【特選映画】Amazon Prime、 Netflix で楽しむイタリア映画①
日本では例年ゴールデンウィークにイタリア映画祭が開催されています。
イタリアの有名監督と言えば、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ロベルト・ロッセリーニ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ミケランジェロ・アントニオーニ、セルジオ・レオーネ、そしてジュゼッペ・トルナトーレ、ナンニ・モレッティ、マッテオ・ガローネ、ルカ・グァダニーノなど、挙げたら切りがありません。
しかも、凄いのは、2000年以降もイタリアから次々と世界的な新鋭監督が輩出されている点です。
そんなイタリア映画ですが、主要な動画配信サイトでも、古典的作品だけではなく、最近の作品も気軽に楽しむことができます。
そこで、特にAmazon primeとNetflixで視聴できる2010年代以降のイタリア映画を、監督別に、いくつか挙げてみたいと思います。
【過去の関連記事】
パオロ・ソレンティーノ『The Hand of God』(2021)
(Netflix)
『The Hand of God』(2021)は、こちらも現在、Amazonのプライム会員特典で視聴できる『グレート・ビューティー/追憶のローマ』や『グランド・フィナーレ』などで有名なパオロ・ソレンティーノ監督の半自伝的な作品です。
パオロ・ソレンティーノ監督作品と言えば、ルキノ・ヴィスコンティやフェデリコ・フェリーニを連想させるような、荘厳な舞台で個人的な葛藤を表現する作品が多く見られますが、本作でも、周りの喧騒に反比例するかのように、主人公の孤独を見事に際立たせています。
特に、本作は、パオロ・ソレンティーノ監督のプライベートな出来事をもとに描かれた作品であるため、今までの作品以上も心に響くものがあり、しかもパオロ・ソレンティーノ監督の原点を感じさせる作品になっています。個人的にも、2021年に観た映画の中でベスト映画の一本だと感じました。
この作品は、ヴェネツィア国際映画祭で、審査員賞とフィリッポ・スコッティが、新人俳優賞を獲得しています。ちなみに、ソレンティーノ監督常連のトニ・セルヴィッロは、今回は、主人公の父親役で出演しています。
パオロ・ソレンティーノ監督作品の中で個人的に一番好きな作品が、ショーン・ペン主演の『きっとここが帰る場所』なのですが、本作と共通のメッセージがあるように感じています。
それは、どんな理由があっても、それぞれの帰る場所(尊厳)を、失って(奪って)はならないというものです。
昨今のニュースを見て、そのことの本当の大切さが改めて分かった気がして、『The Hand of God』とともに、改めて見直す機会がありました。
アリーチェ・ロルヴァケル『夏をゆく人々』(2014)
(Amazonプライム会員特典)
こちらは、『幸福なラザロ』のアリーチェ・ロルヴァケル監督の、こちらも半自伝的作品です。
アリーチェ・ロルヴァケル監督は、本作でも、主人公の母親役で出演している、現代イタリアを代表する女優アルバ・ロルヴァケルの妹です。
ネオリアリズモの代表的なロベルト・ロッセリーニ監督を連想させる、新進気鋭のイタリア女性監督です。
本作の前半は、天然養蜂業を営む一家が直面する問題を、ネオレアリズモ的に、後半は、現代社会で消えゆく人々の営みを、寓話的にノスタルジックに描いています。 個人的に最も次回作を期待している監督の一人です。
【過去の関連記事】
サヴェリオ・コスタンツォ『ハングリー・ハーツ』(2014)
(Amazonプライム会員特典)
前述のイタリアを代表する実力派女優アルバ・ロルヴァケルとアダム・ドライバーが、ヴェネツィア国際映画祭で、主演女優賞と主演男優賞の獲得した、産後鬱をテーマとした社会派サスペンス映画です。
ラストに全く救いがなく、スリラー映画と捉えられてしまいそうな作品ですが、アダム・ドライバーの『マリッジ・ストーリー』で見せたようなシリアスで自然な演技と、何と言っても、アルバ・ロルヴァケルの真に迫る渾身の演技に引き込まれてしまう作品です。
パオロ・ジェノベーゼ『おとなの事情』(2016)
(Amazonプライム会員特典)
もう一つ、アルバ・ロルヴァケルが出演している作品で、ダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞、脚本賞を受賞した、2010年代のイタリア映画の代表作と言える作品が、この『おとなの事情』です。
この作品は、日本を含めた世界各地で、リメイクされていて、現在、フランス版の『ザ・ゲーム』と韓国版の『完璧な他人』がAmazonプライム会員特典で視聴することができます。
内容は、幼馴染みの三組の夫婦と一人の男性が参加した食事会でスマホを完全にオープンするゲームをしたらどうなるかというシチュエーションコメディです。
最初の30分ぐらいは、イタリア映画によくある少し退屈な戯言が続きますが、途中から一気に畳みかけるようにして事態が悪化していきます。この怒涛の展開を産むための細かい設定がいくつかあるため、あらかじめある程度調べてから視聴すると良いと思います。
また、この映画が粋な点は、ラストの演出です。それがあるのとないのでは、だいぶ変わっていたのではないかと思います。
出演している俳優たちも、イタリアでは有名な人たちばかりで、ジュゼッペ・バッティストンやヴァレリオ・マスタンドレアは、ダビッド・ディ・ドナテッロ賞の常連です。
シドニー・シビリア『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』(2014)
(Amazonプライム会員特典)
『おとなの事情』で、一番クズなタクシードライバーを演じていた、エトアルド・レオ主演の人気コメディ映画三部作の第一作目の作品です。
エトアルド・レオは、監督としても活躍するイタリアを代表する人気俳優で、『おとなの事情』と比較するだけでも分かりますが、作品ごとに全く違う印象を与えるカメレオンのような存在です。このシリーズ作品では、コメディアンに徹していて、手の動きが効果的に使われていると思います。
内容的には、職を失っている不遇な学者たちが、一致団結して犯罪に手を染めていく話です。
こちらも、最初の30分は、真面目で融通が利かない学者たちを強調するため退屈な場面が続きますが、途中から、学者たちの別人のようなテンションと怒涛のテンポで、一直線に話が進みます。
このシリーズは、三部作の構成になっていて、続編2作も、Amazonプライム会員特典で視聴できます。
パオロ・ヴィルズィ『人間の値打ち』(2013)
(Netflix)
『人間の値打ち』は、『ロング,ロングバケーション』(2017)のパオロ・ヴィルズィ監督作で、ある轢き逃げ事件の真相を、3人の視点から明らかに方法で、あるセレブ一家をめぐる人間模様を描いた作品です。ダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞をはじめ7部門を制覇しています。
スウェーデンのリューベン・オストルンド監督のような現代社会に対する鋭い風刺が効いていて、人間の本当の価値や人間の本当の幸せについて考えさせる作品になっています。
こちらも、一人目の視点からは、全く感情移入が出来ませんが、二人目の視点からは加速度的に、作品の内容に引き込まれていきます。
この映画で、二人目の視点であるセレブ妻を演じているのが、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキです。
妹は、元スーパーモデルでサルコジ元大統領夫人のカーラ・ブルーニです。
このパオロ・ヴィルズィ監督と再度タッグを組んだ作品が『歓びのトスカーナ』(2016)で、こちらの作品では、一転して、癖のある役を演じています。こちらも、Amazonプライム会員特典で視聴でき、おすすめの作品です。
その他の監督作品
この他にも、イタリアの新進気鋭監督の一人であるジョナス・カルピニャーノ監督の『チャンブラにて』(Amazonプライム会員特典)は、イタリアの格差問題、部落問題を描いた社会派ドラマです。
また、イタリア人監督の代表として挙げなくてはいけないルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』(ティモシー・シャラメ主演)も、Amazonプライム会員特典で視聴できます。