絵本『おじいちゃんの車』を描きました。全ページ無料公開します。 6 針貝傑史 2019年7月27日 17:00 『おじいちゃんの車』 とても純粋で、好奇心旺盛な少年がいました。名前はトト。トトのそばにはいつも優しいおじいちゃんがいました。 トトが笑えば、おじいちゃんは笑い、トトが泣けば、おじいちゃんは背中をさすって慰めてくれました。 トトはそんなおじいちゃんのことが大好きでした。 しかし、ある日突然、おじいちゃんはいなくなってしまいました。机の上に一台の風変わりな車を残して。 それからトトはおじいちゃんの車と毎日、毎日遊ぶようになりました。 ぼっちゃ~ん!ある日、遊んでいた拍子におじいちゃんの車がコップの中に落ちてしまいました。 トトはコップに沈んだ車を取ろうとして、手を伸ばしましたが、なかなか届きません。 ごぽごぽごぽ。トトは車を探しに、コップの中に潜り込みました。 コップの中では、たくさんのお魚さんたちが泳いでいました。 トトは車を追いかけて泳ぎましたが、なかなか車に追いつけません。 せいいっぱい手を伸ばして車をつかみかけていたその時、後ろから大きな魚がトトを狙っていました。 ごっくん。トトは大きな魚に飲み込まれてしまいました。 大きな魚の中には、たくさんの雲が水平に広がっていました。 「どこに行くの?」トトは車に呼びかけましたが、車は止まってくれません。 浮かんでいた雲たちは、たくさんの竜巻に姿を変えました。 車は竜巻に吸い込まれてしまいました。トトも車を追いかけて、ぐるぐる。ぐるぐる。 竜巻に吸い込まれた先にあったものはアイスクリームでした。女の子はアイスクリームを見つめて、くすりと笑いました。 トトは車を追いかけます。アイスクリームの坂道を全速力で滑りましたが、車は止まってくれません。 車は宙を飛びました。トトは車を追いかけます。 トトは車を追いかけます。時には、たくさんの鳥たちと一緒に。 トトは車を追いかけます。気づいた頃には、誰も踏み入れたことのない世界にまで来てしまいました。 トトはすっかり大人になっていました。 トトは車を追いかけます。時には、激しい雨の降る湖の上を。 もうトトの頭の中には車のことしかありませんでした。 トトは車を追いかけます。時には、真っ赤に染まった空の下を。トトには大切な家族ができていました。 みんなで車を追いかけます。 トトは車を追いかけます。とうとう宇宙の果てまで来てしまいました。 それでも、車は止まってくれません。 車はぽっかりと空いた小さな穴に吸い込まれてしまいました。 その小さな穴はストローにつながっていました。 トトはすっかりおじいちゃんになっていました。車は机の上でぽつんと止まっています。 トトが近づいても、車はもう走ってくれませんでした。 トトにももう走る力は残っていませんでした。 トトは車と一緒に一休みすることにしました。 今まで走り抜けた長い長い道のりを夢に見ながら、トトは深い眠りにつきました。 車はもう、動きません。 静かな時間が流れていたある日のこと。 突然、車はまた動き出しました。 とても純粋で、好奇心旺盛な少年に背中を押されて。 おじいちゃんの車はもう止まりません。 あとがき。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。感想や伝わってきたことなどありましたら、コメントやシェアなどしていただけると大変嬉しいです。 #イラスト #マンガ #子育て #絵 #生き方 #漫画 #アート #人間関係 #発達障害 #趣味 #考え方 #絵本 #ドラマ #イラストレーター #現代アート #illustration #エンタメ #イラストレーション #スケッチ #drawing #絵本作家 6 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート