翻訳資料 戦術学を学ぶなら知っておきたい「戦術の基本概念」
米陸軍省『野戦教範3-90 戦術』(2001年)の2章8節「戦術の基本概念(Basic Tactical Concepts)」を翻訳しました。
この教範の第2章では、基本的に戦いの原則やMETT-TCといった戦術の基本基礎を系統的に解説しているのですが、この節に関しては戦術の重要用語を集め、その意味を一つずつ解説する用語解説の形式を採用しています。
ただ、定義だけを並べているわけではなく、部隊の運用でどのように適用されるのかが理解できるように工夫されています。どのような用語が取り上げられているのかに関しては目次で確認できます。
各項において訳語や訳文の意味について必要と判断すれば注釈をつけていますので、そちらもご参考になさってください。底本はU.S. Department of the Army. 2001. Field Manual 3-90: Tactics. Washington, D.C.です。
ちなみに、この教範は2012年、2019年に改訂されています。より内容が充実しているので、こちらの記事で需要があることが分かれば、そちらの資料もいずれ翻訳したいと思います。
「戦術の基本概念」
武内和人 訳
以下の文章では、攻勢作戦と防勢作戦のいずれにも共通して用いられる基本的な戦術の概念が示されている。これらの概念はアルファベット順に記されているので、その順序が重要性を反映しているわけではない。これらの概念は、与えられた任務を完遂する上で作戦指導を可視化するため、戦いの原則※1、陸上作戦の要諦※2、METT-TC※3の考慮事項、状況判断、他の指揮官からもたらされた情報、指揮官の経験や判断と共に活用できる。
※1 戦いの原則とは、目標、集中、協同など、軍隊が任務を完遂する上で常に考慮に入れるべき作戦行動の原則である。時代や地域によって変化があるものの、米陸軍では目標(objective)、攻勢(offensive)、集中(mass)、経済(economy of force)、機動(maneuver)、統一(unity of command)、警戒(security)、奇襲(surprise)、簡明(simplicity)という9個の原則で構成されている。
※2 陸上作戦の要諦(tenets of army operations)は主動(initiative)、軽快(agility)、縦深(depth)、協同(synchronization)、柔軟(versatility)の5項目から構成された作戦の原則であり、戦いの原則を基礎に置きながら導き出されたものである。
※3 METT-TCは状況判断において考慮すべき事項を6項目にまとめたものであり、具体的には任務(mission)、敵(enecy)、地形・気象(terrain and weather)、味方の部隊と支援(troops and support available)、時間(time available)、民事(civil considerations)で構成されている。
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