カンボジアのアモック
ほんわかとした爽やかさを乗せた、卵のお料理を、食卓に添えてみる。速度を速めた春の風に、うまく乗せてもらうことができなくて、どこかぼやっとしてしまう日の私を、暖かく包んでくれるような気がする。あー、ちょっと外にでもでて、お花でも摘んでこようかなあ。
料理の名はアモック(amok/fish amok)。主に、カンボジアで食べられているものだ。
タイカレーの風味をほんのりと感じながら、カラーピーマンやら、レモングラスやら、コブミカンの葉やらの爽やかな香りを享受する。おお、これは、カラーピーマンの存在を、他の具材たちがやさしく引き立ててくれているなあ。あー、今日はなんだか…、という日の自分にもすっと馴染んでくれる。
カンボジアのお料理は、もう、まさに東南アジアだねえ、と言いたくなってしまうような雰囲気を漂わせている。味付けのベースは魚醤が多くて、コブミカンの葉やレモングラスなどの爽やかなハーブを使い、煮込む時には、ココナッツミルクをどばっと入れることの多い、ここのお料理は、お隣のタイ、ラオス、ベトナムのお料理がうまい具合にまざっているのだ。まあ、タイほど辛くはないようだけどね。
きっと長い間、お互いに影響を与え合いながら、食文化を発展させてきたんじゃないかなあ。例えば、大きな力を持っていた、クメール王朝の時代(802年-1431年)もあったし、その後、アユタヤやベトナムに服従していた時代もあったわけだし。カンボジアは。色んな時代が過ぎ去る間に、文化も行ったり、来たりしているはずだよねえ、きっと。
さて、このアモックも詳しい由来なんだが…。よくわからなくて…。
タイのhor mokなんかは、アモックに絶対に関わりがあるだろうと思うんだけど。これは、レッドカレーペーストに、新鮮なお魚、ココナッツミルク、卵、調味料を入れて蒸したお料理で、カンボジアのアモックにかなり近いんだよね。言葉のひびきも、瓜二つだし。どちらか先に生まれたものがもう一つの土地に伝わり、そこで根付いたのではないかなあ。
さらには、マレーシア、インドネシアのオタオタ(otak otak、白身魚のはんぺんを具材にしたココナッツカレー風のチリペーストで煮込んだお料理。)や、フランス領時代(1863年-1953年)に卵のココットなんかが伝わって、こんなお料理に変化していったのかなあなんてことも考えてしまう。例えば卵のココットなんかだったら、じゃあ、そこに淡水魚を入れてみようかしらだなんて、考えて発展していったのかもしれないし。
でもさっきも言ったけれど、はっきりとした由来についてはなかなかわからないんだ。
その理由の一つに、ポル・ポト政権の時代があったことが挙げられる。その時代があったことで、親から子へ、代々伝えられてきた母の味や、その料理への思いを伝えていくことも、できなくなってしまった家族がほんとうに沢山いるのだ。今、こうして、食べられているカンボジアのお料理は、その時代を経て、残った人々の手で、再び築きあげられたものである。
では最後になってしまったが、作り方を見ていこう。
まずは、にんにくと大さじ1くらいのグリーンカレーペーストを炒め、香りが広がったら野菜(たまねぎ、カラーピーマン、エシャロット)を投入。
火が通ってきたら、カレー粉を大さじ1くらいと、コブミカンの葉、レモングラスをとんっ。
そして、ココナッツミルク入れて、ぐーつぐつしてきたら、白身魚を入れる。
最後に卵でとじたらできあがり。
本格的なものだったら、このアモックは、バナナの葉に具材を流し込んで蒸すのだけれど、家で食べるのであれば、こんな感じでいいと思うんだ。あーなんか卵で簡単な料理ができないかな…。でも、いつもの卵料理は少し飽きてしまった。なんて時にも気軽に作れるしね。
スーパーで好きな味のカレーペーストを買って、半額の魚を買って、残り物の野菜を入れて、あっつあっつのまま、ご飯とともにかきこみたい。あっ、カラーピーマンとコブミカンの葉は是非とも入れてほしいんだけど。でも、肩を張らずに作りたいお料理だなあ。
そうそう、今回は、通りすがりの方に頂いた、カレー粉を使ってみました。Anthony The Spice Makerという、シンガポールのスパイスメーカー?さんが作っているもの。少し芳ばしい香りがして、ついつい、いつか旅した南国に思いを馳せてしまう。この芳ばしさは、タンドリーチキンなんかにも合うだろうなあ。
今回も色んな記事を参考に、書かせていただきました。
この記事が参加している募集
最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。