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キッチン(吉本ばなな、1988年発表) 読書感想文
キッチン(著:吉本ばなな、福武文庫、初版1991)
直感的で詩歌句的でもあり、しかしユーモラスなので、スラスラ読める簡単でやさしい言葉。だけど芯がしっかりした抜き身の刀のような文章。ゆっくり触れる分には問題ないしあたたかいけれどいざ振られたらザクッと斬られる。
読んでいて、俵万智の『サラダ記念日』(1987)を連想した。
あとこの本に合う曲は槇原敬之の『雷が鳴る前に』だと思うの。
『キッチン』は脇役ふくめ魅力的な登場人物たちだらけ!特にえり子さん。パイナップルのくだりがすばらしい感覚。
最後のカツ丼というか料理の力って人を生きさせることができてすごいんだなあとベタな感想(苦笑)。
『キッチン』ともう一つ所収されている『ムーンライト・シャドウ』もある人物が耐え難い突然の死を迎える。でも残された者は力強く生きていかねばならない。
旧約聖書の伝道の書の中に「凡て汝の手に堪ることは力をつくしてこれを為せ。」という言葉があるがその言葉をやさしい文体で、癒すかのように登場人物たち、そして読者に問うている気がした。
↓僕が読んだ福武文庫版ではないけれど