千葉県麗澤高校でのイングリッシュキャンプ
日本の語彙習得研究第一人者が在籍する麗澤大学のすぐ横にある千葉県にある麗澤高校で、昨年末に待望のイングリッシュキャンプが実施されました。
今回はその模様を、講師を担当した嶋津幸樹よりお届けいたします!
2020年秋、コロナ禍での徹底的な対策(毎朝の検温、手洗いうがい、ソーシャルディスタンス、空気の入れ替え)などを講じて、ようやく実施に漕ぎ着けたキャンプ。バス停を降りてこの森を通り抜けると広大な校舎が現れるトトロの世界のようなワクワクする環境でした。
今回のイングリッシュキャンプの目的は「世界の問題(グローバル・イシュー)を解決するアイデアを創造せよ!」という課題解決型のプロジェクトキャンプです。世界の問題を身近に感じてもらうために今回はべトナム、タジキスタン、キルギス、バングラデシュの大学生・大学院生に参加して頂きました。東京大学院生2名、神戸大学博士課程の学生1名、立命館アジア太平洋大卒1名、武蔵野大学グローバル学部の大学生1名、彼らに加えてタクトピアインターンのシドニー大学生も参戦して頂きました。
世界の問題って割と自分に関係ないことが多く、日本のような恵まれた環境で生まれ育つと、平和なことが当たり前であると感じてしまいます。その平和で当たり前の感覚は先進国の産物であり、遺産になりつつもあります。今回のキャンプはそんな日本で生まれ育った高校生にとって圧倒的原体験となる、そして世界と日本に対する意識が高まる経験になる環境となりました。
中央アジアのタジキスタンには日本の家庭には当たり前にあるものがありません。電気を使えるのは1日2時間のみ、しかもいつどのタイミングで電気が供給されるかはわからない、電気が供給されると夜中でも起き出して、電気がないとできない作業をします。もちろん家にテレビも冷蔵もありません。それでもタジキスタンの人々はそのような環境でも協力し合い、贅沢な生活ではないけれど幸せな人生を送る人がたくさんいると言います。タジキスタンでは災害が起きた時にどのように行動すべきかという指標が確立していない。そんなタジキスタン出身のLanaは文部科学省の奨学金を得て、博士課程に在籍しながら日本の災害支援について学んでいます。
かつてアジア最貧国と言われたバングラデシュで生まれ育ったTaniaは、コロナ後における先進国と発展途上国のアパレル産業の実態を話します。「ユニクロやH&Mなど今みんなが当たり前に身につけている洋服がどこで作られ、どのように生産され、消費者の手に届いているか知っていますか?」Taniaは麗澤高校の生徒にそう問いかけ、縫製産業が国全体の経済を支えているバングラデシュでの生々しい現状を動画と共に紹介します。「私は日本で学んでバングラデシュの人を助けたい!」熱のこもった彼女の話に高校生も引き込まれ、休み時間にはTaniaに高校生が寄ってたかって集まってきます。Taniaはタクトピアの英語学習プログラムLinguaHackersに来て彼女のプロジェクトについて話してくれましたので、彼女のプロジェクトストーリー「私たちは、何も、しらない。世界のアパレル界を支える私の国の現実」とLinguaLiveの出演動画を是非ご覧ください。
最終プレゼンテーションのにはモロッコ出身の京都大学院生Zakiaが審査員として参加し、ビジネス観点から実現可能性に対するコメントやフィードバックを頂きました。参加した高校生は本当に自分たちのチームが解決したいそれぞれの国の課題と学んだことを応用し創造した解決法を英語で発表しました。
そして今回の成功に繋がったのはイングリッシュキャンプの実現に向けて全力で邁進してくれた川部先生の存在です。イングリッシュキャンプが始まる数ヶ月前から生徒の意識を高め、生徒がキャンプを本気で楽しめるために必要な英語力、そして文化的背景知識をインプットして、キャンプ5日間を盛り上げてくださいました。また生徒のメンターとの学びに介入しすぎることなく、近くで見守りながら適度に声がけをして、5日間学びをサポートしてくださいました。休み時間に垣間見れた生徒とのコミュニケーションに深みを感じ、先生も生徒も共に学び、共に感じることを共有していく様子、指示をするのでなく、生徒の感じることを引き出し学びを励ますやりとりに感銘を受けました。キャンプでも学びを最大化させるために僕の著書「Learning by Teaching」をイングリッシュキャンプに参加する全ての高校生の課題にして、タクトピアが目指す深い学びに共鳴頂きました。
そんな川部先生が麗澤高校のHPにイングリッシュキャンプの様子を当日の写真とともに毎日まとめてくれています。川部先生は麗澤高校の卒業生でもあり、自分の子どもを育てる感覚で後輩でもある教え子に接しているのだな〜とこの5日間のまとめをじっくり読ませて頂き、実感しました。
最終日のプレゼンテーションのあとの振り返りで参加者の生徒から思いがけない発言がありました。「グローバルな問題ってこれまでは自分が協力するものだと思っていたけど、自分が主体的に解決策を作っていくものだということに気づいた」と、ある女子生徒からのコメントです。
これこそが学びの主人公になる瞬間です。「もっと実践的な英語を勉強して世界に行きたい!」「バングラデシュに行って現地の状況を自分の目で見たい!」という声ももちろん大事ですが、ある目の前の現象を自分事化できたとき、人は学びの主人公になると信じています。そしてイングリッシュキャンプの醍醐味は5日間一緒に過ごした海外大学生とのお別れの時間です。オンラインで再現するのは難しい人と人との触れ合いから生まれる喜怒哀楽、プロジェクトをやりきった感覚、そしてもっとやりたかったという名残惜しさがこの瞬間に一気に溢れ出ます。このあと、またあの森をぐぐり抜けてバス停に向かう時に、この学校の生徒は恵まれた先生と環境で学べて幸せであるとグローバルメンターと話をしていました。
これからも、グローカルリーダーの発射台として、圧倒的原体験を届けていきたいと思います!
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