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第17章 新たなる挑戦者
第17章 新たなる挑戦者
スロットホールの入り口に足を踏み入れると、翔太はすぐに感じた。いつもとは違う空気が漂っている。プレイヤーたちの視線が一箇所に集中し、ざわめきがホール全体に広がっていた。
「あれは誰だ?」翔太が人混みを避けながら視線を追うと、そこには一人の男が立っていた。鋭い目つきと洗練されたスーツ、そしてどこか余裕のある表情。彼の存在は、ただそこにいるだけで周囲を圧倒していた。
新たな存在の出現
その男は、ホールの中でも目立つ台に座り、リールを回し始めた。その動作は無駄がなく、まるで機械のように正確だった。隣に座るプレイヤーたちが戸惑いながら彼を見つめる中、彼は一言も発せずに淡々とプレイを続けていた。
「誰だ、あの男は?」翔太は疑問を抱きながら山口に尋ねた。
「佐久間だ。」山口は低い声で答えた。その名前を聞いた瞬間、翔太は聞き覚えがないにもかかわらず、何か不安な感覚を覚えた。
佐久間の噂
「佐久間…って、どんな人なんですか?」
山口はタバコに火をつけ、一息ついてから語り始めた。「あいつは、業界で『不敗の佐久間』と呼ばれている男だ。どのホールに現れても、大抵の場合、勝利を収めて帰る。」
「でも、そんな人がなぜここに?」翔太は首をかしげた。
「おそらく、ここで何かを試すつもりなんだろう。新しい台の設定や、ホール全体の傾向を調べに来たんじゃないか。」
山口の言葉に含まれる警戒心は明白だった。彼は佐久間を尊敬しつつも、同時に彼が持つ何か危険な雰囲気を嫌っているようだった。
佐久間の技術
翔太はしばらく佐久間のプレイを観察していた。彼のリールの回し方は、まるでリズムがあるかのようだった。一定の間隔でボタンを押し、リールが止まるたびに微笑みを浮かべる。その笑みは、すべてが計算通りだと言わんばかりのものだった。
「山口さん、あの人の何がそんなにすごいんですか?」
「まず、あいつの台の選び方を見てみろ。」山口は佐久間が座る台を指差した。「あの台は、確かに勝率が高い設定になりやすい場所にある。だが、それだけじゃない。佐久間はリールの動きや店の意図を読み取る力が常人離れしているんだ。」
「リールの動きを…読む?」翔太は驚きを隠せなかった。
山口は頷きながら続けた。「そうだ。リールがどんなパターンで回り、どのタイミングで止まるか。普通のプレイヤーにはランダムに見える動きも、あいつにとってはヒントになっている。」
佐久間との対峙
翔太は気づけば佐久間の近くに足を運んでいた。その瞬間、佐久間がふと翔太に視線を向けた。鋭い目に捉えられた翔太は、一瞬身動きが取れなくなる。
「君、新顔だね。」佐久間が口を開いた。声には威圧感がなく、むしろ柔らかい響きがあったが、その裏には確固たる自信が感じられた。
「ええ、まだ初心者です。でも、少しずつ勉強中です。」翔太は勇気を振り絞って答えた。
「勉強中か。それはいい心構えだ。」佐久間は微笑んだ。「この世界は奥が深い。学び続ければ、いずれ君も面白い景色が見えるだろう。」
山口の忠告
翔太が佐久間と別れた後、山口は険しい顔で彼を見つめていた。「翔太、あいつには深入りするな。佐久間はただのプレイヤーじゃない。その裏には何か大きな意図が隠されている。」
「でも、彼は悪い人には見えませんでした。」翔太はそう反論したが、山口は首を横に振った。
「いいか、翔太。人は見かけだけで判断するな。佐久間みたいな奴は、笑顔の裏でどんな計算をしているかわからないんだ。」
新たなステージの幕開け
その夜、翔太はベッドに横になりながら佐久間との会話を反芻していた。彼の存在は、翔太にとって新たな刺激であり、同時に大きな挑戦を意味していた。
「佐久間さんみたいにリールを読めるようになれば、もっと上を目指せるかもしれない。」翔太の胸には燃えるような闘志が湧き上がっていた。
だが、その挑戦がどれだけ危険なものになるのか、翔太はまだ知る由もなかった。新たな挑戦者の登場により、翔太のスロット人生はさらなる深みへと進んでいく。