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屋根裏のラジャー(2023)

2014年末にスタジオジブリが制作部門を解散したのを機に、ジブリ作品に関わっていた人々が中心になって立ち上げた「スタジオポノック」の新作となる、百瀬義行監督「屋根裏のラジャー」を観た。

一言で評するなら、惜しい映画だと思う。よく描けてるし、すごく動いてるし、アニメーションとしての質はとても高い。特にファンタジー世界の中を主人公たちがダイナミックに躍動するシーンの完成度たるや、素晴らしい。

だけど、キャラクターデザインや塗り(色味や影の付け方などの質感)が凝りに凝っていることが洋風で一般的な日本のアニメ表現とのギャップを生み、図書館のシーンで本に書かれている文字なども(物語の進行上キーとなる文字以外は)日本語ではないというのは、本作は日本ではなく海外向けに作ったのか?という印象を与える。

日本のアニメ表現が優れていると言いたいのではなく、一体、この洋風テイストな高品質のアニメーションを誰に向けて作っているのかが、正直理解できない。

本作が目指したかった"高み"はなんとなく感じとれたが、日本でアニメを見る観客に訴求するのは難しそう。劇場で何度も何度も観た予告編の作りからして、子供や子供を持つ親への訴求力は弱い。「イマジナリー」という存在についてもわかりにくいし、そもそも「イマジナリーフレンド」をもっと的確な日本語に置き換えられなかったのか?(最初から日本の客はターゲットじゃないのであれば、失礼しました!なんだけど…)

キャラクターデザインを変えて、塗りを変えて、ジブリのブランドを付ければ興行成績はまるで変わるんじゃないかなと思うくらいに良く出来ていたと思うんだけど、それじゃあ、「スタジオポノック」として取り組む意味がなく、ジブリの中でやれよって話になるもんね…

こんなことを言うのも、それなりに完成度の高い作品に仕上がっているから。だから、惜しい。でも、観たらきっと面白いよ。

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