見出し画像

エンタープライズSaaSレポートに見る日本におけるDXの現在地

年初に「エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート(通称:エンタープライズSaaSレポート / 全40ページ)」を公開し、ありがたいことにSaaSやDXに関わる方々に加えて、大変多くの大企業の方々にお読みいただいています。(編者の一人として、この場を借りて感謝申し上げます)

本レポートは、日本におけるDXの更なる加速の一助になるよう、以下の問題意識から公開しており、今後も毎年公開していく予定です。

・DXにおいてSaaSの導入/利活用が非常に重要な一方で「大企業ではSaaSがまだ導入されていない」という認識を持っている企業が多い
・どのSaaSが大企業で実績があるのかがまとまっておらず、SaaSが急増する中で導入する上での比較検討が難しくなっている

DXにおいてSaaSの導入/利活用が重要な意味を持つことは以下の記事でもお話させていただきましたので、こちらも合わせてご覧ください。

本記事では、エンタープライズSaaSレポートについて、詳細に解説しつつ、経済産業省が公開しているDXレポート/DX銘柄とも対比し、我が国DXの現在地について最後にまとめたいと思います。

調査概要:売上高1000億円以上の企業 x 500以上のSaaSの導入実績が対象

本調査では、当社が提供するクラウドRPA「BizteX cobit」も活用し、年間売上高1000億円以上の企業を「エンタープライズ」と定義し、国内にてサービスを展開する約500のSaaSの導入実態を調査しています。

画像1

各社の導入事例、導入実績ロゴ、プレスリリースなどを可能な限り調査しましたが、あくまで公開情報のみが対象のため、情報公開がされていない、もしくは明らかに部分的な情報公開にとどまる一部主要なSaaS(マイクロソフト社製品 等)は対象とすることができなかった部分はご容赦いただければと思います。

結果概要:「エンタープライズでのSaaS導入率は36%」「エンタープライズに導入実績のあるSaaSは62%」

エンタープライズでのSaaS導入率は36%ですが、一部主要なSaaSを対象としていない点を踏まえると更に導入率は高くなります。

また、62%のSaaSベンダーがエンタープライズでの導入実績を有する状況にあり、各社にてエンタープライズへの展開が進んでいることを表しています。

画像2

導入状況の詳細について、企業別ではサイバーエージェント社やソフトバンク社のようにIT業界の企業が上位ですが、業界別では製造業がトップで、企業別のトップ30の8社が製造業という結果になりました。大企業における製造業の社数が多いという我が国の特徴を表しているとも言えるかと思います。(※ 本レポートでは企業別/サービス別/カテゴリ別はTOP30を掲載しております)

また、カテゴリ別では、BI(ビジネスインテリジェンス)や組織診断 / エンゲージメントが上位であり、サービス別では、ウィングアーク1st社のDr.SumとSAP Concur社のConcur Expenseが上位となっています。BIのような企業内データの可視化ツールに加えて、組織診断 / エンゲージメントが上位になっている点は、昨今の働き方改革等で注目が高まっている影響もあるかと思います。

スライド8

カテゴリ別:全50カテゴリでSaaS導入社数をランクアップ

各SaaSを全50カテゴリに分類し、各カテゴリにて①導入社数、②サービス数、③1サービスあたりの平均導入社数を調査、分析しています。

画像4

例えば、カテゴリ別1位のBI(ビジネスインテリジェンス)では、カテゴリ全体の導入社数は110件で全体1位ですが、SaaS自体のサービス数は9社で全体11位です。サービス数が多そうなBIですが、エンタープライズでの実績を有するサービスは相対的に限られるという状況にあります。

スライド14

業界別:全18業界でSaaS導入数をランクアップ

エンタープライズ各社を全18業界に分類し、各業界にて①導入件数、②導入社数、③平均導入サービス数を調査、分析しています。

画像6

業界別1位の製造業では、業界全体の導入件数は646件、導入社数は244社で全体1位ですが、平均導入サービス数は2.6社で7位と幅広く導入が加速しています。また導入サービスのカテゴリもBI、採用管理、経費精算等が35件を超えており、特定カテゴリでの成功事例(ユースケースの明確化)が導入数増加に貢献しているのではないかと推察されます。

スライド25

エンタープライズSaaSレポート x DXレポート/DX銘柄 = ?

エンタープライズSaaSレポートと経済産業省が公開しているDXレポート/DX銘柄に登場する企業を俯瞰した時、DXへの取り組み方のパターンとして以下の3パターンが浮かび上がります。

1. 独自システムを磨きDXを推進するパターン
2. SaaSを活用しDXを推進するパターン
3. 両方を使い分けDXを推進するパターン

どのパターンが良い悪いではなく、いずれもメリットデメリットがあり、事業の特性に合わせてパターンを使い分ける必要があるということ、そしていずれのパターンにも取り組んでいない企業はDXに遅れをとっているということかと思います。

昨年末に公開されたDXレポート2(中間取りまとめ)でも、「トップランナー」「セカンドランナー」「フォロワー」という分類で取り組み状況の格差に触れられており、この状況はコロナ下に突入した2020年以降では更に加速しているかと思われます。

総括:エンタープライズSaaSは導入期から活用期へ

ITシステムのフェーズを以下の3つに分けると、エンタープライズSaaSは導入期から活用期に移行しつつあると思われます。

① 導入期:一部で導入し利用開始した時期
② 活用期:一部で成功事例/失敗事例が見えてきた時期
③ 定着期:事例を踏まえ活用が当たり前になった時期

多くの企業にとって、強制的にSaaSを活用せざるを得なくなった2020年は、急速に「DXの実験」が行われた期間だったと言えます。導入期から活用期に差し掛かったエンタープライズSaaSは2021年は各社の成功事例/失敗事例が更に蓄積され、定着期に移行できるか否かは各SaaSベンダーのプロダクトとカスタマーサクセスの進化が求められると思います。次回の2021年度版では、こうした仮説に対して、実態がどう推移したかを分析できればと思います。

最後に:SaaSを組み合わせた業務自動化支援

BizteXでは、クラウドRPA「BizteX cobit」とiPaaS「BizteX Connect」も適宜活用しつつ、あらゆるSaaSを活用した業務自動化の支援を行っています。

今回のエンタープライズSaaSレポートでも公開した当社独自のSaaSデータベースを元にご相談に乗れればと思います。既に本レポートの公開より多くの引き合いを頂いておりますので、お気軽にお問い合わせください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?