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柄シャツ以降

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柄シャツ以降(文フリ東京39以降)に書いたエッセイのまとめ。
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記事一覧

日記:リフレクション・エターナル

日記:リフレクション・エターナル

Nujabesのビートが自室全体に響き渡っている。昨秋に入った大阪のカフェがたまたま「Nujabesしか流れない状態」だったことから出会ったビートメイカー、という記事を去年書いたので詳細は割愛するけれど、1年以上経った今も折に触れてひたすら垂れ流している。星野源さんの音楽番組でもついに特集が組まれるらしいので嬉しい。源さんは折に触れて『reflection eternal』を流していたもんな。

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銭湯へ行けばどうにかなるのか

銭湯へ行けばどうにかなるのか

銭湯へ行けば万事解決すると思っている節がある。寂しさも辛さもどこにも行けないような気持ちも、とりあえず銭湯、番台、カラン、湯船の中、水風呂、カラン、湯船の中、といった具合に目的地が設定されていくことでまだまだ人生余裕っしょ、と解決した気になる。つまり、心の支えである。

銭湯ならどこでもいいというわけではない。わたしの場合「どこに行くか」も重要で、その行先はたいてい東京・高円寺の小杉湯だった。20

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もう一度キッチンに立つために

もう一度キッチンに立つために

もう一度料理をするために文章を書く。左記の文章はバックスペースキーを押した後にタイプされた文章で、「もう一度料理をするために料理を書く」とタイプミスしてしまった程度には、料理をできていないことがわたしの心をうっすら覆っているここ2ヶ月。あと一歩、いや五十歩、炊飯器に手が届かない。料理とともに白米あるべし、縛り付けられた伝統的な食卓の画が飛び出してくる。ちゃぶ台、湯気がたったワカメと豆腐の味噌汁、焼

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悪役の黄色い靴下

悪役の黄色い靴下

 求婚待ったなし。お嬢様はわたしと相思相愛。いやはやわたしとしたことが。この黄色い靴下はたいへんイケており、ことさらに彼女のハートを射抜いてしまう。それゆえお嬢様はわたしに夢中で、夜も眠れない。ああお嬢様!お嬢様!お嬢様——と、一方通行の恋に狂い続ける悪役を演じたことがある。シェイクスピア『十二夜』のマルヴォーリオという、哀れな執事のこと。

 黄色いロングソックスを履いて、お嬢様が自分に惚れ込ん

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「ごまをすってお待ちください」

「ごまをすってお待ちください」

 好きなとんかつ屋で「ごまをすってお待ちください」と毎回言われる。わたしは「はい」と応えて、言われたとおりにごまをする。「リスクマネジメント」と心の中でつぶやきながら、右腕も左腕もそこそこの握力、すってはやめで水を飲み、すってはやめで水をのみ、水がなくなれば注いで飲んで、レモン水だなと思ってごまをすり終え、そこでとんかつが到着とはいかず、手持ち無沙汰で飲んでは注ぎ、また飲んで注いで飲んでくらいでよ

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柄シャツ以降

柄シャツ以降

 このままだと柄シャツを着ない人生になる。文学フリマ東京38を翌々日に控えた夜のこと、両者柄シャツを身に纏ったチコカリートと呂布カルマがMCバトルしている動画をYouTubeで見ながら、そういえば自分は柄シャツを着たことがないなと思った。なぜその日だったのかはわからない。呂布カルマのMCバトルなぞ云百回と見てきたはずなのに(呂布カルマはよく柄シャツを着ている)、なぜこの日思ったのか。思い付きは、唐

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