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降ったり止んだり
昨日雨に負けて行くのをやめたカフェへ今日は行くことにした。
正直今日も、なんかめんどくさいなあって気分ではあったんだけど、また一日家にいたら落ち込みそうだったから、よっこらせと準備をして出かけた。
ひとりで過ごす時間が好きで、ひとりで出かけるのも家にいるのも好きだけど、誰とも会わずに2,3日過ごすとそれはそれで元気がなくなるというめんどくさい性質をわたしは持っている。
1軒目に行くカフェは決めていた。
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注文をする時、「カフェラテの、アイスの、Mサイズで、、」と言ったあと、少しの間考えた末に「あとバスチーもお願いします。」と付け加えた。カフェラテ以外のドリンクも見ていたけど、レジ前に行くと「カフェラテで、、」って言っちゃうのはもう癖なのかもしれない。
わたしはこのカフェが好きなんだけど、いつもはほかの店舗を利用している。店舗によって雰囲気がちがうらしいので今日はほかのところにも行ってみようと思ったのだ。
午前中だったからなのか、台風が近づいているからなのか、店内は空いていた。
わたしのほかには、パソコンを開いて何かしている男性と、二人組の女性がいた。
わたしはその二人組の話を終始盗み聞きしていた。
わたしと趣味が似ていて会話に入れてほしくなったが我慢した。我慢とか言うけどここが立ち飲みの居酒屋だったとしてもわたしには声をかけることなどできない。
話を聞きながら、持ってきた本を読み進めていると、1時間も経たないうちに雨が降りはじめた。窓際の席だったので強まる雨をぼんやり眺めていた。
わたしは傘を持ち歩けないという病気なので、台風が来ていると言われているのに今日も傘を持たずに家を出てしまった。なんとなくこの雨は弱まる気がしたので、その時にすぐに店を出れるようにとバスチーとカフェラテを口に運ぶペースをあげた。
ほどなくして雨が弱まり、「今だ!」と思って店を出たんだけど、その30秒後にはまた雨足が強くなった。
仕方なく駅まで走った。よりによって今日は白いスニーカーで来てしまった。傘を持たずに出かけてしまうのはまだしも、靴を選ぶことくらいはわたしにも出来たんじゃないだろうか。いや、無理か。
ほんとうは最初のカフェにいる間に次の目的地を決めるつもりだったのに、会話を盗み聞きしたり本を読んだり雨の様子を見たりするのに忙しくて、結局行き先を決定せずに店を出てしまった。
天気が良ければブラブラ歩いて探すというのもありだったけど、傘無いし白い靴だしそれはやめておいた。
とりあえず電車に乗り、来る時に乗り換えで降りた大きな駅に戻ることにした。
バスチーですこしお腹も満たされていたし、その駅のカフェは詳しくないというのもあって、電車を降りてからも何も考えずに目の前のビルの中に入ってみた。
映画を観るのもいいなと思って、映画館の、自分でパネルをタッチして購入するタイプのチケット売り場まで行ったけど気が変わってやめた。
今度は地下にある大きめの本屋さんまで行くことにしたけど地下フロアが広くて、本屋さんに着く頃には精神的に疲れてしまっていた。
入り口付近で手に取った本の1ページ目を立ち読みしてみたところで、やっぱりブックカフェに行こうと思いついた。
この駅の一つ前の駅にブックカフェがあるというのは知っていた。というか1軒目のカフェで少し調べた時に見かけていた。けど気分じゃなくてスルーしていた。
来た道を戻る、しかも自宅とは反対方面に、というのはなんとなく気が乗らなくて、もうこのまま帰ってしまおうか。という選択もよぎった。
でも、ここで帰ったらわたしはどうせまた落ち込むぞ。と言い聞かせて改札へと戻った。
歩きながら、今日は自分の声が聞こえにくい日だなと思った。いつにもまして優柔不断というか。お昼ごはんを食べてからブックカフェに行こうかとも思ったけど何を食べたいか思いつかなくてやめた。
まあでも、本当に疲れていたら迷わず帰るから、「何かわからないけどなんかしたい」って気持ちを無視するのは良くないと感じたのだろう。
優柔不断だからこそ計画を立てるのが好きなんだなとも思った。
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着てきたリネンのジャケットのポケットは小説を入れるのにちょうどよかった。ポケットに本が入っていると電車の中などの少しの空き時間でもスマホじゃなくて本を取り出すことができていいなと思った。
ブックカフェでは、駅ビルで1ページだけ立ち読みした本の続きを読んだ。
カレーを頼むか迷ったけど、ここは本に集中しようと思いやめた。
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おいしいごはんが食べられますように
本のタイトルに惹かれて読んだけど、なんとも言えない気持ちになった。
余力があればあとでこの本の感想を書いてみる。
途中で隣の席に自分の親くらいの歳であろう夫婦が来た。奥さんのほうが笑いながら「さっきの言葉まだ飲み込めないんだけど」「あんな風に言わなくたって」と不満を口にし、旦那さんが「ごめんね」「ごめんね」と繰り返していた。そのあとしばらく二人は黙っていたけど、いつの間にか別の話題で笑っていて、いい夫婦だなと思った。
本を半分ほど読んだ頃には1時間弱が経過していて、「コーヒーしか頼んでないしここで切り上げてこの本を買って帰った方がいいんだろうな」と思ったんだけど、結局最後まで読んでしまった。誰に対してかわからないがなんだか申し訳なくなった。
カフェを出て、せっかくだしもう1ヶ所くらい行こうかとも思ったけど、帰ったらちょうどいい時間になりそうだし帰宅することにした。
結局お昼ごはんを食べそびれたので小腹が空いていた。食事をするには微妙な時間だけど夕飯までは我慢できなくてコンビニでおやつを買って帰ることにした。
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レジ袋を断って財布から小銭を出している間、手持ちぶさたな店員さんは品物の上にお手ふきを添えてくれた。いや、袋に入れる時もきっと入れてるんだろうけど。
家で食べるし別にお手ふきはいらないんだけどありがたく受け取った。
せっかくなので温かいお茶を淹れて、コンビニのおやつをお皿にうつしてフォークで食べてカフェ気分を味わった。
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そして今、こうして一日を振り返っている。
今日はやろうか迷ってやめたことが多い。だけど、外に出て天気を感じて、他人の会話に耳を傾けて、本の世界に入り込んで、ひとりで家にいるより少しはおもしろい一日になったはずなので良い。
何かをするというのも、するか迷ってやめるというのも、どちらも自分の希望を叶えていると言えると思う。
結局雨は降ったり止んだりだった。わたしの優柔不断な一日にぴったりな天気だった。