ラップトップ使ってると安心
安心する光景
前のnoteで,生徒が手書きしてると安心する,という話を書きました。どうしても自分が慣れ親しんだスタイルが安心だという当たり前なことなんですけれど,実際に生徒がどういう状態で授業に参加しているのかと考えると,単に手が動いてるから「よしよし,頑張ってるな」ということではありません。
おかげさまで本校も視察に来ていただく機会がけっこうあります。自分の授業をご覧いただいて,その後で質疑応答,意見交換というのがよくある流れです。今回,手書きのことを考えていたら,実はどんなツール使っているかでも印象変わるよなと思ったのでまとめてみます。
このページのトップ画像をご覧になって印象はどうでしょうか? 高校生の「情報」(本校ではSTEAMと呼んでます)の時間です。教科書とノートがないのは違和感あるかもしれませんが,情報の授業としては「安心する光景」ではないでしょうか?
これはKeynoteでプレゼンテーションを作成しています。これも「ちゃんとやってるな」感ありませんか? この学年は自分のiPadを持っていない学年だったので,MacBook Proを授業のたびに貸し出していたので,こんな授業風景です。
続いてこちら。これは実は授業ではありません。中学生でプログラミングに興味を持った生徒対象に開催したTech Campの様子です。MacBook Proを使って,アプリケーション開発のプログラミング。これぞ「情報」の授業のイメージでしょうか? (来年度はこんなこともやってみたいですけどね。)
なんか不安になる
ではこちらは? なんか急に不安になるとか,心配になるとか,そんな方が多いのではないでしょうか? わかります。私もそうでした。今でもそんな気持ちになることがありますから。
授業中の光景としては認めたくないかもしれません。何やら集まってiPadで授業と関係のないことをして遊んでいるのではないかと思いますよね。でも,これも「情報」の授業で,各自が今まで習ったことのない外国語を選んでWeb上の翻訳サービスやレッスンムービー等を視聴して練習。いくつかの決められた内容のフレーズが話せるようになったらClipsという音声認識字幕機能のあるアプリケーションで動画撮影。外国語のフレーズを紹介する動画を作るという,ちゃんとした授業です。遊んでいるわけではなく,それぞれ練習したり録画したりしているところです。
違いは?
どれも生徒は(私の知る限り)プロジェクトに真面目に取り組んでいます。いる場所も同じ。では何が違うのかというと,使っている端末。ラップトップと使っているのと,タブレット使っているのと,印象変わりませんかね? ラップトップ使っている授業を見た人からは滅多に出てこなくて,タブレット使っている授業を見た人からはよく出てくる質問は「生徒が余計なことしませんか?」「生徒が授業と関係ないことしませんか?」です。
ICT導入の壁っていろいろあるのですけれど,実はこの「印象」もけっこう高い壁になっていると思います。ラップトップ使ってタイピングしてるのはまだ「ガマン」できるけれど,タブレット使っていると遊んでいるようにしか見えなくて「ガマン」できない,そんな気持ちになる先生は多いと感じています。
どっち使おうが,授業に関係ないことやろうと思えば出来ます。タブレットの方がゲームアプリとか使いやすいかもしれませんが,ラップトップでもゲームは出来ますし,取り組んでいるフリして違うことやるのは簡単です。
でも印象は異なる。
本来ならば,どんなことをやりたいかで使う端末やサービスやアプリは決まるはず。どこでもそのような検討を経てICT導入は進むはず。でもなぜか「どの端末を入れるべきか」で検討が始まるところが多いように思います。ビジョンよりも端末が先,端末が決まってから「この端末で何をやればいいか考える」という話もよく聞くような。。。
こうなる原因の一つが,ラップトップとタブレットの「印象」の違いにあるはずないかと思えてならない。やりたいことはあって,それをやるにはタブレットの方がいいのだろうけれど,生徒がタブレットを操作している様子を見るのは不安。それだったらまだラップトップの方が安心。「そんないい加減なことで検討していない,失礼だ」と仰る方がいるのは承知です。でもみんな本当に「印象」に左右されていませんか? 「不安だから」と言えなくて「やっぱり6年後の大学受験に向けてCBT対策でキーボードが必要」なんて言ってないのかな。(タイピング習得は数年かかる特殊技能の修行かなんかでしょうかね???)そんなに今の授業で大量のタイピングが必要なアウトプット求めるようなことしてますか?
自分にとって適切なツールやサービスを選べる
これはPagesというワードプロセッサを使って,模擬定期考査問題を作ろうというプロジェクトの様子です。文書を共有してテキスト中心の文書を作る時には自分のiPadだけでなく,貸出用のMacBook Proを用意して,別のアプリを使っています。ワープロなのになんでiPadとPages? 定期考査のようなテキストだけでなく,表やグラフ,図や画像も入り,手描きもあり,レイアウトも複雑になる文書ではPagesのページレイアウト設定での文書作成がけっこう便利なのです。
こうした経験をしていく中で,自分にとって適切なツールやサービスを選べるようになってほしい。自分の創りたいものが実現できるならツールなんてどうでもいい。これが使えないとダメだという,そのほとんどが自分がそれが使えないと仕事にならないとか研究にならないという経験から言ってるだけで,その子どもが将来本当に必要とするのか考えてくれているのだろうかと思う。
じゃあなんてiPad?
本当に本当に小学校から一人一台環境が整うまでは,うちにやってくる生徒のほとんどは中高ではじめてICT機器を学びに使い始める。スマホも全員が持っていなくて,一台で出来るだけいろんなことやってもらいたい。活用が進んでテキスト入力が物足りなくなったら後からキーボードつけたいかもしれない。ドローイングもやってみたい。ムービーの編集もやってみたい。プログラミングもやってみたい。と,なると,
iPad一択なんじゃないの
と思う。今回のGIGAで示されているものに私学は準拠する必要はないけれども,確かにあれくらいのことは出来てほしい。文書作成や表計算できるだけじゃどうにもならないよねってことはみんなわかっているはず。純正無料のアプリやサービスでどこまで出来るか考えたら一択だよなあ。
ラップトップ使ってると安心しちゃう気持ちはわかる。でもそれで本当に生徒の未来を考えて,生徒に出来るようになってほしいことが実現できるのか,考えてみてほしい。
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