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【読書感想】村田沙耶香『きれいなシワの作り方 淑女の思春期病』
2020/04/14 読了。
村田沙耶香『きれいなシワの作り方 淑女の思春期病』
村田沙耶香の声が好きだ。上品で優しくて柔らかいあの口調が好きだ。
実際の村田沙耶香と村田沙耶香の作る物語は当たり前だがかなり違う。ほわほわした人となりから想像できない猟奇的な小説世界。
このエッセイはどっちの村田沙耶香なのだろう、と思って本屋で手に取った。活字の村田沙耶香が気になった。
読みながら思ったのは、どこにでもいるような女性だなということ。化粧や服装、人間関係、旅行、結婚観、子供を産むか産まないか観。30代女性のありふれた日常。
でも、ありふれた日常のことと同じ温度で大人の玩具が出てくるのが、なんかいい。
人生から消えてしまう友達について書かれた「友達が減る季節」が一番好きだ。
「人間と人間として、私たちはお互いの人生からフェイドアウトすることを選択するときがある」
静かに深く頷く。ちょっと泣きそうになる。振り返れば多くの友人がその時その時、側に居てくれた。恥の多い人生だけど、友達には恵まれたように思う。
エッセイって苦しくなったり、落ち込んで這い上がってくるのに時間が掛かったりするので好んで読まないのだけど、村田さんのエッセイは拗らせているのが前提にあるからなのか、どの考えも押し付けてこなくて読み心地がよかった。