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【読書感想】桜庭一樹『無花果とムーン』
2020/07/14 読了。
桜庭一樹『無花果とムーン』
18歳の前嶋月夜は紫の瞳を持つ、もらわれっ子。
義理の父と2人の義兄と無花果町で平和に暮らしていたが、ある日、二番目の兄である前嶋奈落が死んでしまう。月夜の目の前で死んでしまった兄、奈落を月夜は幽霊として感じていくようになる、という長編。
高校生の頃、初めて経験した大切な人の死をどのように乗り越えたかもう忘れてしまった。だから、月夜の喪失感よりも月夜を支える側の人間に同調してしまい、どう月夜をこの世界に留めておけるだろうかと考えながら読んだ。
「どうしても語ることのできない重大ななにかこそが実はその人自身なのだ」
月夜が語ることのできない何か。
読み手だけはその何かを知っている。
月夜に「吐き出せ、打ち明けろ」と願う時に、奈落を近くに感じた。人生も恋もこれからって時に死んでしまうなんて奈落も不憫だなぁと思いながらも、生きている月夜にしっかりして欲しいと思った。
月夜が初めて泣けた時に、私は既に号泣していた。
おそらく中高生向けに書かれた小説だろうけど、もう何人も大切な人を見送ってきた中年だけど、涙も止めようと頑張ってみたけど、泣きに泣いた。
月夜はいい街にもらわれてきた。
それが月夜に分かってもらえて、本当によかった。