【読書感想】辻村深月『朝が来る』
2018/12/02 読了。
辻村深月『朝が来る』
不妊治療の末、特別養子縁組で男の子の母親になった佐都子。
中学生で妊娠し、子供を手放したひかり。
2人の母の視点で描かれた長編。
号泣した。今も打ちながら目頭が熱くなっている。この小説に対して私が拙い感想を書くのは憚られるので、自分の気持ちを書きます。
私には特別養子縁組で親になった友人がいる。子供を迎えるために夫婦でたくさん勉強して、色んなところに見学にいって、夫婦でも、個人でも物凄く悩んでいた。悩みに悩み、最終的に里親になると決めた。私はそんな友人を傍でみていて、嫌な感情をもっていた。
──経済的に豊かだから、親になれる
今思うと、完全に僻みなんだが、その時はそういう心持ちだった。それで子供を迎えた友人に意地悪な質問をぶつけた。
「産んだ母親が付けた名前をよく付けたね。名前、自分でつけたくなかったの?」
すると、友人はこう答えた。
「産んでくれたお母さんが付けてくれた名前だよ。この子に与えてくれた最高のプレゼントだよ。こんなに愛おしい名前はないよ」
もの凄い衝撃だった。自分は育ての母であるというはっきりとした立ち位置。産んでくれた母親へのとてつもない感謝。育てさせてもらっているんだ、という謙虚なまでの姿勢。
友人はもう立派な母親だった。子供を迎えるという決断に至るまでの期間に、こんなにも人間として徳が高いところに到達していた。私は自分を恥ずかしいと思ったし、特別養子縁組制度の崇高さを思い知った。
私も時々、友人の子の名前を呼ぶ。
いい名前だ。
どんな気持ちでこの名前を付けたのか、私には分からない。でも、あの子の名前にたくさんの愛情が滲み出ていて、『朝が来る』のひかりのように、断腸の思いで別れたのだろうと想像する。
私は佐都子のような里親にはなりたくてもなれない。まず金がない。でも、私には私の役割がある。社会の一員として、里親制度だけじゃなくて、色々な結び付きの親子を認めていきたいと思う。
そして何より、友人親子の幸福を応援していくと心より誓う。
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