信じてみつめた「遠い空」
「遠い空」は尾崎豊の曲だ。
「太陽の破片」と言う曲のカップリングとしてリリースされた。
その昔「夜のヒットスタジオ」で初めて尾崎豊という人を観た。
多くの人が感じる様に、僕にとってもそれは衝撃だった。
尾崎豊の歌う姿と「太陽の破片」が何年もずっと離れなかった。
当時、尾崎はまだ生きていたし、高校の友人にも尾崎ファンはおり、ⅭⅮを借りてはカセットテープに録音し、毎日の様にウォークマンで尾崎の曲を聴いた。
でも、「太陽の破片」は手に入らなかった。
いつの頃だったか記憶は定かではないが、僕はⅭⅮショップを回って「太陽の破片」のⅭⅮを探した。
発売から何年か経過していた事もあって、なかなか見つける事は出来なかった。
とあるⅭⅮショップでやっとの事見つけることができた時の興奮は今でも忘れない。
それから毎日の様に聴いた。
あの日衝撃を受けた、テレビで見た尾崎の姿がより鮮明に蘇った。
多くの人がそう思う様に、僕も思った。
「太陽の破片」は名曲だと。
カラオケで「太陽の破片」を熱唱する友達も結構いた。
僕も何度か挑戦してみたような記憶はある…。
だが、ふとした時に頭の中で自然にリピートされてたのはカップリングの「遠い空」の方だった。
さわやかなリズムとブルースハープの音色が印象的なイントロ。
「太陽の破片」よりはずっと力の抜けた雰囲気で歌う尾崎の声。
『世間知らずの俺だから、体をはって覚えこむ・・・』
就職も進学もせず、アルバイトする事を決めた日も。
給料をピンハネする店長とやり合ってバイトを辞めた日も。
やりたい事とできる事の現実を目の前に突き付けられた時も。
気付けば、心の中で「遠い空」を口ずさんでいた。
『風に吹かれて 歩き続けて 立ちつくす人の間を 失いそうな心を』
なんとなくホッとした。
いくつめかのバイトを辞めた時、「あ~ぁ!」と吐き捨てる様に言いながら、公園のベンチに座り込んで空を見上げた。 しばらくぶりの、さわやかな青空だった。 慌ててウォークマンを取り出し「遠い空」を聴きながら、誰もいない公園でしばらくベンチに座ったままでいた事を、なぜだか今でもよく覚えている。