マイレビュー ルックバック
Amazonプライムで、ルックバックを観た。
チェーンソーマンの藤本タツキが突如(だなと当時思った)発表したジャンププラスの読切漫画の映画化。漫画のサイズに合わせて、1時間という短い尺になっている。
チェーンソーマンの面白さがよく分からず、すぐに読むのをやめた。年を取ったんかなと嘆いていたが、このルックバックを読んだとき、心から藤本タツキを絶賛できたのが嬉しかった。たしか夜中に見つけて、布団の中で一気読みした。
そのままSNSでトレンド入りして、盛り上がったところで、京アニの事件を想起させるとして、消されたという記憶がある。(その後、一部のセリフが修正されたらしい)
その漫画が映画化されたのだ。
主人公の藤野は、学年新聞に4コマ漫画を連載し、周囲から絶賛されていたが、ある日、引きこもりで不登校の京本が描いた漫画が並んで掲載される。京本は絵画のような絵で、風景画のような漫画。京本と比較されて普通の絵だと同級生に言われた藤野はその日から独学で猛特訓し、漫画の道を極めていく。その後一旦は諦めたが、京本が藤野の漫画の大ファンだと知り、藤野と京本は一緒に漫画を描き、プロデビューを果たす、、、という話。
舞台は東北、京本が後に通う大学も藤本タツキの母校をモチーフとしていて、藤野と京本の名前を足すと藤本になるように、ある意味で自身のバックグラウンドを描いたような作品になっている。
そこには、ひとりの少女の戦いが描かれている。
天才ともてはやされ、ライバルが出現し、ひとり鍛錬に励む。孤独な戦い。
そして、そのライバルと出会い、意気投合し、プロをめざす。世界へ打って出る戦い。
成功をおさめ、ライバルであり戦友が去ったあとに訪れる再びの孤独な戦い。
そして、その戦友が狂気に倒れ、帰らぬ人となったあとの勝利のない戦い。
それらをひっくるめて、ひとり挑む戦い。
その力強く、寂しそうで、脆そうな背中。
そこまでの戦いをしていたかと問われると下を向くけど、かつての自分を思い出すとともに、一生懸命絵を描いたり、何やら熱心に作品を作る子どもたちを思い出した。
その壮絶なストーリーの一方で、勇気をもらった気もする。振り返っても戻れず、ただただ、前に進むしかないのだ、結局。
映画作品としては、絵も音楽も編集も脚本も、いずれも優れていた。原作のもつエネルギーそのもののおかげといえるのかもしれない。