業務改善は"共感"から始める
こんにちは。
今回は、人に"共感すること"にフォーカスした問題解決手法で、業務改善を成功に近づける方法を紹介します。
1.問題解決で陥りやすい罠
問題解決の"失敗の可能性"を高めるのは、
①誰かが決めた問題を解決しようとする
②すぐに解決案を考える
が原因だと私は考えています。私が失敗した実体験を元に、その理由を解説していきます。
私は人事部で、以下のことを提案しました。
「業務が属人化することが問題だ!」
「部内で仕事内容を共有し、お互いの仕事を理解することから始めよう!」
社内では、Googleが提供しているグループウェア「G-suite」を利用していました。「まずは、スプレッドシートに担当している業務を書き込み、お互いの仕事を"見える化"しましょう!」
用意したシートには、業務内容、担当者、作業時期があっという間に記入されました。「よし、部員もやる気があるし、順調だ。ゆくゆくはここに、業務マニュアルをつけて、誰でも対応できるようにしましょう!」
下記は実際に作ったシート。
半年後、このシートは、単なる年間スケジュールの確認表となりました。
業務の属人化を解消するプロジェクトは"失敗"したのです。
①誰かが決めた問題を解決しようとする
「業務が属人化している」、これは「会社全体」の課題であり、人事部にいる人の「悩み」ではありませんでした。そもそも、取り組む問題自体が間違えている可能性があったのです。
②すぐに解決案を考える
「属人化を解消するためには、仕事の見える化が必要だ」
「そのためにITツールを活用しよう」
一見、問題なさそうに見えますが、すぐに解決策に結びつけるのは、外から情報を得る機会を減らし、解決方法のアイデアを生み出す可能性を狭めてしまいます。日頃から問題解決を生業にしているビジネスマンは、素早くソリューション考えるのが「癖」になっているので、陥りやすい問題だと思います。
2.共感型の問題解決を実践する
"デザイン思考"
GoogleやAppleなど、世界の一流企業を生み出した地、シリコンバレーで取り入れられている「サービス」や「プロダクト」を考えるアプローチの手法です。「人間中心の考え方」を実践する手法とも言われています。
引用元:↑ 思考よりも行動が重視されるデザイン思考のプロセス
https://blog.btrax.com/jp/design-thinking-plus/
デザイン思考は、最初にユーザー(人間)に「共感する」ことから始めます。私はこの「共感から始める」が最も重要なステップだと考えています。デザイン思考の詳細については説明を割愛しますが、私が実際に実践した内容を紹介します。
<ステップ1:共感と理解>
「問い合わせの電話で自分の作業が中断してしまう。本当は1人静かに集中して、早く仕事を終わらせたい。」何気ない会話ですが、人事部員から、事あるごとに耳にしていました。人事は社内でも問い合わせが多い部署です。「○○さんいる?ちょっと替わって」などと電話がかかってくると、人事の担当者は、役員に頼まれた資料作りや給与計算の最中だろうが、問答無用で作業を中断せざるを得ません。1時間集中してやる、途中で茶々が入りながらやるでは、どちらが効率よく仕事が進むかは想像がつきますよね。
<ステップ2:定義と明確化>
この人は、「問い合わせの電話で自分の作業が中断されない方法」を求めている。なぜなら、「本当は集中して仕事に取り組み、早く仕事を終わらせたい」から。これが本当の「悩み(ペイン)」だったのです。
<ステップ3:アイデア開発と創造> 〜 <ステップ4:プロトタイプ>
まず、問い合わせの電話で作業が中断されない方法を考えてみました。「チャットボット」「電話の自動音声対応」など、どれもハードルが高そうです。そんな時、たまたま隣の部署の社員の紹介で参加したセミナーで、タスク・プロジェクト管理ツール「asana」の「看板形式」という活用方法に出会いました。「新規依頼」→「対応中」→「完了」とタスクを管理する方法で、これを人事部の問い合わせ業務に活用してみました。部内で共有した資料の一部を紹介します。
「まずは実験でやりましょう」
「失敗してもいいですよ」
と、ハードルを下げておくことが大切です。特に、ITツールや新しい仕組みを使う時は、これまでとやり方を変えさせられる人にとっては、ストレスや怖さでしかありません。また、将来的に負担が軽減するような取り組みであっても、新しいことを覚えたり、やり方についてわからないことを考えたりなど、一時的には今の業務にプラスの負荷になります。個人的には、目標だけでなく、それに取り組むと「どんな良い未来が待っているのか?」をユーザーに共有することをおすすめします。みんなが幸せになる未来を「共感」してもらうことが何より大切だと思います。
<ステップ5:テスト>
asanaの運用を開始したら、「タスクを見たらいいねを押そう」「いいねを最後に押した人がタスクを完了にしよう」など、部員から意見が出始めました。一つ一つ、その場で実践しながら、チームで最適な運用を目指しました。「いいね」を押す運用は、結果的に「他の人のタスク(仕事)を知る=お互いの業務の理解促進」に繋がりました。また、メールでタスク完了の通知が来るので、自分の仕事を他の人が代わりに対応してくれた時は、通知を見て「ありがとう」という新しいコミュニケーションが生まれました。
このasanaを使った問い合わせ対応は定着し、運用開始から半年で、300近いタスクが登録され、問い合わせの対応方法やマニュアルが蓄積されています。業務の属人化を防ぐ取り組みは、まだまだ道半ばではありますが、着実に進んでいます。
3.まとめ
・誰かが決めた問題を解決しようとしない。なぜなら、取り組む問題自体が間違えている可能性があるから。
・すぐに解決策に結びつけない。なぜなら、アイデアの可能性を狭めてしまう可能性があるから。
・問題解決は、人に「共感すること」から始めよう。なぜなら、人に共感し理解することで、「問題=人の悩み(ペイン)」が定義され、それを解決する方法を考えて実践することが、成功の可能性を高めるから。
問題解決の手法に正解はないので、一つの手法として参考にして頂ければと思います!