【創業note】個人資本の可視化に挑戦している話~24年8月振り返り~
こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
このnoteでは、起業を志してベンチャー企業に新卒入社したのに、結局17年も所属してしまった結果、38歳6か月にしてやっと起業した人間のヒューマンストーリーという名のポエムブログを書いています。
今回は人生かけて挑みたいひとつの目標である『個人資本の可視化』について進めていることを書こうと思います。
そもそも個人資本とは何か?
その名の通り、個人が持つ資本です。
個人の資本の概念は様々あると思いますが、僕は上記スライドのように5つに分けています。
これらにはそれぞれポジティブ要素とネガティブ要素があると思っています。会計的な資本でも純資産と負債があるのと同じイメージです。
ネガティブと表現していますが、会計的資本でも負債を有効活用して資産を築くように、個人資本でもネガティブ要素を有効活用し、個人資本を最大化できると思います。
ネガティブ要素の活用のイメージは以下の通りです。
そして、ポジティブ要素もネガティブ要素も有効活用しながら自分が持つ資本を最大化していく、というのが個人資本活用の基本概念になります。
なぜ個人資本を可視化したいのか?
個人資本の中では、財産についてはお金に換算すれば可視化は簡単です。ゆえに、金融資産や年収の総量と幸福の関係に関する研究や話題は昔から尽きることはありません。
しかし、世の中はお金持ちだけが幸せではない、と唱える幸福論者はたくさんいて、事実、転職希望者も年収よりもやりがいを求める人が多かったり、高い年収を捨てて地方暮らしやミニマリストとして生きることを選ぶ人が生まれてきたりするなど、現代では、お金以外の要素を満たすことで幸福を感じる人が増えています。
一方で、お金以外の要素は見えないからこそ、持っているという実感や活用しているという実感、そして増えているという実感を得ることができないために、わかりやすく幸福と価値換算することができません。
別のnoteでも書きましたが、人が成長を一番実感するのは報酬の増加です。
本来は2番手にいる専門性のような能力・スキルが成長することが成長であり、報酬の向上は、その能力・スキルを使って得られたアウトプットの評価によって起きる結果でしかないのですが、多くの人は「報酬の向上=成長」と感じています。つまり、目に見える数値が向上しないと人は成長を実感しづらいということです。
この前提に立脚すると、財産以外の数値化しづらい項目の向上によって幸福を感じるということが、言葉にする以上に難易度が高いことがよくわかると思います。裏返すと、数値化することができたなら幸福を実感しやすくなる人が増えるということであり、可視化することの意味を理解していただけると思います。
法人で人的資本経営が要請されているように、個人も個人が持つ資本を可視化、活用を推進することで、自分が持つ資本を有効活用する流れがいつかやってきます。個人資本が可視化でき、その増加と幸福の相関を実感する人が増えれば、労働市場の課題の解決や社会全体の幸福度の増加につながると僕は考えています。
個人資本が可視化され活用されるとどんないいことがあるのか?
可視化のメリットは以下の通りさまざまあると考えています。
1.対個人
現在社会においてキャリアにモヤモヤする人が増えています。このモヤモヤの正体は「現職(今)に不満はないけど、将来的なキャリアに不安がある状態」と僕は考えています。
働き方改革やハラスメント防止法制定などにより、企業はホワイトな働き方を推進するようになりました。それは良いことでもありますが、一方で緩い職場を作り出す要因にもなっています。一昔前と違い、現職が働きやすくなったことで職場への不満を理由に転職を考える人は減りましたが、逆に現職で働きがいを感じることがなくなり「これでいいのか」という将来的なキャリアの不安を訴える人が増えてきたのです。
さらに「これでいいのか」という不安を分解すると、「ゴール」と「現在地」が不明確であることが起因していると考えています。以前のnoteでも書いていますが、多様性を推進する世の中になった結果、幸せの形も多様性を持ち、逆にどこを目指せばいいのかわからないという人が増えました。
また、キャリアの選択肢が増えたことや自分で決断できる権限を得たことで、自分に問いかける場面が増えたのも特徴です。そこであることに気づく人が増えました。自分の「好き」「得意」「やりたいこと」について自分自身がわかっていない、ということです。これが「現在地」がわからないということです。
地図で考えたら「ゴール」と「現在地」がわかっていないのはヤバい状況です。その状況に対して、転職だ、リスキリングだ、という方法に目をやっても答えはでません。だって、今いる場所も向かう場所もわからないのに、行き方を考えるのは不可能ですからね。
つまり、目の前が真っ暗で自分の今いる位置がわからない状態で、どこに向かえばいいのかもわからず、立ち尽くしてオロオロしている人が増えている、ということです。
そんな人たちに対して転職やリスキリングを勧めても本質的な解決方法にはなりません。必要なのは「ゴール」と「現在地」を明確にしてあげることです。個人資本の可視化ができれば、それが実現できるのです。
特にゴールは様々な可能性があります。世の中には自分のロールモデルとなり得るような人がゴロゴロいるのですが、SNS、メディア、講演会などではその人たちの一部分しか見えないため、まねることが難しいです。いや、仮に近くにいる上司をロールモデルに置いたとしても、実際にその上司の本質的な資本を分解し、手に取って見るくらいまで理解することは難しいでしょう。
しかし、ロールモデルの個人資本が見えると自分のそれと差分をとればいいだけです。ゴール≒ロールモデルと仮置きするのは、幸せの形が複数ある以上、自分に近しい価値観を持ち、自分よりも先に進んでいる人をマイルストンとすることが手っ取り早いと考えるからです。
100人いれば100通りの幸せの形があります。しかし、自分らしさという難しいものに向き合うよりも、自分のロールモデルとする人を一旦のマイルストンと仮置きし、その人が持つ個人資本のポートフォリオ(5つの資本のバランス)を自分の理想形と置き、自分の個人資本との差分を埋めるための戦略を考える方がやりやすくて、大きくミスることがなさそうですよね。
高校野球に例えるなら、甲子園に行ける人は数少ないですが、甲子園というわかりやすい目標を目指して頑張っているという状態に対して幸せややりがいを感じる人が多い、ということと近しいと思います。実際にロールモデルに近づけるかどうかよりも、自分にとってしっくりくるゴールに対して向かっていて、日々前進しているという実感が得られるだけで、多くの人はかなり生きやすく感じるでしょう。
2.対チーム
個人資本が可視化できればマッチング率が高まります。会社で新たな人材を採用する際にも、プロジェクトで人材をアサインする際にも、面接の時間を減らし、効率的な見極めが可能になります。
また、繋がりや繋がっている人からの推薦などが全てストックされていれば、いわゆるリファレンスチェックが必要なくなります。
さらに、現状のスキルという点ではなく、これまでの能力獲得の経験や最新学習履歴などからポテンシャル人材の採用可能性も高まります。つまり、現状では必要なスキル基準を満たしていなくても、これまでのスキル獲得タームやその獲得のための意欲や学習という行動で判断すれば、採用に至る可能性があります。現時点では能力を有しているがダウンキャリアで年収が高い人よりも、ほんの半年で基準を満たしそうなアップキャリアで年収は低い若手であれば後者の方が採用される可能性が高まるかもしれません。
これはビジネスの場で限ったことではなく、プロボノを探すチームや、コーチを探している学校の部活動、そして恋愛や婚活の場面でも活用は見込めると思います。
個人資本の可視化のためにどんなことをやっているのか?
そもそも個人資本の可視化なんてニーズがあるのか?という議論から始まりました。確かに自分の中にある抽象的でつかみどころのない資本を可視化できると面白いとは思います。しかし、現時点で可視化できていなくても生きていけるので、このような構想を人に話しても「あったら面白い」という声はもらっても「そういうのが欲しかった!是非欲しい!」という声にはなりません。
しかしこれは当たり前なんですよね。フォードが自動車を発明したときに、仮にユーザーにニーズヒアリングをしても、自動車が欲しいという声は聞こえず、もっと速く走る馬車が欲しいという声だらけだっただろうという仮説があります。そう、ユーザーは痛みは持っていてもソリューションのイメージはないのです。
よって、僕らは自律的な人材が求められる社会の推進による、個人資本の可視化と交換が行われる時代が来ることを見越して、プロジェクトを進めることにしました。
誰をターゲットにしているのか?
まず検討したのがターゲットの設定とその方が抱える痛みです。誰をターゲットにするかを考える際に大雑把にマーケットを捉えました。
以下のグラフは、濃い青色のグラフが転職者数で薄い水色のグラフが転職希望者数を表しています。一目見てわかるように、薄い水色のグラフは右肩上がりで増えていますが、濃い青色のグラフは横ばいです。
ビズリーチを中心にダイレクトリクルーティングが主流になって以来、転職活動を始めるハードルは非常に低くなりました。年齢、社名、職種、役職、現年収くらいを登録するだけでも企業からスカウトが届きます。活動ははじめやすくなった一方で、実際に転職するという決断にはパワーがかかります。これは昔も今も変わりません。ゆえに「何となくモヤモヤするから今よりも良い環境を探して活動は緩く続けているけど、今より確実に良くなると言える環境はないし、今の環境も絶対に無理というほど嫌じゃないからとりあえずステイしよう」という層が増えているのがわかります。
このゾーンに対して、転職以外のソリューションとして個人資本可視化サービスは受け入れられるのか、と検証しようとしましたが、まだターゲットがざっくりしていますね。そこで、これらを細分化しました。
なぜ上記のように分解して選択したのかのということは長くなるので割愛しますが、一緒に協力してくれているメンバーと話し合い、ターゲットからの生々しい声も確認できた結果です。
特に今、男性の育児休暇取得率の向上という社会的要請もあります。本来は本業が相当に忙しいターゲットですが、会社の命令により、いきなり仕事のことを考えなくていい期間が増え、その間に自分を振り返る人が増えていることを確認できました。本来はこのような時間は家族に向き合うべきですが、特に男性は頭の中から完全に仕事を忘れるのは難しいでしょう。男性の育休取得日数の平均は23年度調査では23.4日ということもあり、例年長くなっているとはいえ、やはりまだ物理的にも心理的にも育休をとりやすいと思っている人は少ないと見ていいと思います。
実際はさらに解像度を高めていますが、上記の層に対してまずはサービスを提供していこうと考えています。
何を提供しようとしているのか?
次にソリューションですが、前述した個人資本を可視化するだけでは現在地がわかるだけでゴールが不明確です。しかし、すべての資本を最大化したいのか、というとそうではないと考えます。なぜなら、どう生きたいか、どうありたいか、というBeingが人によって違うからです。
そう考えると、個人資本の適切なバランスをタイプ別に分けられるのではないかと考えました。人それぞれタイプがあり、そのタイプごとに適切な個人資本のポートフォリオが組めるのではないかと思ったのです。
人のタイプ診断は色々ありますが、キャリアに関することなのでまずはキャリアアンカーの考えに沿ってみることにしました。
上記のように8つのタイプに分かれるというのがキャリアアンカーの基本的考えです。そして、このタイプ別に個人資本の理想のバランスが変わるのではないかと仮説立てをしました。例えば、独立タイプとバランスタイプだと、能力資本や財産資本や繋がり資本は大きく違ってきそうですよね。
このようなタイプごとに自分に近いロールモデルを見つけ、そのロールモデルが持つ資本のポートフォリオとそれぞれの資本量を自分のそれと比較して差分をとり、その差分を埋めるためにどうするか、ということをソリューションとすれば、非常にわかりやすくなるのではないかと考えました。
どのように提供するか?
ここまで読んでいただいてわかるように、これらの仮設の前提はかなり真面目で真剣にキャリアに向き合う人を想定としています。しかし、そのようなターゲットも現状維持をしたいという人間の基本本能があり、そう簡単に動いてはくれないでしょう。よって、人間の怠けた脳でもやりたくなるというデザインが必要です。そこで作ったキャッチが以下です。
現状維持を願う脳はおそらく寝転がってスマホでYoutubeを見ながら自分のキャリアにプラスになるようなコンテンツを探していることでしょう。
ゆえに、「今の立場や環境を変えず、痛みを伴わず、ゲーム感覚で、人生を面白くするためのシミュレーションができる」が重要だと考えたわけです。
このシミュレーションを実行するために作った公式が以下です。
自身の現状の満足度を、目指すキャリアの方向性と個人資本の総量及びポートフォリオという変数を変えることで定量で表します。
この公式を骨子としてサービスに肉付けしています。まだまだ思い描く理想に現実をつけるのは遠いですが、自分のライフワークととして取り組み続けていきます。
是非、この分野に興味がある人や想いを共感できる人は堀内まで連絡ください。プロジェクトに加わってくれるメンバーを募集しています。
9月も宜しくお願いします!