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【エッセイ】咳をしても、ぎっくり

 石川啄木、いいこと言いますね。
 「咳をしても、ぎっくり。」
 まさにその通り。

 どうでもいい話ですが、ぎっくり腰になりました。土曜日に日用品の買い出しに行って、重い荷物を持って階段あがったのがよくなかったみたい。

 え?
 石川啄木の言葉、間違ってますって?
 ああ、そうそう。
 「ぎっくりしても、ひとり。」
 でしたよね。いやあ、お恥ずかしい。あんな有名な言葉を間違ってしまうなんて。
 どちらにしても、真理を捉えていますねえ。さすが、偉人となるお方は違いますね。

 私は過去に、一年のひとつの季節に一回ずつ、ぎっくり腰をやっていた時期があります。回を重ねるごとに、どんどんひどくなっていき、最終的にはベッドにすら上がれない状態になりました。
 どこかに摑まっても立ち上がれないので、赤ちゃんのようにはいはい移動。床でお弁当を食べ、床で寝てました。

 ぎっくりにはたくさんの楽しい思い出がありますね。

 例えば、ごみ捨てに行ったとき。
 生きているとどうしてもごみが出てしまうもので、かなり覚悟を決めて捨てに行ったのですが、ちょうどごみ捨て場の前をちょっとした道路工事していましてね。

 こっちは腰が90度に曲がって、えっちらおっちら歩いています。夏場でしたから、つばの広い麦わら帽子をかぶっていました。

 世の中には親切な方がいるものですね。
 私のことを見つけた工事現場の方が、
「お持ちしますよ。」
 と言って、ごみを受け取ってくださったのです。
 そのときのこと、忘れられません。
 顔が帽子で見えない私が、顔をあげて、
「すみません。ありがとうございます。」
 と言ったとき、彼はとってもびっくりした顔をしたのです。

 腰は90度に曲がっているし、顔見えないし、そのひとは私のことを、確実におばあさんだと思っていたみたいなのです。
 当時、私は30代。声も顔も、おばあさんではありませんでした。なんにも言わなかったけれど、とってもびっくりなさったと思います。

 そんなぎっくりして楽しかった思い出はいろいろあるのですが、今回のぎっくりは、そんな悠長なことを言っていられない、ってことに気が付きました。

 来週の初めに、病院で定期検査があるんです。
 いろいろ検査しますが、そのなかでもきつそうなのが、MRIです。

 MRI検査、受けたことある方いるかな。
 私はちょっと苦手。
 寝っ転がって、身体を固定され、筒状のもののなかに入るのですが、動いてはいけないのです。しかも結構長い時間。時間はわからないけど、私は15分ほどに感じてます。
 耳栓はしますが、部屋の外までも聞こえるような、やかましい音がずっと鳴ってます。

 動いちゃいけない、って、簡単そうでしんどいです。過去に、厳しくなってちょっと動いてしまって、怒られたこともあります。
 いやいやいや。
 ぎっくりしてるひとには無理ですよ。

 そういう訳で、なんとしても今週中に治らないといけないのです。

「ぎっくりに、MRIは無理。」
 私の名言です。いやあ、やっぱりうまくないですね。啄木先生のようにはいきませんね。


っていうか、どうでもいいこと言ってないで、はよ、小説書きなさいよ。

失礼しましたあ。

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