【短編小説】微熱の冷めぬ、夏の夜(2/3)
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それから五日ほど経った深夜、マリは再び現れた。
「こんばんは。私がいなくて寂しかったでしょ」
鏡のなかの女に一瞥をくれてから、パソコン画面に向き直る。
「別に。そうでもない」
「見て見て。ネイル、ピンクにしようか水色にしようか迷ってるんだけど」
マリは私の愛想のない返事など、我関せずだ。ネイルカラーの入れ物を二つ、振って見せる。どちらもパステル系で、トーンが合っている。
「左手の薬指と右手の人差し指、小指は水色、あとはピンク」
そっけなく答える。
「