映画「RRR」 ~最高の娯楽映画は息もつかせぬアクションの連続~
久しぶりの映画はボリウッド超大作「RRR」。
普段好きなのはラブコメ、単館系、芸術系の作品で、ハリウッド超大作はめっきり見なくなりました。これまで見たボリウッド映画は、「めぐり逢わせのお弁当」、リリーコリンズの「白雪姫」くらいです。
「めぐり逢わせのお弁当」は大人のプラトニックなラブロマンス。ボリウッド映画は底抜けに明るいと思っていたので、こんなしっとりしたのもあることを知ったのと、ヒンドゥー教の恋愛はこういうものなのかしら? と思ったことを覚えています。インドの文化が勉強になりました。
白雪姫は、ハリウッドと思い込んで見た後、なんか不思議な雰囲気の映画だなあと思い、調べたらインド人監督という事を知り、「なるほどね」と納得した次第。
今回のRRRはツイッターで大絶賛されているのを見て、予告映像を見て興味を持ちました。そしたらビンゴ!
古いけど1990年版「トータルリコール」を見たときに感じた印象に似てます。「なんかよく分からんけど、すげー!」っていう。
めちゃくちゃ面白かったです。普段見ている好みの映画とは別物ですが、娯楽としては最高でした。
例えるなら、週末のお出かけスポットで、普段は美術館しか行かないのに、今回はUSJに行ってみた感じ。めったに行かないけど、行ったら楽しめるし、娯楽スポットでもトップを競う。
わたしが感じた映画の魅力を大まかに書くと、
①息もつかせぬアクションの連続
②製作費97億の豪華絢爛さ
③インド文化と人々の魅力
④シンプルなストーリー展開
てとこでしょうか。順番に説明します。ここからネタバレありの感想。
①息もつかせぬアクションの連続
②③④がなくてもこれだけで十分行く価値アリ。
まずはこちらの動画をご覧ください。
RRRを知ったきっかけはこの動画。これでビビっと来た人は、楽しめるでしょう。
冒頭、川での爆発事故に巻き込まれた少年のレスキューシーンであり、主役2人の初めての出会い。
1人が橋の上からジェスチャーと表情だけで「コレをああして、こうするぞ。OK?」と伝え、1人が理解してこの作戦を決行します。
「ジェスチャーで全部伝わるわけないやろ!」とか、「これでバンジーしたら、お腹ちぎれるほど苦しいでしょ!」とかツッコみたくなるけど、そんなことが吹っ飛ぶくらい、スピード感と迫力が圧倒的。
「ふぁいとー! いっぱーつ!」の世界最高峰。まちがいない。
これがノンストップで3時間続きます。
ラブコメとか単館系が好きとかいいながら、正直「長いな」って思うことが多いんですが、本作では全く感じず。
CGがチープという人もいるけれど、わたしは単純だからか、それほど気にならなかったです。最新技術を駆使したハリウッド映画を愛する人だとアラが見えちゃうのかもしれませんね。
また、暴力・グロ表現が苦手なのに、もうバッタバッタ人が殺されます。冒頭の殴り合いからすさまじかった。でも、「”バキっ”、”グサッ”で終了」のような、変な言い方ですがアッサリ描写なので、その瞬間は目を反らすこともありつつ、ギリ耐えられました。
1回目のクライマックス、イギリス人たちの屋敷での戦闘シーンは、まさかの猛獣たちを解き放ちます。あれは怖いというより、あまりの驚きで思わず「うわ」って声が出てしまい、となりの人に聞こえてませんようにと祈りました。ごめんなさい。
普通の映画ならここでクライマックスでしょ、という場面がこれでもかというほど出てくる出てくる。「え、まだ続くの?」って思うけど、「これを超えるのがまだあるの?」とワクワクさせてくれる。いい意味で裏切りの連続。
②製作費97億の世界
これは①の補足。
アクションがすごいということは、つまりセットとかCGに相当なお金かかってるよね、ということは想像できますが、それ以外でいうと”エキストラの数”ですよ。
しょっぱなの乱闘シーンの人もすごい。CGもあるかもしれないけど、リアルな人もけっこう使っているはず。エキストラ総勢6,000人て! すごいですよね。
迫力って、こういうところで感じたりするものです。CG技術も進化しているとはいえ、まだリアルの方が勝っているのでは? リアルな人間しか出ない何かがある、とわたしは思っているのですが、どうでしょう。
これで思い出したのは映画「クレオパトラ」(叶姉妹が好きらしい)。
見たことないんですけど、CGナシでエキストラがものすごい数だった話と、そのシーンは知ってます。調べてみたら22万人! レベルが違いすぎました。
③インド文化と人々の魅力
神話がモチーフ
本作を見て、本当にわたしってインド文化のこと何も知らないなあとつくづく思いました。
インドにこんな深い森があるの? 少数民族とかいるの? (現代もいるか別としても)など、よく考えたら想像できそうなことも、考えすらしたことがなかった。
鑑賞後にRRRファンの解説動画を見たところ、これはインドの神話をモチーフにしているそうです。詳細を聞いたところで、シヴァ神の名前をかろうじて知っているくらいなのですが、猛々しい神々がモデルだそうで、日本でいうヤマトタケルを想像しました。
本当のクライマックスでの主人公1人の変貌ぶりはまさに火の神。警官の時のスマートな雰囲気と見た目が別人レベルで、神が降臨したようでした。こっちの方が似合いますね。
弓をバシバシ放って、急に野性的になります。「銃が専門じゃなかったの?」と思ったりしますが、的を射るという意味でいうと共通する才能なのかな。
ナートゥにハマる
「ボリウッドって絶対躍るんでしょ」っていう穿った知識は元々ありました(「巡り合いのお弁当」はなかった)。別に否定するつもりはないですが、もう1本見た「白雪姫」のエンディングで踊っていて、映画と踊りは関係ないんじゃない? と冷めてしまったのでね。
しかし。このRRRでも結構長いダンスシーンがあったのですが、違和感がないどころか、映画の中でも象徴的なシーンでした。ちゃんと物語の中で意味があったからですね。
「ナートゥはご存じか?」のセリフで、わたしはダンスのジャンルなのか歌の題名なのか分からず。「きっとボリウッドダンス=ナートゥなんだろう」と思ってたら、違ってました。映画用に作られた曲名だそうです。
ちなみに先ほどのセリフは話題になっているみたいで、翻訳者のインタビューもありました。
また、インド映画でボリウッドダンスを踊る理由について書いているサイトもありました。
インド映画とダンスは切っても切れない関係なんですね。
ダンスに言語、これだけでも興味深い。
インド人かっこいい
主役の2人は超濃厚なソース顔に、ガッチガチの筋肉質。
おそらく、日本人の平均的な”イケメン”の基準とは違います。わたしは細マッチョの塩顔が好きなので、最初は「これがインドのイケメンてやつか」くらいに思っていたのですが、見てるうちにめっちゃくちゃカッコよく見えてきます。単純なので、たぶんインドに移住したら簡単に好みが変わるでしょうね。
使命にまっすぐで正義感にあふれるキャラクターだからというのが大きいですが、戦いになった時の無双ぶりがすさまじくて。
トラは背負い投げするし、鉄格子の牢屋壊すし、超人すぎる。インド人ってこんな屈強な人種なのか、と錯覚しそうになりました。
ハリウッド映画だとどんなアクション見てもフィクションとして捉えられるのに、インドが未知の文化すぎて、「これもリアル?」とすぐ信じ込む傾向があるかもしれません。あの民族がすむ深い森も、トラも、捕まえ方も、どこまで本当なんだか。あの捕まえ方はさすがにフィクションなんですかね。
ナートゥも始まったときは「きたよきたよ」って思ったけど、すぐに野性的なダンスにくぎ付け。
優雅なワルツなんぞに負けてたまるかよ。きどってんじゃねえ、男だったら根性見せやがれ! 国が違っても人類に刻まれたDNAが黙っちゃいないんだぜ!
と、彼らの立場になって燃えました。
かっこええ。
インドの芸能人はナートゥ踊れるのが常識なんでしょうね。あんな重そうな身体でキレッキレって普通にすごい。贅肉じゃなくて全部筋肉かとな。
最近、テレビの歌番組とかで激しいダンスを見る機会が増えて、カッコイイなと思ってたけど、あのナートゥを前にしたらヤワかもしれない。ダンステクニック云々なんて、しゃらくせえ! と思わせるほどの熱量がある。
④シンプルなストーリー展開
水戸黄門に遠山の金さん、暴れん坊将軍よろしく、japanese時代劇のような分かりやすさです。
イギリスの植民地支配については、歴史の教科書やいつかどこかの映画の一部描写で想像する程度だったんですが、そういえば、インド人側に立ったものは初めて見たのかもしれません。
分かりやすい善と悪が描かれていて、特に引っかかることもなく、アクションとストーリーに集中できます。
ただし、これが必ずしもいいとは思わないタイプで、その理由は後ほど。
気になった点
感情描写が単調
びっくりするシーン、決意するシーンなど、感情が動くシーンの撮り方がぜんぶ一緒じゃなかった?
顔面に寄ってドアップになったら目力ドーン!
目力あるから説得力あるんですが、さっきも見たような気がする、って多かった気がします。気のせいかな。
目には目を、歯には歯を。完全なる勧善懲悪
前情報として、ちょっとあらすじ書きます。
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警察官の職務を全うするため、親友を裏切る主人公。その行動原理は、村を守るためにイギリス人兵を巻き添えに自爆した父に託された願いを果たすため。武器を持っていなければ、横暴な兵士に立ち向かう術もない。だから自分の村人全員に十分いきわたるだけの鉄砲を手に入れることこそが彼の使命なのです。
使命に忠実にまい進してきた彼は、もう一人の主役である親友の登場によって少し心境に変化が訪れます。
無鉄砲な襲撃によって捕まった親友が、ひどい拷問を受け、それでも膝をつかなかった。彼の"ただただ耐え抜く"という姿勢が、見ていた民衆の心をつかみます。見物するしかなかった民衆が、怒りと悲しみを爆発させて反撃したのです。
武器を持たなくても、人の心は動かせることを警察官の彼は知ったのでした──。
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ここで、「武器がなくても人の心は動かせる」と思った主役。最後は武器なしで勝つ方法を見出すのだろうと期待していたんですが、普通に鉄砲を入手して帰還。やったぞー! って終わるんです。敵の悪は徹底的に破壊しつくして、死に追いやる。そうか、やっぱりそうなるか……と残念でした。
令和の時代はもうちょっと違う形と思ったんだけどな。インドは令和関係ないけど。憎しみを憎しみで応酬するの世界では、戦いを終わらせることはできないのでは。
こういうことを娯楽映画で言うのはヤボなのか? でも大事だと思うんだよな、みたいな。
イギリス側にもジェニーさんがいたから、”完全”超悪ではないのか。でも、ジェニーさんもゆうたら敵でしょ? ジェニーさんは主役が恋したから許されてるだけで、猛獣を放した時にジェニーさんみたいな良い人で、巻き添え食らった人、いるよね。
その後、ジェニーさんも主役に協力。しかも味方のイギリス側に対してけっこう重大な裏切りをしてくれる。いくら善人キャラとはいえ、主役と深い仲にでもならないと、あれはないでしょう。描写されないだけで、あった設定なのかな。
それでも面白い
ちょっと不満もありながら、それでも面白いです。YouTubeで「7回見た」っていってる女の子がいて、それは見すぎやろ! って一瞬思ったけど、考えなおしました。製作費97億だもんね、そんじょそこらのハンパな娯楽よりよっぽどいい。同監督の映画、バーバリ? というのも少し気になりました。
うちの近所で唯一生き残っているレンタルショップにボリウッドコーナーができていたので、今熱いのかなと思いました。次も楽しみ。
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