「俺は海賊王になる」と言ってると本当に叶ってしまう『エフィカシー』の力とは?~認知科学コーチング Vol.3~
こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
こちらのnoteでは、認知科学に基づいたコーチングについて、知っておくべき用語の解説、コーチングの実践方法、コーチングの事例を解説しています。
堀内は何者か、なぜコーチングを始めたのかは以下のnoteをご確認ください。
数回にわたり、認知科学コーチングを実践するコーチ、コーチングセッションを受けるクライアント両者が知っておくべき用語について解説しています。
1回目は、「あなたを無意識に支配している『ビリーフシステム』とは?」ということについて書いています。
2回目は、「あなたの人生が大きく変わる『ゴール設定』の3つのポイント」について書いています。
すべてつながっているので、ぜひ前回のnoteをざっと読んでから、今回のnoteを読んでみてください。認知科学コーチングの考え方や用語の整理ができると思います。
今回は「あなたの夢が勝手に叶ってしまう『エフィカシー』の力」について解説します。
エフィカシーとは?
エフィカシーは、現状の外側においたゴール、すなわち、やったことがないこと、想像すらできないこと、今の自分では明らかに難しいことに対して、自分はできる!絶対に達成できる!やるぞー!と心から思える気持ちのことです。日本語は自己効力感と表現され、あなたのゴールを達成するために最も必要なものです。
現代における社会的認知理論の土台を築いたカナダの心理学者アルバート・バンデューラの著書である『激動社会の中の自己効力』で、初めてエフィカシーが提唱されました。どんな状況下においても「自分なら達成することができる」「自分なら役に立てる」という意識がある人のことを『エフィカシーが高い人』と言います。
前回お伝えしたゴールの定義のひとつに『現状の外側であること』というものがありましたね。『現状の外側』とは以下のような条件が当てはまることでした。
このように、周りの人が「絶対にできない!」と止めて来るにも関わらず、「絶対にできる!」と思えるのはエフィカシーが高い状態であるからであり、逆に言うと、エフィカシーが高くない状態だと周りに止められることで不安になって止めてしまうでしょう。
挑戦的な目標を立てる際に、金、運、人などのリソースがあればできるという人がいます。逆にそれがないとできないと思っているのはエフィカシーが低い状態です。エフィカシーはリソースが全くゼロの状態でもできると信じるマインドです。
少年漫画のキャラクターを思い浮かべるとわかりやすいと思います。
読んだことがある人ならわかると思いますが、どのキャラクターも自分のゴール設定に対して微塵も不安な状態を示したことがありません。周りの人がいくら反対しようが、です。
このように、現状の外側にゴールを設定し、そのゴールに向かう自分の行動や能力に絶対的な自信を持っているマインドがエフィカシーです。
エフィカシー(自己効力感)と自己肯定感の違いとは?
エフィカシーは日本語訳として「自己効力感」と訳すため、「自己肯定感」と似たような概念だと混同されがちです。2つの言葉には違いがあるので、定義をしっかりと把握しておきましょう。
自己肯定感とは、自分のあり方を積極的に評価できる感情を指します。また、自分の存在意義や価値を自ら肯定できる気持ちなどを表しています。
一方で、エフィカシーはどんな状況でも適切な行動がとれるという認知を表す言葉です。求められた行動を遂行する能力を持ち合わせているという自信を表す意味として使われます。
自分に対する肯定や自信を表現する言葉としては共通していますが、どの時点での自分を評価しているかで考え方が異なります。自己肯定感はあくまで過去や現在の自分を対象としているのに対して、エフィカシーは未来の自分に対する考え方です。
したがって、これから自分が取り組むことに対して自信があるか、能力が備わっているかを認識することがエフィカシーといえます。
エフィカシー(自己効力感)と自尊心の違いとは?
次に混同されがちなのが「自尊心(=Self-esteem)」です。両者の大きく違うところは、自分の「どの部分」を肯定的に捉えることができているか、という部分です。
自尊心は、「自分自身・自分という存在」に対して肯定的な考えをもっていることを意味します。一方で自己効力感は、「自分が持っている目標を達成する力」に対して肯定的な考えをもっていることを意味しています。
例えば、自尊心だけが高い状態では、算数の問題を間違えてしまった時に「この問題に取り組むと自信がなくなってしまうからやめよう」と思ってしまう子どもも、自己効力感が高ければ、「自分ならできるはずだからもう一度やってみよう!」と思うことができます。
コレクティブ・エフィカシーとは?
ちなみに、このエフィカシーが高い人で集まっているチームで、メンバー全員が「俺たちはやれるぞー!」と思っている状態を「コレクティブエフィカシー」と言います。このようなチームは非常に強く、高い目標をどんどん達成していきます。ジャイアントキリング(=強敵を倒す)をやってのけるのはコレクティブエフィカシーが高いチームです。
このような場の力を醸成してコレクティブエフィカシーが高いチームを作るのが経営者や責任者の仕事です。つまり、組織開発とはチーム全員をエフィカシーの高い状態=コレクティブエフィカシーを達成することだと言えます。
リクルートやサイバーエージェントが強い風土を持った企業だと思われるのは、コレクティブエフィカシーの高い環境を会社全体で作っているからです。急成長するスタートアップにはコレクティブエフィカシーが必要不可欠であり、逆に言うと、少し落ち目の疲れているベンチャー企業の組織は、コレクティブエフィカシーが低くなっているのです。
エンゲージメントとは違うのでしょうか、という質問を受けることがあります。皆さんの中には、エンゲージメントという言葉を思い浮かべると、仲間意識が強い状態を想起する人も多いのではないでしょうか。仲間意識は大事なのですが、そういう状態が強すぎると「この環境が好きだ」という現状維持を好む人が生まれてしまい、組織内で、現状に留まる力学が働きます。そう、エンゲージメントを上げることだけに注力してしまうと、変化に弱い組織になってしまう恐れがあるのです。ここがエフィカシーとの大きな違いです。
エフィカシーを高めるには?
ここまでの説明だけだと、できもしない無謀な夢を高らかと語ればいいのか、そんな夢を語っても能力がないとできないんじゃ意味がないじゃないか、そんな奴は一歩間違えたらヤバイやつなんじゃないか、と思う人もいるでしょう。私も最初はそう思いました。だってルフィが実際にいて「俺は海賊王になる」って横で言ってたらそっと距離を置きますよね笑
しかし、ルフィの周りに仲間が集まるように、現実世界でも、大きなビジョンを掲げる経営者の周りには仲間が集まります。あなたの掲げるゴールが大きく、アンセルフィッシュであるほど、そのゴールを一緒に達成したいと願う仲間が集まってくるのです。ちなみに、アンセルフィッシュとは「セルフィッシュ(=自己中心的)ではない」という意味で、利他の心とは少し違います。
とは言え、最初からルフィのようにエフィカシーの塊のような人は少ないでしょう。そこで、エフィカシーを高めるために『アファメーション』というメンタルトレーニングが必要になります。アファメーションとは「肯定」という意味ですが、ここでの肯定とは「それが真実である」と断言することです。望ましい自分のイメージを言葉によって描き出し、「私はこれが真実だと信じています」と、自己に対して宣言します。
アファメーションの言葉の作り方にはいくつかポイントがあります。
さらに、エフィカシーを高めるためのアファメーションの方法として、「成功体験や苦境克服を思い出す」という方法もあります。
これらを続けると、あなたのエフィカシーは間違いなく高まります。
ゴールへの臨場感を高めてパフォーマンスを最大化する方法は他にもたくさんあります。「仕事に3つのラベルを貼る」「クロックサイクルを速める」「超並列を作る」などです。これらはコーチングセッションでお伝え出来ます。
コーチの役割はクライアントのエフィカシーを高め、クライアントのゴールをクライアント以上にできると信じ続け、ゴールの臨場感を高めることです。自分一人では難しいゴール設定や、エフィカシーを高めることも、コーチがいるからこそできるようになっていくのです。
この公式を覚えておいてください。ゴール設定を行い、ゴールを強く思い描き(Image)、エフィカシーによって臨場感が高まり(Vividness)、ゴールが現実化(Reality)していきます。Imageに向かって脳が無意識に走り出すという感覚をもう少しきちんと伝えたいので、次回は「コンフォートゾーン」「RAS」「スコトーマ」というマインドのカラクリについて解説していきたいと思います。
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それでは今日も素敵な一日を!
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