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タクトピアとともに教育改革を目指す学校のマインドセット

160以上のプログラムを行ってきて実感した『教育改革に結びつく学校の「学びのマインドセット」』を言語化。

学校との協働することの意義

タクトピアは21世紀を生きる若者のための「グローカル*リーダーシップの育成」をミッションに掲げ、これまで活動してきました。
私は、民間企業であるタクトピアにとって、教育へのインパクトを最大化するためには学校と協業することがベストだと考えています。それには大きく2つの理由があります。

●学校での日々の学びと、タクトピアの提供する「圧倒的な原体験」とのシナジー(相乗作用)が生まれること
●プログラム後も先生方と連携して「その後の学び」をフォローすることにより、一発モノの体験で終わらせない工夫ができること

タクトピアも設立から5年目に入り、会社としてもメンバー個人としても経験値が増えていく中で「うまくいく学校・うまくいかない学校」というのが見えてきました。それは単純にタクトピアとの相性という意味ではなく、学校として教育改革がうまくいく・いかないという「改革を成功させるチカラ」とも深く関連しているように思います。

考えてみればそれは当たり前のことです。この21世紀に事業(公立私立問わず、学校も立派な事業体なのです)を成功させようと思ったら20世紀とは違うマインドセットが問われるのです。もっと言うと、若者を育てる学校こそが最も未来的であるべきで、ここで若者に20世紀的マインドセットを植えつけてしまったらそのダメージは計り知れないのです。

*グローカル=グローバル+ローカルをかけあわせた造語

「うまくいく学校」の学びのマインドセットサイクル

ということで、私の経験から「うまくいく学校」に共通している学びのマインドセットについて述べていきたいと思います。


「うまくいく学校」のマインドセットは図のように

Understanding → Vision → Engagement → Flexibility → Life-changing Experience

というサイクルとなっており、そのすべてのベースとしてRespectがあると考えています。
ひとつずつ説明していきましょう。


【1】Understanding(21世紀の世界に対する理解)
生徒をどのような世界へ送り出すつもりでいるのか、というそもそもの理解のことです。控えめに言っても現代の日本が置かれている状況は楽観視できない反面、新しいチャレンジがしやすい「乱世」でもあります。そんな、21世紀に対する緊張感とワクワク感の共存した感覚のことを表しています。
経験上、タクトピアと相性の良い先生はこのUnderstandingの理解が擦り合っていることが多いです。異業種から転職されてきたり、ある分野を深く探究されてきたりする先生であればあるほど、エッジの立った世界観を持っています。タクトピアの世界理解との(いい意味での)ぶつかり合いが良いスタートを生むと実感しています。

【2】Vision(実現したい教育への想い)
Understandingに続いて「自分はどうしたいのか」のイメージが強く言語化できている学校や先生とは急速に打ち合わせが進行します。言語化できていない場合でも、「いま変わりたい」「変わらなければ」という熱量を受けると奮起してしまうのがタクトピアのラーニングデザイナーなのです。その想いがあればあるほど良い協働ができ、良い学びの場が生まれています。

【3】Engagement(主体性・巻き込み力)
教育への想いを共有できたら、次に必要になってくるのがEngagementです。Engagementには2つの側面があります。1つめは「生徒へのエンゲージメント」、2つめは「プログラムへのエンゲージメント」です。

①生徒へのエンゲージメント 
プログラムの意義を理解し、目的達成のために生徒への見守り・働きかけを積極的にする姿勢がある学校のプログラムは、結果として生徒が得る学びの質が高くなります。日々生徒と同じ空間で生活している先生と協働することで、タクトピアも生徒への適切なアプローチができるのです。
✖これはダメ✖イヤイヤ同行させられている。観光しか興味ない。生徒と仲が悪い(生徒との対話がない)。
②プログラムへのエンゲージメント 
プログラム内容を把握したうえで自分も学ぶくらいの勢いで参加してくれる先生がいるとプログラム全体の質が高くなります。生徒も実は先生の背中を見ているので、どんなふうに学べばいいのか(失敗していいのか)などの指針としている傾向は大です。
✖これはダメ✖教室のうしろでケータイをいじっている。ひたすら学校へ出すレポートを書いている。

【4】Flexibility(プログラムの最適化)
タクトピアが提供する学びの環境は「生物(なまもの)」であり、常に変化します。外的環境だけでなく、生徒たちの状況も刻一刻と変化するため、常に<状況把握→判断→働きかけ>のサイクルを最適化していく必要があります。事前に撮影した動画のようにプログラムが固定していてあとは粛々と進めるだけ、とはいかないのです。それが21世紀のVUCAのリアルな姿でもあるのです。
もちろん、生徒にとって安心安全な環境は確保しつつも、「予想外の出来事」「降って湧いた課題」について先生とタクトピアが前向きにハックする背中を見せることは、学びとしてポジティブな影響があります。ここに生徒も巻き込むのが理想的です。
ここで言う「予期せぬ出来事」というのは必ずしも悪いことだけではありません。以前ある学校のプログラムでボストンのインキュベーション施設の見学に行った際、共有スペース以外は立ち入り不可だと釘を刺されていました。ところが施設の創設者がたまたま通りかかり、生徒たちの熱心さに心打たれて「中を見せてあげよう」と特別に案内してくれたことがありました。スケジュール上の時間はもちろん崩れてしまいますが、先生方と時間調整の工夫を素早く行えたことで、生徒たちは非常に希少な体験をすることができました。こうしたチャンスを引き寄せるためにもFlexibilityは重要なのです。


【5】Life-changing Experience(圧倒的な原体験)
タクトピアのプログラムはもちろん第一に生徒たちのものです。しかし、EngagementとFlexibilityをもって協働してくださる先生方にとっても強烈な原体験となることも多いのです。「あの体験が教師人生の中で一番の転換点だった」と今でも語ってくれ、学校をより良く改革していこうと大活躍している先生がたくさんいらっしゃいます。
原体験とは、決して抜けないトゲのようなものです。自分の生き方・働き方についてそれまでの前提が覆され、新しい視野が開け、自分でもこの世界に足跡を残していけるかもしれないとワクワク感で心に火が点くようなものなのです。そしてこのワクワク感=原体験がまたUnderstandingへと繋がっていくのです。

【6】Respect
ここまでUnderstanding、Vision、Engagement、Flexibility、Life-changing Experienceというサイクルを述べてきました。このサイクルの前提として「他者へのリスペクト」があると思っています。他者とは、自分の想像力や親しみのある世界の外にいる人や組織のことです。自分が想像し得ない世界、親しみのない世界に対して腫れ物に触るような態度を取ったり、ステレオタイプを振りかざしたりする現場も残念ながら度々目にします。また、学校にありがちな「おれ先生、お前業者」といった考え方が、先生個人というよりは、取り払い難い文化として浸透しており、大変根深い問題として存在するのも事実です。この考えを一度フラットにすることで、マインドセットサイクルがより効果的に加速するのです。

教育改革を行うパートナーへ


冒頭で述べた通り、タクトピアは学校と協働することにより、教育で大きなインパクトを起こすことができると考えています。そのために「うまくいく学校」のマインドセットサイクルを持った学校と協働することで「改革を成功させるチカラ」を最大化し、一緒に教育改革を行うパートナーになっていく必要があると確信しています。

VUCAの嵐が吹き荒れる21世紀、人や組織が思うように生きることができるかは、21世紀型のマインドセット・スキルセットを備えられるかにかかっています。これは年齢や身分に限らず、です。かつて電気や道路といったインフラがこの国の発展に大きく寄与したとおり、現代においては「学び」の仕組みや内容そのものが無形のインフラとして必要になっているのです。タクトピアは、世界でも類まれな優れたシステムである日本の学校とともに、21世紀のためのインフラを構築したいと願っています。

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先生方を改革者に育てるタクトピアプログラム

経済産業省「未来の教室」採択事業:HeroMakers

未来の教室には未来の先生が必要だ。日本からもっとグローバル人材を輩出するためには、先生こそがグローバルリーダーに。
この思いを持ってスタートした「先生がチェンジメーカーになるための研修」がHeroMakersです。
*HeroMakersの詳細および成果報告はこちらから: https://www.learning-innovation.go.jp/verify/detail/z0042



タクトピア株式会社代表取締役 長井悠
茨城県と千葉県で育つ。東京大学にて藝術学(音楽社会学)を専攻、修士課程修了。IBM社にて戦略コンサルタントとして活動後、2010年にハバタク株式会社を創業。2015年、当社の一部門であった学校向け教育事業をタクトピア株式会社としてスピンアウトし代表に就任。
タクトピアでは全事業を統括し、学校・企業等の教育プレイヤーとの関係構築 ・協業可能性の開拓等をおこなう。バラバラになってしまっている教育(学ぶ)と産業(働く)を近づけ、誰もが自分の意志で生き方を選択できる成長の生態系を構築したいと願う。