武道は駆け引きのアイディアの宝庫
こんにちは。早川琢也です。
今日はいつもの研究寄りの内容ではなく、どちらかというと自分の実践と学びに基づいた内容です。
武道の駆け引きの話は他のスポーツにも行かせるものが多いのでは?
私の剣道歴
まず、私自身の武道の経験ですが、剣道を8年ほどやっており三段を取得しました(年数的には四段を受ける事は出来ます)。
この剣道経験ですが、実は日本ではなくアメリカ留学中の8年間のものです。
詳しい経緯は別の機会にお話ししようと思いますが、簡単に言いますと
・運動する機会が欲しかった
・日本っぽい物に携わりたかった
という気持ちがある時に、偶然剣道を指導されている日本人の先生とお会いした事がきっかけでした。
日本の道場や部活動ほど頻繁に稽古をしてはいませんでしたが、
その分先生や他の州で知り合った剣道仲間の方々と剣道の教えや理屈について話し合って、理解を深める時間を多く持ちました。
そういう意味では、体で覚えたというよりは、頭で学んで剣道の技や動きを身につけていった形です。
他のスポーツと剣道の関係
一方で、元々バスケットボールやサッカーといった対人競技も好きで、仕事柄バスケットボールやサッカー関係の方と交流を持つことが多く、
その時によく1対1の駆け引きが話題になることがあります。
バスケやサッカーにおいて、1対1はその競技の醍醐味であり見応えのあるシーンの1つです。
その時の駆け引きの場面に、実は剣道での駆け引きの教えが役に立つ。
剣道の攻め合いや駆け引きを少しずつ学んだ時にそう思うようになりました。
構えた時の攻め合い
まず、剣道では多くの場合「中段の構え」と呼ばれる構えを取り、相手の構えを崩す事から始めます。
(上段の構えや二刀といった構えもありますが、今回は割愛します)
(奥が筆者。確か3級くらいの昇段試験の審査の様子です)
この時、竹刀で相手の中心を取ったり竹刀をずらしたりして、打突部位(面、小手、胴、突き)を打てるスキを作っていきます。
スキが出来たら技を仕掛けていくのですが、この時の考え方が理に適っていて、他のスポーツにも使えるように思っています。
先の先(せんのせん)
1つ目は「先の先」と呼ばれる物です。
これは、「相手が技を仕掛けた瞬間が無防備になるから、そのタイミングを目掛けて相手よりも先に技を打つ」という考え方です。
剣道界では、技の動き出しを「起こり」と呼びます。
この起こりの瞬間は、短い時間ですが無防備になるのでこのタイミングで小手技や面技を打っていきます。(このタイミングで打つ技を出鼻技と呼びます)
こちらのYouTube動画をお借りして、出鼻面と呼ばれる面技を見てもらえると少し様子が分かると思います。
見るポイントとしては、一本を取った選手が相手が動き出した瞬間に面を打っているタインミングを見て下さい。
(とはいえ、スローでもなかなか速いですが。。。)
竹刀が相手の面を捉えた時は、相手がスーッと前に出てきているタイミングだったり、相手がこれから打とうとしたタイミング(起こり)である事が分かると思います。
ちなみにこのタイミングが少しでも遅れると相手は捌いたり受け止めたりして対応することが出来ます。
ほんの少しのタイミングの違いなのですが、タイミングがバチっと合えば、不思議と捌けません。
後の先(ごのせん)
2つ目は後の先(ごのせん)と呼ばれる物です。
これは、「相手に仕掛けさせて、こちらは相手の技を捌いてこちらの技を決める」という考え方です。
いわゆる、カウンターアタックです(剣道では決してカウンターとは呼びません)。
カウンターと言うと、相手の技に反応して対応するイメージがあるかもしれませんが、実はこのような心構えだと応じた後に上手く自分の技を決められない事が多いです。
では、どのようにすればいいのかと言いますと、
相手に技を打たすように誘うのです。これは「反応して対応する」と大きな違いがあります。
「反応して対応する」のは、
1. 相手が技を打ってきた
2. それを見てから自分が捌く
3. その後に打つ
という流れなので、受け身になってしまい自分の技の初動が遅れてしまいます。
対して、「相手に技を打たすように誘う」のは、
1. 相手が技を打ってくるようにさりげなくスキを見せる
2. 相手は「空いた!」と思って打ってくる
3. でもこちらは相手が打ってくるのは折り込み済みだから、相手の技を前もって応じる事ができる
と流れが少し変わってきます。
前者は相手が主導で相手の動きにこちらが合わせていますが、後者はこちらが主導です。
前者は相手に打たれている状態で、後者は相手に打たせている状態とも言えます。
後の先は、一見すると相手の動き合わせて後手に対応しているように見えるかもしれませんが、相手の動きありきで対応しているので実は応じる側が主導権を持っているのです。
先先の先(せんせんのせん)
3つ目は先々の先(せんせんのせん)と呼ばれる物です。
これは前述の2つとは少し違ったタイミングで技を仕掛けます。
お互いに構えて攻め合っていると、相手が技を仕掛ける準備が出来ていない状態だと感じるケースもあります。
この相手が技を仕掛ける状態になっていない、準備の出来ていない状態の時に、相手が動き出すよりも先に技を決めるのが「先先の先」です。
これらの考えをスポーツの1対1の場面に落とし込む
バスケやサッカーの選手がここまでの内容を読むと、
「なんだ、こんなの当たり前じゃん」
って感じるかもしれません。実際に感覚的に「先の先」や「後の先」のような駆け引きをやっている選手は多いと思います。
実際に、バスケの1対1で相手を抜くには、「ディフェンダーが一歩前へ出てきた瞬間にディフェンダーの体の横にドリブラーの体を入れると抜ける」と教わる事が多いですが、
これはある意味でディフェンダーの「起こり」を捉えていると考えることも出来ます。
他にも、自分のシュートフェイクでディフェンダーのブロックを誘い、先にディフェンダーを動かして相手が次の動きに対処出来ない状態にさせておいて、自分はかわしてシュートを打つというプレーもバスケでよく見られます。
これはまさに「後の先」です。
さらに別の1対1の場面では、ディフェンダーが準備出来ていない状態だと分かり、すかさずドライブを仕掛けたりシュートを打ったりする場面もあります。
これは「先先の先」と言えそうです。
ある意味、勝負は既に決まっている?
「先の先」であれ「後の先」であれ「先先のせん」であれ、共通して言える大事なポイントがあります。
それは、いずれも自分が主導権を握っているということです。
「先の先」も厳密に言えば、相手に技を打つように誘い出し「待ってました!」と言わんばかりに相手の起こりを捉えます。
「後の先」も前述の通り、自分が意図して相手に技を打つように誘い出しています。
「先先の先」も、相手が準備出来るよりも前にこちらのタイミングで仕掛けていきます。
このように技の仕掛け時が分かるなら、簡単に一本を決められるように感じるかもしれませんが、
この技を仕掛ける前の主導権の取り合いを読み間違えると、実は相手が主導権を握っていた、なんてことが起こります。
私の場合、特に自分より段位が上の相手や先生を相手にしている時に
「実は攻め崩せていなかった」
「実は相手に誘われていた」
といった事が多くありました。
いわゆる、「相手の術中にハマっていた」と言うヤツですね。
ここはモロに実力と経験が影響を受けるところだと思います。
もし相手に「こいつは小手技がない」と思われたら、いくらこちらが「小手を打つぞ!」と仕掛け用としても反応したり応じてはくれません。
バスケでも、もし「こいつはこの距離からのシュートはない」と分かっていたら、いくらフェイクをしても反応したり対処してもらえません。
やはり、バスケやサッカーなど対人で1対1の攻防があるスポーツでは、相手の対峙した瞬間に自分がどれだけの技を持っていて、どれだけの実力を持っているかが、駆け引きの効率や効果に大きく影響を与えるように感じます。
(もちろん、それ以外の要素も数多くありますので、スキルの有無だけで片付く話ではないのは間違いありません)
理に適っている剣道の教え
と、ここまで割と当たり前に近いようなことを書いてきましたが、
一度アウトプットしてみたいと思い書いてみました。
剣道の歴史は古く、長い期間を経て剣道の教えは言語化され、師匠を通して弟子に伝えられ、またその弟子へと伝えられてきました。
やはり長い時間をかけて熟練者の言葉として形にされた教えということもあり、理に適っている物も多くあると感じています。
今回ご紹介した攻め時や駆け引きの話以外にも、理に適っている剣道の教えや学び方など数多くありますので、
別の機会にまたご紹介出来ればと思います。
早川
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