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クリスマスの日 ランチはインドカレー


そして25日。クリスマス当日が来た。
クリスマスはイブのほうが何かと騒がれがちだが、当日は25日だ。
午前の仕事を終え、ランチはどうしようかと、考える。

クリスマスといえばチキンとかケーキなんだろうけど、どうも気が進まない。僕にとって特別な日に食べるものは決まっている。今日もカレーだ。そう、スパイスの香りが染み込んだ熱々のカレー。腹が空けば、それがすべてだ。昨日も今日も。

僕はスマホを取り出し、カレー仲間の彼女にメッセージを送る。名前は彩香(あやか)。スレンダーな体型なのに信じられないくらい食べる。特にカレー。僕は一言だけ送った。
「ランチ、カレー行かない?」

しばらくすると返事が来た。
「インドカレー奢ってくれるなら行く。」
昨夜も別の誰かから聞いたようなセリフだが、彩香らしい返答だ。
僕は苦笑しながら了承のスタンプを送った。

待ち合わせはいつものカレー屋。店内に入ると、スパイスの香りが僕を包み込む。彩香はすでに席に座っていた。赤い帽子に赤いニットに黒いスカートが、まるでクリスマスツリーの飾りのようだ。
「遅い。」
彼女は腕を組んで言ったが、その口元には笑みが浮かんでいた。

「じゃあダブルチキンカレーね、大盛りで。」
メニューを見もしないで彼女が注文する。細い体にどこに入るんだろうと毎回不思議に思うけれど、彼女は見事に平らげる。それも楽しそうに。

カレーが運ばれてきた瞬間、彼女の目が輝いた。大盛りの二つのカレーにタンドリーチキンが金色に輝くカレーの海に沈むその光景を前に、彼女はフォークとスプーンを握りしめる。
「これが私のクリスマスプレゼントね。」
冗談めかして言う彼女に、僕は思わず笑ってしまう。

クリスマスにはインドカレー

「カレーがクリスマスプレゼントになるのか?」
「なるよ。だってこれ、私が一番好きなやつだもん。」

彼女はスプーンを口に運び、一口食べるたびに幸せそうな顔をする。それを見ているだけで、なんだか僕まで楽しくなる。

「クリスマスにカレーなんて変だよな。」
僕が言うと、彼女はすかさず反論する。
「変じゃない。だって、クリスマスだろうと何だろうと、美味しいものを食べるのが一番だもん。」

そう言い切った彼女の顔には、一切の迷いがなかった。それが妙に頼もしく思えた。

気づけば、店の外では雪が降り始めていた。白い結晶が街のイルミネーションをさらに美しく飾る。彩香は最後の一口を平らげて満足げに息をつく。
「カレー最高。」
その言葉に、僕は軽く頷いた。

スパイスの香りに包まれながら、僕たちはクリスマスをしみじみと楽しんだ。

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