
この画像に何がいるでしょうか
まえおき
いつもの自己紹介。
何度か私の記事を読んでくださっている方は読み飛ばしてください。
でも、ちょっとだけ変えているのでよかったら読んでください。
私は、小学校の理科を専門にしている教師です。
小学校の理科の教師はなかなか少なくて、一部では「絶滅危惧種」などとも囁かれています。
でも、私は、理科が大好きです。
子どもも理科が大好きです。
どうして理科を子どもは好きなのでしょうか。
先日、こんな話を職員としました。
「私のクラスの子たち私の授業だといつもぼーっとしているんですけど、先生の授業が始まるとなると突然元気になって理科室に向かっていくんですよね。私、自信なくしちゃいます」
「だったら、今度私が算数かなんか教えるから、理科の授業してみたら?」
「え、それはちょっと」
私は子どもがいつも「もっと調べたい」「もっとやってみたい」と言う表情を見せてくれるので理科という授業が好きです。
それに理科ができるようになると他の教科の力も高まると信じています。
画像にいるもの分かりました?

こういう画像が苦手な方もいるかと思いますが、少しの間ご容赦ください。
これはナミアゲハの幼虫です。
アゲハチョウというと成虫はこんな生き物ですね。

このアゲハチョウを教材に小学校3年生の理科では「昆虫」やそのライフサイクルについて教えます。
昆虫は面白い生態をしていて、アゲハチョウのような完全変態をする生き物や不完全変態をする生き物がいますが、大きくその姿を変化させることは共通しています。
どうやって教えるか
偉そうに「どうやって教えるか」などと書きましたが、私はいつも「教えてはいない」です。
アゲハチョウは、ほとんどが林の中のサンショウの木の葉にいます。
サンショウや柑橘類の葉が幼虫の主食だからです。
それで、この授業が始まる前に林に入ってアゲハの幼虫を探します。
首尾よく見つけるとその幼虫がいる枝ごと頂戴して教室の一隅にもうけたサンショウを植えたプランターにその枝を置いておきます。
しばらくするとプランターで生きている幼虫を子どもが自然に観察するようになります。
はじめは、
「え、きもーい」
「やだぁ」
などと言っている子どもたちもそのうちに
「ナミちゃん」
とか
「いもちゃん」
などと言って可愛がります。
あるときに、誰かが手に乗せたり触り出すともう止まりません。
毎日、時には休み時間のたびに子どもたちは観察を続けます。あるとき、幼虫が体をくの字に曲げて動かなくなります。
「せんせー、幼虫死んじゃったかな?」
などと心配げに子どもは聞いてきます。

この姿はナミアゲハの前蛹(ぜんよう)と言ってさなぎに本格的に脱皮する準備をする姿です。
子どもたちには、
「どうなんだろう、みんなは死んじゃったと思うの?」
と聞くと、
「分からないけど、死んでほしくない」
「昨日まで元気だったからきっと生きているよ」
と思い思いに話します。
実は、この前蛹は教科書では書かれていません。
子どもはこの時はじめて「教科書には書かれていない真実」と向き合います。
翌日くらいには、さらに脱皮をして、

「えぇー、また変わってる!!」
子どもは毎日変わる姿に驚きますが、ここで教科書に出てくる姿だったことに気づいた子どもは、
「よかったー、生きていたんだ」
とほっと胸をなで下ろす様子が見られます。
さらに数日たつと、蛹の色に変化が出てきます。

子どもは、
「せんせー、ナミちゃんの色がやばい」
などと騒ぎ出します。
羽化寸前になると、明らかに色が変わって成虫の羽の色が濃く出てきます。
「もしかしたら、いよいよ成虫になるのかもしれない」
子どものわくわくはもう止まりません。
ある手を講じると、実はこの羽化をする様子を子どもに直接見せてあげることができます。
程なく羽化したナミアゲハ。
はじめは羽が乾いてもしばらく動きません。
「とっても疲れたから休んでいるんじゃない」
「大丈夫かな?飛べるかな?」
子どもは思い思いに話します。
そして、ふわっと飛び立つとき、
「窓開けよう!!」
「外へ出られるようにして!!」
飛び立つ姿に大きく手を振る子どもたち。
こうした子どもの姿を見て、私は「理科教師でよかったな」といつも思います。
子どもは学ぶ力をもっている
このように子どもは実は教えられるより、自ら学ぶ力をもっているということを教わります。
子どもが学ぶための環境を作り、どのように何を問うかで子どもはどんどん学んでいきます。
そんな発見の喜びを見つけられるのが理科教師の「やっててよかった」ところですね。