アントレプレナーシップ教育の定義については何となく分かった。でもやっぱりそれって、特別な内容な気がする。全員が学ばなくちゃいけないものなの?」
というわけで、次回は「なぜ、アントレプレナーシップがすべての人に必要なのか?」について説明していきたいと思います!