ルートビア愛して16年
はじめに
先日、アニメ映画「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」を鑑賞する機会があったのですが、作中に私が愛してやまない清涼飲料水である「ルートビア」(A&Wルートビア)が登場していました。
今日はこの「ルートビア」に対する思いの丈を綴ってみます。
「ルートビア」とは何ぞや?
「ルートビア」(root beer)は、サルサパリラやリコリスといった薬草の根やバニラ、ナツメグといった香料、樹皮、糖蜜などをブレンドしたシロップを炭酸で割った清涼飲料水で、原料に薬草の根を用いていることからその名が付きました。
台湾をはじめとするアジア諸国で愛飲されている「沙士(サーシ)」とは、サルサパリラを原料にしている点が共通していますが、使用する原料の組み合わせや製法が違っており、成分や風味についても若干差異があります。
「ルートビア」の原型が生まれたのは、18世紀後半の建国間もないアメリカでのこと。
農場の所有者たちが家族の集いや社会的イベントのために自家醸造で作った低アルコールのハーブ飲料が起源となりました。
薬剤師らにより咳止めなどの薬効を期待して、独自の調合による改良が重ねられ、アルコール分もなくなったこのハーブ飲料ですが、19世紀末になるとこのハーブ飲料を炭酸で割り、瓶詰めした清涼飲料水が販売されるようになりました。これが、今日の「ルートビア」です。
「ルートビア」は禁酒法時代のアメリカで瞬く間に普及し、禁酒制度が一部の郡に残るのみとなってからも大衆の間に定着しました。
アメリカ以外でも、沖縄やフィリピン、タイなどアメリカの影響が強い地域、「ルートビア」を看板メニューとするアメリカのファーストフード店「A&Wレストラン」が進出している地域で多くの人から愛飲されています。
【参考サイト】 フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」
「ルートビア」との出会い
私が「ルートビア」(特にA&Wルートビア)を愛飲するようになったのは、就職翌年の2008年にさかのぼります。
この年6月、「ゆいレール」こと沖縄都市モノレールを乗りつぶすためにふらりと沖縄への一人旅に出かけた私は、宿泊先の安宿に近いマチグヮー(市場)で「A&W」と書かれた茶色の缶飲料を見つけました。
その2年前、台湾で「ルートビア」と同じくサルサパリラを用いた炭酸飲料「黒松沙士」に出会い一躍虜になってしまった私。
この茶色の缶飲料は「ルートビア」であるという予備知識があったので、「これも美味しいに違いない」と迷わず購入、宿に持ち帰って飲むことにしました。
「A&W」の「ルートビア」は「黒松沙士」とどう違うのだろうかと思って飲んでみたら、ハッカや薬草の風味こそ共通したものの、「黒松沙士」のように酸味は強くなく、バニラの甘味が効いた一品でした。
こうして、「黒松沙士」もいいけど「ルートビア」もイケると感じた私は、1缶飲んだだけで「ルートビア」中毒になってしまい、2泊3日の旅行中、マチグヮーを通るたびに「A&Wルートビア」を買い求めていました。
マチグヮーのオバアには、そのたび「また来たのね」、「好物なのね」と言われたものです。
帰宅後、早速「A&Wルートビア」をAmazonで箱買い、一夏ルートビアを飲んで過ごしたのはいい思い出でした。
その後、マイレージ修行やプロ野球キャンプ見学、家内との旅行でたびたび沖縄に行く機会に恵まれましたが、そのたびに「A&Wルートビア」を飲むのを楽しみにしています。
「A&Wルートビア」は、日本の本土でも、沖縄物産店のほか「カルディ」や「ヴィレッジヴァンガード」といったお店で扱われており、見かけるたびついつい買ってしまいます。
沖縄のソウルドリンク「エンダー(A&W)」の「ルートビア」
1919年にアメリカ・カリフォルニア州の薬局で働くロイ・アレン、フランク・アレンの2人の手により生み出された「A&Wルートビア」。
同社(注)はその後ファーストフードチェーン「A&Wレストラン」をアメリカはじめ世界各国で展開することになり、1963年には当時アメリカ統治下だった沖縄にも1号店(屋宜原店・中頭郡北中城村)を開業、以来61年にわたり沖縄を代表するファーストフード店として多くの県民はもとより、旅行者からも親しまれています。
「A&Wレストラン」ですが、沖縄県民の間では、「A&W(エー・アンド・ダブリュー)」を縮めた「エンダー」という通称で呼ばれているそうです。
(注)「A&Wルートビア」の商標権は、現在はドクターペッパー・スナップル・グループに移っています。
缶入りの「A&Wルートビア」もそれはそれで美味しいのですが、沖縄に来たからには一度はいただきたいのが「A&Wレストラン」で提供されている「ルートビア」。
車社会の沖縄県ですが、「A&Wレストラン」は那覇空港国内線ターミナルや那覇市、宮古島市、石垣市の中心市街地など、公共交通機関でアクセスしやすい場所にも出店しており、他県から来た地理に不案内の観光客でも気軽に本場の「ルートビア」を味わうことができます。
ファーストフードチェーンということで、ハンバーガーやカーリーフライ(ポテトフライ)、オニオンフライといったメニューも人気ですが、一番の看板メニューはやはり「ルートビア」。
大半の店舗(注)では、キンキンに冷えたジョッキに入った状態で供されます。
サイズはS(スモール)・R(レギュラー)・L(ラージ)の3種類がありますが、いずれのサイズについても1杯分の料金でお代わり自由なのはありがたいです。
(注)一部店舗やテイクアウトの場合は、紙製の容器で提供。
一口に「ルートビア」といっても、メーカーや店ごとにレシピは異なるわけですが、沖縄の「A&Wレストラン」では、原料の一部を公開しています。
バニラ、サルサパリラ、マシュマロウ、セイヨウタンポポ、リコリス、ジンジャー、シュガーケイン、ワイルドチェリー、このほか6種類以上の薬草を用いて原液を調製しているそうです。
丁寧に調製されたこの原液を水で薄め、シロップと炭酸、氷を加えたら、沖縄県民のソウルドリンク「A&Wルートビア」の出来上がりです。
「A&Wルートビア」は東南アジアでもおなじみ
「A&Wレストラン」はアメリカ本国のみならず世界各国に展開しており、アジアでも沖縄県のほかインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポール、パキスタン、バングラデシュに店舗があるといいます。
なかでも、インドネシアは本国アメリカに次いで世界で2番目に「A&Wレストラン」の店舗が多い国で、同社の「ルートビア」やハンバーガーはインドネシア国民にも広く親しまれています。私も過去にジャカルタを旅行した際、何度か「A&Wレストラン」のルートビアを飲んで休憩したことがあります。
(2024年10月4日追記、「A&W」は2022年3月限りでタイ国内から撤退済だそうです。)
ところで、現在日本国内で「A&Wレストラン」の店舗が存在するのは沖縄県のみですが、かつては日本の本土(首都圏、京阪神、福岡県)にも「A&Wレストラン」の店舗が進出していた時期がありました。
しかし、これらの店舗はオイルショックや同業他社との激しい競合などにより、短期間で撤退という結果になっています。
それでも2024年現在、本土から沖縄県を訪れる観光客の間で「A&Wレストラン」や「A&Wルートビア」の人気が高いことを考えると、日本本土の大都市に「A&Wレストラン」が再進出すれば喜ぶ人は多いのではと思います。
フランチャイズの問題、食材調達やコストの問題などはあると思いますが、今後何かの機会に日本本土に「A&Wレストラン」が再進出して欲しいと思うことしきりです。
【参考サイト】 フリー百科事典ウィキペディア
A&W Singapore
【参考論文】小嶌正稔「フランチャイジングの萌芽と A&W 沖縄」経営論集第64号(東洋大学経営研究所 2005年)
「ルートビア」のバリエーションいろいろ
一口に「ルートビア」といってもその定義やバリエーションは広く、缶入りの「A&Wルートビア」についても「ダイエットルートビア」、「クリームソーダ」、「ダイエットクリームソーダ」、「フロート」といった姉妹商品が販売されています。このうち、「A&Wルートビア」にクリームを追加し、甘口に仕上げた「A&Wクリームソーダ」については、日本国内の輸入食品店でも目にすることがたまにあります。
また、本場のアメリカに行きますと、土地によっては「地ビール」ならぬ「地ルートビア」、あるいは「自家製ルートビア」まで存在するといい、今後アメリカを訪れる機会があればいろいろ飲み比べてみるのが楽しみです。
アメリカではルートビア味のキャンデーなど、ルートビアの関連商品も豊富だそうで、こちらも気になるところです。
おわりに
アメリカ、沖縄、東南アジア諸国では大衆的な清涼飲料水として愛される「ルートビア」ですが、その歴史や進化の過程、バリエーションには奥深いものがあり、今後折を見ていろいろ飲み比べたうえで調べてみる機会があれば面白いかもしれません。
「ルートビア」についていろいろ調べているうちに、日本の本土にも「ルートビア」とはまた別の薬草を用いた国民的飲料があることに気付きました。こちらの国民的飲料については、とある事情で清涼飲料水にはならず別の歴史をたどって現在に至っているのですが、また日を改めて記事にすることにします。