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痛いファンの話。




よく

「一番好きなバンドって何ですか?」

と聞かれる。



僕は毎回この質問に悩んでしまう。




聴いてる音楽もその都度変わるし、

カラオケでよく歌う曲のバンドが一番かと考えるとそれもまた違う。





高校生の頃にミッシェルガンエレファントを知り、98年のフジロックのVHSを擦り切れるまで見たけど一番好きかと言うと悩んでしまう。

勿論大が付くほど好きである。






じゃあ今まで見た音楽のライブの中で一番心を震わしたバンドは何か、
と聞かれればすぐに思い浮かぶバンドがいる。







「全日本プレス加工」というバンドだ。



恐らく知らない人の方が多いと思う。




このノートを読んでくれてる人はお笑い好きな人が多いと思うから知っている人もいるだろうけど、
世間的には全くと言って良いほど無名だ。






というのもこの全日本プレス加工というバンドは芸人がやっている。




メンバーは

ヴォーカルのユンボ安藤(東京ペールワン)
ギターの野沢ダイブ禁止(虹の黄昏)とチャンス大城
ベースの加藤ミリガン
ドラムの伊豆の踊子(だったと思う。唯一の一般人)

このメンバーで、不定期にライブ活動を行っているパンクバンドである。





初めて見たのは芸人でバンドをやっている人たちを集めたイベントで、

僕はその時「頭脳会議」というバンドを組んでおり出演させてもらった。




野沢さんとは面識があり、バンドをやっていることも知っていた。


野沢さんは普段から格好良い方なので、ぞんな人がやっているバンドは格好良くない筈がないと思い見てみると予想以上だった。

物凄く格好良かった。




その時初めて見た安藤さんのしゃがれた声がとても格好良く、

酒でベロベロになりながらも速弾きするチャンスさん、

サウナパンツにライダースを羽織り真っ赤なSGを掻き鳴らす野沢さん、

長身でダウンピッキングのミリガンさん、


男くさい中にも華があってセクシーな雰囲気のこのバンドに
僕は堪らなく心を奪われたのだ。




真似をして自分のバンドで酒を呑みまくって演奏したけどあんな風に出来るはずも無く、向き不向きがあるのだと再確認した。








16歳。

僕は鹿児島の片田舎にいた。


好きでもない野球部に所属し、好きでもないのに辞める度胸が無くて怠惰に練習に参加していた。

真面目にやっている人間に失礼だったと思う。


勉強なんか出来ず、友達もロクにいなかった僕は他のクラスの知らない奴と飯を食ってた。





そんな中唯一の楽しみは洋服で、当時僕は知人の影響でパンクファッションがとても好きだった。




ピチピチのTシャツにボンテージパンツ、
首元にはパドロック、腰回りや手首には鋲の付いたベルトやブレスレット。


少ない小遣いを握りしめて地元のパンクショップで少しづつ買っては一喜一憂していた。





日本のパンクファッションで語らずにはいられないブランド、
それが「666」というブランドである。



細かい説明は省くが、

イギリスはロンドンで生まれたパンクロック。

それを代表するバンド「セックスピストルズ」の衣装を作っていた
ヴィヴィアンウエストウッドの当時のブランド
「セディショナリーズ」を忠実に再現しているブランドが「666」である。




当時僕はそのブランドを買う程の金銭的余裕などなかった。


だから友人に貰った666のパンフレットを、文字通り穴が開くほど読んだ。


あれが良い、コレが良いとおもちゃを欲しがる子供のように目をキラキラしながら読んでいたものである。


当時パンフレットにはオムニバスのCDが付録として付いていた。



確か様々なアマチュアやインディーズのパンクバンドが666に音源を送り、
そこで採用されれば666がバックアップしてそのCDに収録され全国に配布されるというものであったと思う。




僕はそのCDをMDに焼き、
四六時中聴いてた。


名前も知らないバンドである。

今ほどネットも普及していないからそこに収録している曲しか知らなかったが、
誰も知らない曲を聴いているという行為自体がなんだかとても嬉しくて優越感があった。





初めて聴く全日本プレス加工にはそれがあったのだ。

僕が高校生の時に感じた感情の全てが詰まっていた。




僕は全日本プレス加工を観た時、

「僕はこれになりたかった」

「僕はずっとこのバンドを探していた」

という気持ちになったのだ。




だからどれほど格好良いバンドのライブを見ても恐らくそれに勝るものはその時はあっても、
時間が経過すればまた全日本プレス加工のライブが一番だなと思うだろう。






以前野沢さんとライブで一緒になった時、気になるジャケットを着ていたので見てみると胸に

「(全)日本プレス加工」

と刺繍されたドカジャンだった。



ドカジャンとは土木作業員などが着ているジャケットである。





「それグッズとして作ったんですか」

「私服で作ったんだよ。コレ売ってるネットがあってさ、そこで買うと刺繍入れてくれるんだよ。このバンド名ピッタリでしょ!(株)みたいに(全)にしたんだよ」















作った。







僕はすぐ野沢さんにそのサイトを教えて貰い、
家に帰るなり速攻でオーダーメイドした。


野沢さんのは冬用のものであったが、
僕はより多くの季節で着たいので薄手のジャケットにした。







ガチファンである。

勝手にグッズを作って私服で着るという、恐ろしい人間である。







胸元の刺繍は野沢さんと同じ赤にした。

恐らく書体も一緒だと思う。






背面はシンプルなのでいつかプリントしたり、
バックパッチを貼って楽しみたいと思ってる。





中は熱がこもらないようメッシュになっており、

名札が縫い作られている。


血液型まで書く欄があるのは恐らく事故に遭って輸血が必要になった時用だろう。


ポケットは胸とサイド、そして内側にも2つの計6つ。



デザイン性に富んでいながらも、やはり機能性は抜群である。







素材はポリエステル60%コットン40%なので着心地も良い。


そしてこの色シャドーブルーって言うんだ。





届いた瞬間嬉しくてすぐ写真を撮って野沢さんに送り、

「コレを着て一緒に遊びに行きたいです!」

と連絡したけど、もしかしたら引いていたかもしれない。



直近の夢はこれを着て全日本プレス加工のライブに行くことである。









って言うかやっぱりこれくらいしてこそ本物ファンだと思う。



見てるとやっぱり最近は虹たそで知った顔ファンとか、話題になった曲でとりあえずライブに来たって客が多いと思うし、

新規のファンはライブ観る時のマナーなんかもなってないから私たちみたいな古参のファンがそういったことまで教えるのが良いかもって言うか使命かもしれないって最近は思ってる。



この間なんか

「え、そこでダイブする?」

みたいのもあったし、
いつも見てる位置に新規のファンがいたりするから違う場所で見たせいで写真撮りづらくて凄く嫌だった!

次そんなことあったらちゃんと注意しなきゃ!



なんかそんなこと友達に言ったら

「お前みたいな奴がいるから新規のファンが入りづらいんだぞ」

とか言われたけど、それは違うと思う!



こっちは初期の小さいライブハウスでやってる時から行ってるちゃんとしたファンだから、
そういうマナーを教える係にならないといけないと思う!



全日は私たちが支えてこそ全日なんだから、新規はまず私たち古参を見付けて、
そっからライブのマナーなんかを覚えて欲しい!


あと私たちに挨拶も無く一番前の真ん中を陣取るとか本当あり得ない!




早く売れて欲しいけどメジャー行ったら寂しいなぁ…




夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。