第28章 ルールの裏に潜む秘密
第28章 ルールの裏に潜む秘密
スロットホールに足を運ぶたび、石田翔太は一つの疑問を抱えていた。
「なぜ、店は常に利益を上げ続けられるのか？」
スロットは「運のゲーム」と言われる。しかし、それだけでは説明がつかないような不思議な現象が数多くあった。
例えば、なぜ特定の時間帯になると連続で当たりが出る台が現れるのか？
なぜ「勝ち続けるプレイヤー」はごく一部なのか？
その答えを知るためには、スロットの「ルールの裏側」にある仕組みを理解しなければならなかった。
誠一の問いかけ
「翔太、お前はスロットの『ルール』をどこまで知っている？」
ある日、山口誠一はそう切り出した。
「ルール……？ リールを回して、絵柄を揃える、それだけじゃないんですか？」
誠一は苦笑した。
「確かに、それが表向きのルールだ。だが、スロットの世界では『本当のルール』を知らなければ、決して勝ち続けることはできない。」
「本当のルール……？」
翔太が疑問を口にすると、誠一は低い声で続けた。
「お前は、スロットが完全なランダムで動いていると思っているか？」
「えっ……？」
「もし完全にランダムなら、店はどうやって利益を維持できる？」
翔太は息をのんだ。考えてみれば、当たり前のことだった。店側が利益を確保できる仕組みがあるからこそ、スロットホールは成り立っているのだ。
「じゃあ、どうやって……？」
誠一は翔太の目をまっすぐ見つめながら言った。
「それを知る覚悟があるか？」
翔太は大きく頷いた。
スロットの本当の仕組み
誠一は翔太を店の片隅に連れて行き、スマートフォンを取り出した。そして、あるページを開いて見せた。
そこには「乱数発生装置（RNG）」という言葉が書かれていた。
「これは、スロットマシンの心臓部とも言えるシステムだ。」
「乱数発生装置……？」
「スロットの当たりは、リールの見た目で決まるんじゃない。内部のコンピューターがリアルタイムで乱数を生成し、当たりを決定しているんだ。」
「でも、それなら本当にランダムじゃないですか？」
「そう思うだろう？ だが、ここに大きな罠がある。」
誠一はスマートフォンの画面をスクロールしながら続けた。
「乱数が完全にランダムに見えても、実際には『特定の確率』で当たりが出るように設計されている。そして、その確率は店が利益を確保できるように調整されている。」
翔太は目を見開いた。
「つまり、スロットは完全な運のゲームじゃなくて、店が計算した確率の範囲内でしか勝てないってことですか？」
「その通り。スロットには、プレイヤーがどれだけメダルを投入し、どのタイミングで当たりを出すかという『流れ』がある。 そして、その流れを読めるようになれば、ただの運任せのプレイヤーとは違う世界が見えてくる。」
店の利益を生み出す仕組み
「じゃあ、どうやって店は利益を上げ続けているんですか？」
翔太の問いに、誠一は小さく笑った。
「スロットには、いくつかの『隠されたルール』がある。」
「隠されたルール……？」
「例えば、『ペイアウト率』という言葉を聞いたことがあるか？」
「……いや、初めて聞きました。」
「ペイアウト率とは、投入されたメダルのうち、どれくらいの割合がプレイヤーに還元されるかを示す数値だ。一般的に、スロットのペイアウト率は90%前後に設定されている。」
「90%なら、そんなに悪くない数字じゃないですか？」
「だが、それが落とし穴だ。この数字は長期的な平均値であって、短期的には大きくブレることがある。 つまり、一時的に連勝することはあっても、長くプレイすればするほど、最終的には店が勝つ仕組みになっているんだ。」
翔太は思わず息を飲んだ。
「さらに、店は『設定変更』という技術を使って、特定の時間帯やイベントに合わせてペイアウト率を調整することもできる。」
「そんなことまで……？」
「だからこそ、『どのタイミングで勝負するか』が重要になってくる。 ただ闇雲にプレイしていては、絶対に勝ち続けることはできない。」
勝負の裏側を知る者たち
「だから、勝負師たちは『流れ』を読むことに全神経を集中させるんだ。」
誠一は言葉を続けた。
「スロットで勝つためには、ただ目の前のリールを見ているだけじゃダメだ。店の動き、他のプレイヤーの挙動、時間帯、イベント――すべてを観察し、流れを読む必要がある。」
翔太は、今まで自分がどれほど浅い部分しか見ていなかったのかを思い知らされた。
「本当に勝ち続けるプレイヤーは、ただの運がいい人間じゃない。ルールの裏にある法則を理解し、それを利用する者だけが生き残る。」
新たな視点
スロットホールを見渡すと、今までとは違う世界が見えてきた。
「この店の今の流れはどうだ？」
誠一の問いに、翔太はじっと観察を始めた。
「さっきまで当たりが続いていた台が、急に静かになった……逆に、別のコーナーで当たりが出始めている。」
「悪くないな。」
誠一は満足げに頷いた。
「これからは、プレイヤーではなく『勝負師』としてホールを見るんだ。」
翔太の中で、何かが変わった瞬間だった。
「ルールの裏側を知れば、見える世界が変わる。」
彼は新たなステージへと、一歩を踏み出したのだった。