第30章 技術のさらなる向上
第30章 技術のさらなる向上
翔太は、村上との対決を経て、自分の未熟さを痛感していた。確率だけを頼りにしていては、真の勝負師にはなれない。スロットには、ただの運や知識だけではなく、**「技術」**が必要だった。
「台は嘘をつかない。人間の方が勝手に思い込みでミスをする。」
村上の言葉が頭の中を巡る。
翔太は、技術をさらに向上させるために、本格的な分析と実践に取り組む決意を固めた。
データ分析の重要性
翔太はまず、データを集めることから始めた。
以前までは、スロットを打つ際に大まかな確率を参考にする程度だったが、それでは不十分だと気づいた。
「もっと詳細に、もっと具体的に、台の挙動を知る必要がある。」
ホールの出目履歴を記録し、各台の傾向を分析する。店ごとの設定のクセや、時間帯ごとの当たりやすいタイミングを調べる。
特に、村上が言っていた「勝てる状況だけを狙う」ためには、他のプレイヤーの行動も考慮する必要があった。
翔太は、ホールに通うたびに他の客の動きを観察し、データをメモするようになった。
「この台は、誰がどれくらい回しているのか。」
「どのタイミングでボーナスが出ているのか。」
「どの客が、どの台を狙っているのか。」
最初は膨大な情報に混乱したが、少しずつ法則が見えてきた。
ホールの流れを読む
次に、翔太は「ホールの流れ」を意識するようになった。
ホールは生き物のようなものだ。
時間帯、曜日、イベント、客層……あらゆる要因が複雑に絡み合い、勝ちやすい瞬間と勝ちにくい瞬間が生まれる。
例えば、朝一は設定狙いのプロが多く集まる。
昼過ぎには、仕事帰りのサラリーマンが軽い気持ちで台を回し始める。
夕方以降になると、当たり台を探して立ち回るハイエナたちが動き出す。
「この時間帯なら、狙うべき台はどれか？」
翔太は、店内の動きに敏感になっていった。
直感と理論の融合
データと流れを把握した上で、翔太は「直感」も大切にすることにした。
以前の自分は、なんとなく「この台が良さそう」と思ったら回していた。しかし、今は違う。
直感の裏付けとなる根拠を持つことが重要だった。
「この台は、前回のボーナス後にあまり回されていない。」
「過去のデータを見ると、この回転数で当たる可能性が高い。」
「隣の台が爆発した後、この台は反応しやすい傾向がある。」
翔太は、直感を鍛えるために、自分の予測が当たるかどうかを繰り返し検証した。
「当たったときは、なぜ当たったのか？」
「外れたときは、どこが間違っていたのか？」
この反復作業を続けることで、翔太の精度は少しずつ向上していった。
誠一のアドバイス
翔太の変化に気づいた誠一は、ある日こう言った。
「お前、最近いい感じになってきたな。」
「そうですか？」
「以前はただの『運頼みの若造』だったが、今は『勝負師の目』をしている。」
翔太は、誠一の言葉に手応えを感じた。
しかし、誠一は続けてこう言った。
「でもな、今のお前はまだ半人前だ。」
「え？」
「本当の勝負師は、勝つことが目的じゃない。『勝ち続ける』ことが目的なんだ。」
「……！」
「一回や二回、勝ったくらいで調子に乗るな。本当に強い奴は、どんな状況でも冷静に、自分の勝ち筋を見つけられる。」
翔太は、その言葉の意味を噛みしめた。
技術を極める道のり
翔太は、さらなる成長を目指して、自分に課題を課すことにした。
「連続して勝つこと。」
一回の勝ちに満足せず、次も、その次も勝ち続けることを目標にした。
そのためには、さらなる精度の向上が求められる。
ホールに足を運ぶたびに、翔太は「今日の勝ち方」を考えた。
・どの台がチャンスなのか？
・どの客の動きを参考にすべきか？
・リスクを減らし、勝率を上げるにはどうすればいいか？
すべての選択に理由を持ち、確信を持って台に座る。
翔太のプレイスタイルは、確実に変わり始めていた。
新たな壁へ
技術が向上するにつれ、翔太は「勝負の本質」に気づき始めていた。
「結局、スロットは『確率のゲーム』ではなく、『人間のゲーム』なんだ。」
データを読み、店のクセを把握し、相手の心理を見抜く。
それが、真の勝負師に求められる能力だった。
しかし、それでもまだ翔太は満足しなかった。
「もっと上を目指せるはずだ。」
そして、翔太は次の目標を設定する。
「プロと呼ばれるレベルまで到達すること。」
この決意を胸に、翔太はさらに深いスロットの世界へと踏み込んでいくのだった。