森田療法の新書を読んだ感想
昨日と一昨日にAmazonのマーケットプレイスで注文した中古の新書を読んでいたのだった。
タイトルは「森田療法」で講談社現代新書から出ている新書だ。著者は岩井寛という亡くなられた精神科医で、この人の書く筆致の確かさと、内容からうかがえる人格にとても惹かれた。
やっぱり森田療法は神経症対象なので自分の病気とは直接の関係はあるかどうかは分からないが、この本には一般の人の人生の参考にも役立つと書かれているので、まあ、別の精神疾患でも何らかの効果はあるだろう。
森田療法の重要な概念に「とらわれとはからい」、「あるがままと目的本位」というのがあり、ちょっとこれについて説明しておく。
とらわれというのは普通に言ってあることにとらわれることなのであるが、これは一般人も持っている考えらしい。いわゆる神経症の人と一般人のとらわれについてどのように違うかというと、神経症者とは違い一般人はそこに執着しすぎないというか離れることが可能ということだ。
しかし、神経症者はある考えや事柄にとらわれすぎてしまい、それを解消しようと自分独自というか独特で過剰な行動を取ってしまうらしい。これが森田療法でいうはからいである。
このはからいが神経症の症状なのであるが、岩井先生曰く「目的本位」に生きるというか行動することが大切と書いてある。それが病気の回復につながる。
人間にはあるがままの心というのが有って、より良い状況を目指そうと考える自分や醜かったり汚いことも考えるのも当然の心理なのだ。それを完璧主義的傾向で自分のあるがままを認めない心理が神経症につながる。
これを解消するには、いろいろと心に浮かぶあるがままはそのままにしておいて、とにかく目的に向かって行動するのである。「嫌だなー」と思ったり、「逃げたいなー」と思うのは誰にでも湧く普通の気持ちだと思う。ところが、普通の人は嫌々やったり、緊張しながらも物事をこなしたり出来るが、神経症になるとその嫌な部分にこだわりすぎて症状として出てしまう。
岩井先生の書いていることを引用すると、そういう「あるがまま」の気持ちを持ったまま「目的本位」で行動していくことが大切らしい。そうすることで神経症は改善や完治をしていく。
この森田療法の目的本位の考え方は、体の病気でも心の病気でも、悩める一般人の生き方の参考になると思うし、ぜひこの新書を一読してもらいたい。
偶然だが、僕は昔精神科病院の入院中、誰に言われたわけでもなく、「人生の出来事は何が有ってもすべてくぐる」と20代の頃に決意したので、それ以来たまにサボる事はあっても、目的に対しては一切逃げずにやってきた。今までの人生の道程と岩井先生の書く森田療法の考えがぴったり符合し、とても驚くと同時に、ああ良かったと心底思った。
いや、たとえ心の病の症状があったとしても、服薬していても出来ることはやることが大切だと思う。それが目的本位で生きるということだし、森田療法の重視する自己実現と自己陶冶という考えにつながっていく。
精神疾患の患者の置かれる福祉就労環境は自己実現や自己陶冶を阻害すると考えているので、厚生労働省や福祉学の考えは森田療法よりも100年遅れていると感じる。
幸いなことに、お金を節約しないといけないが、今はアーリーリタイアと称して自分の目的としたいことに取り組んでいる。たかが趣味だと言われそうだが、劣悪な福祉就労環境から抜け出して取り組み始めるだけでも、自分を褒めたい。
愚痴が続いたが、この新書はロングセラーになるほどの名著だし、森田療法の考えは一般の方にも充分に役に立つと思うのだ。
僕自身は心の病で診察と服薬を続けながら、引き続き森田療法的な意識の持ち方で生きていきたい。以前の記事にも書いたがV.E.フランクルの心理学よりも、自然な心の働きに合わせた森田療法のやり方や生き方がしっくり来る。
読書感想文としてはこのような感じであるが、とりあえずリンクを貼っておくので、よければ御一読下さい。