【読書感想】芦沢央『罪の余白』
2020/03/12 読了。
芦沢央『罪の余白』
学校で転落死した娘と、その父、父の仕事仲間、同級生2人、の合計5人の視点で書かれている小説。サスペンス要素もあるけど、スクールカーストやイジメも複雑に絡む。
奥さんを早くに亡くし男手ひとりで娘を育てきた父親が、娘を亡くし弱りきってる描写がとてもよかった。よかったと書くと語弊がありそうだが、生きる気力がない父親がカレーライスを前に唾液が分泌されたり、美味しいのに美味しいと思ってはいけないと考えたり、着替えてサッパリしたことに罪悪感を覚えたりするところは、人間の矛盾であって、そこを描けているのはとても信頼ができる。
女の子3人というのは難しいもので、仲良く見えても、その実は2人+1人というものである。私も小学生の頃、3人グループで交換日記をやろうと誘われてやったことがある。その交換日記には、1位2位3位と友達の名前を書いていく"親友ランキング"なるコーナーがあったのだが、私は2人のランキングから除外されており、そこで初めて「この交換日記は私を陥れるためのものだったのだ」と気付いた。巧妙で陰湿で残忍ないじめ方を女の子は見つけるのが巧い。
私は、この小説でいうところの小沢早苗のような人間なので(どういう人物であるかは割愛。読んで確かめてみるのも一興)、交換日記から1人抜けることも全く苦ではなかった。ただ、抜けることでその子たちと"友達ではなくなる"とは思っていなかったけど、私の予想に反し友達ではなくなった。
クラスにひとりでいることは気楽です。周りがどう思おうが、自分の気が楽であることこそが大切だから。
この小説を読んで、悩める登場人物たちに言いたいことはそれだけ。