世界一美味い飲み物。

僕は今年32歳になった。もう立派な大人だ。

しかし定職には就いておらず、自分がしっかりした大人かと問われれば
「そうです」とは言いづらい。

夢を追って日々暮らしているがそれでは満足に食えず、
アルバイト漬けの日々を過ごしている。

色んなものを食べたり食べさせて貰ったりして生きて来て、先日とんでもなく美味い飲み物を飲んだ。
誇張無く世界一美味い飲み物だ。

君は知っているだろうか。
スターバックス（以下スタバと書く）のフラペチーノという飲み物だ。

名前は知っていた。飲んだこともある。はずである。
それなのに僕は感動するほど美味いと思ってしまった。
なぜだろう。なぜ僕は飲んだことあるものなのにこんなに感動したのだろうか。

まあそんなことはもうどうでも良い。とにかく美味しかった。

僕はこの感動を伝えたくて周りの人間に話した。

「とても美味しい、世界一美味い飲み物を飲んだんだ。フラペチーノと言う。君は知っているか」

返ってくる言葉より先に怪訝な顔をされた。こいつは何を言っているのだと。

当たり前だろう、知っているに決まっている、美味い事も知っている。

皆、僕が言った言葉にこう返す。

僕は思った。なぜ皆教えてくれなかったのかと。
何故君たちはこの世界一美味い飲み物を隠し、抱え込み自分だけで楽しんでいたのかと。

僕はそんなことをしない。良いモノは教えたいし伝えたい。だから教えた。伝えたのだ。

それなのに皆僕を哂った。

ずるい。そう思った。

先日知り合いとスタバに行く機会があった。

スタバにはレギュラーメニューでフラペチーノがある。

僕は目もくれずカフェラテを頼み、知人はフラペチーノを頼んだ。

その時は期間限定でイチゴを使ったフラペチーノが出ており、それを買ってきた知人に僕は「なんだそんなものを」と言った。

しかし僕は自分の知らないものを簡単に否定するような、そんな浅はかな人間になりたくないという強い意志がある。

「一口飲ませてはくれないだろうか」と頼み、5口くらい飲んだ。

なんだコレは。なんだこの美味い飲み物は。フラペチーノとはこんなに美味い飲み物だったのか。

雷が落ちた衝撃とはこの事を言うのか。僕はフラペチーノの文字通り虜になってしまった。

「これはいくらだ。高いのか」

見せてもらったレシートには700円前後と書かれていた。僕は恐ろしい、と思った。

スタバは全世界にあると聞く。

超大手が手掛ける為大量生産が出来るからこの値段なだけであって、
時代が時代なら一万はするのではないだろうか。

僕はカフェラテを置き、そのままレジに進んでフラペチーノを買った。

美味い。何だこの美味い飲み物は。イチゴが入ってる。ちゃんと生のイチゴが入ってる。凄い。

僕はすぐにフラペチーノを飲み干した。
悲しい事である。フラペチーノも飲むと無くなるのだ。

僕はおかわりをしようと思ったが、昼に食べた大して美味くも無いカレーが腹で踊っていた。

後日僕はスタバに走った。
勿論フラペチーノの飲むためだ。

しかしイチゴの季節は終わり、プリンアラモードに変わっていた。

僕は激怒した。なぜイチゴじゃないのか。傍若無人だ。意味なんか知らない。僕は激怒した。

僕は憤怒したままプリンアラモードのフラペチーノを頼み、
握りしめて生温くなった小銭を店員に渡し、プリンアラモードのフラペチーノをプリプリ受け取り飲んだ。

世界一美味かった。

なんだコレは。なんだこの美味い飲み物は。フラペチーノとはこんなに美味い飲み物だったのか。

雷が落ちた衝撃とはこの事を言うのか。僕はフラペチーノの文字通り虜になってしまった。

コレを読んだ人は是非飲んでみて欲しい。フラペチーノを。
飲んだことのある人も、飲んだことが無い人も、フラペチーノの新しい魅力に気付くはずだ。

そして共有しよう、フラペチーノの良さを。

僕らはフラペチーノを知り、一心同体と化すのだ。