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クオリティを無駄に上げない

前回の投稿までは意識してほぼ週に1回何か書くようにしていました。で,最後の投稿で「みんな頑張りすぎじゃないの」と書いといて「あれ,自分もなんかこの時期(柄にも無く)無理してる?」と思ってほっといたらこんなことに。別に作家でもないし書きたくなったら書けばよし。

先生は必死です

懸念していた通り,世の大半のマジメな先生方は必死です。こんな事態で特に卒業式や入学式が出来るかどうかなんてことになると必死にならないはずがない。本校も二転三転どころか何転したのかわからないほどでした。息子も高校卒業だったのだけれど,もうほぼ諦めていた卒業式が日程を変更して行われ,保護者の立場としては本当にありがたいことでした。ご苦労いかばかりかと感謝。

行事だけでなく,今度は入学式も始業式も満足に出来ないままで休校になり,多くの学校が「遠隔授業」を余儀なくされはじめました。3月のもう考査も始まろうかという時期であり,春休み期間だったうちは,まあお休み中の「課題」をやってもらってなんとか凌ごうが出来ました。しかし4月になれば本来の授業がスタートします。しかもクラス開き,授業開きという,この後1年間のクラスや授業の行方を占う大事な期間が遠隔でのHRや授業になる

同業でなくても学校の先生達の焦燥感,危機感はご想像いただけるのではないでしょうか。そりゃまあ必死になります。

遠隔授業という救世主

学校によって環境は異なります

そもそもどうやって生徒に連絡取るのか? なんなら一人ひとり電話するのか,もう校内SNSが普及していてメッセージ送れば済んでしまうのか,これだけでも手間がだいぶ違います。

教材や課題をどうやって渡すのか? 

既に先生も生徒も何らかの端末があって,何らかのシステムが入っていて,何を送るかを考えれば良くて,どうやって送るを考えなくていい学校もあります。でも私の次男の学校では,今年度の教科書を渡すタイミングがなく,保護者が決められた時間に時差登校して,子どもの下駄箱に入れてある教科書と課題のプリントを受け取ってきました。(まあ,下駄箱に入れて持っていってもらうというシステム考えた先生は偉いと思う。)同じことやるのにこんなに差があるんだって初めて意識した人も結構いるんじゃないですか

ボクの授業をどう見せるのか?

教科書と課題渡して授業が成立するなら私達は不要です。(かなりの場面で不要になりそうだぞとウッスラ気がついてきたことはまた別の機会に書くとして。)さて,どうやってボクの授業を生徒に伝えるのだということになります。

さすがに今は大丈夫だと思いますけれど,何とか生徒を登校させられないかと無理しようとした学校や先生もいましたね。悪気はないと思います。登校して教室で自分の授業がないと生徒が大変なことになると本当に心配してのことでしょう。

生徒は登校できない,さあどうする,というところで出て来たのが「遠隔授業」です。どうやら何とかというサービスを使えば,リアルタイムで教室で行っている授業を配信することができるらしい。どうやら海外ではそれで授業が行われているらしい。いやいや海外どころか,あの学校では毎日6時間の授業を休校中も遠隔授業でやるらしい。そんな話がザワザワと広がりました。

今までだったら「それは海外だから」「あそこはICT先進校だから」「うちとは生徒のレベルが違う」と,関心もなかったはずなのに,この事態になったら急に「うちでも出来るんじゃないの」という反応になって来ませんでしたか? 「いやいや,今まで出来ないって言ってたじゃん!」とツッコミたくなった方もいらっしゃるのではないかと思います。正に授業をしたい先生にとって遠隔授業は救世主でした。この2,3週間,遠隔授業で休校期間を乗り切るぞという学校が増えて来ました。

遠隔授業,どんなイメージ?

情報伝達において情報が欠けていったり変わっていったりするのは仕方ない。これは情報の授業でも教えることです。だからリテラシが大事。遠隔授業はどうだったか? というか,現状どうでしょうか?

遠隔授業=リアルタイムで授業を配信 になっていませんか。今までやっていた朝礼もリアルタイム配信,授業も一コマ50分を6時間リアルタイム配信,もちろん終礼もリアルタイム配信でやっちゃおうみたいな。本当にそれを完全にやっている学校はありましたっけ? リアルタイム配信,もう面倒なんで,他のサービスもあるけれど「zoom」とします。zoomで全部やっている学校がありましたっけ?

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実際は

実際には,zoomでリアルタイムに配信ややりとりもしつつ,教材や課題を配信して生徒はそれに取り組み,期日までに提出。それの解説をYouTubeなどで見られるようにしておいて,質問がある場合にzoomを活用なんて事例がほとんどだったはずなのです。でも気がついたら「全部出来ちゃう」みたいなことになっていた。

誰だって今までやっていたやり方をわざわざ変えたくはない。だから自分のいいように解釈してしまう,情報を改変してしまう。何だかzoomさえあれば今までの授業や教育が出来てしまうんじゃないかと夢見てしまった

ちょっと落ち着こう

うちでも遠隔授業に向けて,動画を配信する方法の研修を行いました。まるまるzoomを使っての50分授業なんて極めてハードル高いので,まずは短い説明の動画をiPhoneやiPadで撮影して簡単に編集,YouTubeやGoogleドライブにおいて生徒に見てもらう。課題は今まで通り校内SNSや授業支援サービスを使ってやりとりという方法をオススメしました

自分が映るのが嫌ならば画面収録機能を使えば画面を操作しながら,必要なことを書き込みながら解説すれば動画が完成してしまいます。これを同じように見てもらうのだっていい。

YouTube見てると合成動画使ってBGM入れて字幕も入れてなんてのがあるけれど,正直,今それはオススメしませんとも。そしてzoomでリアルタイム配信して生徒とやり取りするのが難易度最も高いですとも伝えました。

「もっとやりたい」という「念」を感じました。そりゃそうです。今まで通りの授業がzoomで出来ると思っていたのに,やらない方がいいですよなんて言われたら期待を裏切られたと感じます。授業時間は今までだって足りなかったのに,そんな悠長なこと言ってられない,どうしてくれるんだ。お気持ち大変わかります。でもちょっと落ち着こうではありませんか。

結局,納得はしてもらえてないとは思うものの,午前中に短い時間で数コマの設定。ずっとzoomではなくて今まで使って来たいろんなサービスを組み合わせての遠隔授業が設定されて来週からスタートとなります。これで範囲が終わるのか? もちろんこのままでは終わるとは思えません。でも今まで通りならそりゃ確かに終わらない。それでも終わらないといけないならどうするのか考える。そこは今まで毎日授業があって毎日生徒が通ってくれて夕方まで授業が何時間もあってという環境に甘えてきたのだから考え直さないといけないということは認めないといけないのだと思います。

出来る方法を生徒に見せる

飲食業の知り合いを見ていると学校どころではなく大変そうです。授業料が(今のところ)ちゃんと入ってくるのとは訳が違います。夜の営業ができないならどうするのか,昼に営業するとか,テイクアウトを中心にするとか,お互いに用意できる商品を持ち寄って販売するとか,様々な工夫をしてこの事態を乗り切ろうとしています。学校だけが「今まで通りでやりたいんだ!」というのはワガママかも。

生徒には「出来ないんだったら出来る方法を考えろ」と常日頃言っているのであれば,こんな時こそオトナが「こうしたら出来る」方法を生徒に見せる良い機会なのではないでしょうか。生徒に「教えてください」と言われて「自分で考えろ」と言ってきたのだから,私達も「誰か何とかして!」ではなく「自分で考える」ところを見せるチャンス

そのためにはクオリティを無駄に上げないのも一手

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授業力もあってテクニカルな問題にもすぐに対応できそうならzoomで50分やってしまうのも一つの解決法。でもそれはほとんどの人には無理。そうなるとやはりいつでも見られる動画を用意して,課題と組み合わせるのがやりやすいかなと思っています。ただ,その時に「クオリティを無駄に上げない」ことを意識しないと何時間かやったらもう仕事が追いつかなくなると思います。本当に最初は「撮って出し」でいい。慣れてきたらBGMつけるもよし,編集するもよし。そもそもちょっと言い間違えたくらいで撮り直しなんて無駄でしかない。いつまでも見られる保存版ならまだしも,たぶん今回だけで使い終わってしまうのだろうし,そもそも生徒は「あ,噛んだ」なんて細かいところ気にしません。ふだんの授業で噛んだらやり直しなんてしない,ですよね? YouTuber達はもちろんのこと,WebサイトやSNSに登場するすごい先生のすごい動画なんて気にしないのが一番です。

今回,えらい長文になってますが,長いついでに。動画慣れしている先生方もここぞとばかりにすごいの上げないでくれると助かるなあ。「簡単な道具だけでOK」とか言って,カメラもあって照明もあってマイクもあって,何ならスイッチャーもあって,ってテレビ局よりは簡単な道具かもしれないけれどそれは全然簡単じゃない。スマホかタブレットがあればOKというのが,ギリギリ「簡単な道具」だと思うのだけど。

元に戻って。動画のクオリティに拘らなくていいので,その短い動画の中で何をどうやって伝えるのか,そこの質には拘りましょう。今までだったら50分使えたのが5分だったら,10分だったら,そこで伝えないといけないのは何? どうやったら短い時間で出来るのか,そこは拘りましょう。

板書ももちろん大事。でも板書のクオリティに拘って,何度も書き直したり,チョークを何色も使ってみたり,板書だけで授業終わっちゃったら意味ないですよね。たぶん動画のクオリティに拘るのも同じこと。そこで無駄に時間を使わない。

「あんたはそういうとこいい加減」よくわかってます。でもねえ,いい加減にしとかないと先生も潰れます。先生潰れたら生徒も潰れます。無駄にクオリティ上げるのはやめときましょう

で,来週からやってみてどうなるのか? そこもまた書けたらと思っています。


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