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初冬の頃、想うことは…

 秋という季節がごっそりと抜けた季節の移ろいだった。これはもちろん「僕にとって」のことだ。夏の暑い盛りに体調を崩して、検査入院、そして手術、リハビリのため、窓から見える景色のみに季節の移ろいを想像する暮らしを強いられて、ようやく開放されたときに見えたのは、もはや初冬の趣すら感じられる風景と肌寒さだった。

 おまけに弱った体力でようやく出かけられたのが曇りの日の夕暮れ時…。本来ならば無事に手術が成功して再び出かけられることを喜ぶべきなのだが、こんなお天気ではそういう気持ちにもなれず、ただ寂しくて物悲しい。

 とはいえ、たとえ肌寒く感じてもそこに青い空と差し込む陽射しがあれば、もっと晴れやかな気持ちになれるはずだ。そうでなくちゃこんな気持ちのままでは生きてゆけない。

 カメラを持って歩くと見える風景、撮れる写真というものはその時の気持ちの有り様が写っているような気がする。あるいは逆にそのときに見えたもので気持ちの有り様が決まるのか…、まあそんな小難しい理屈はどうでもいい。しかし本来楽しいはずのカメラ散歩の時間にこんな事を考えるようになったという事は、僕も少しは物想う年頃になったのか、あるいは今年の季節の移ろいのように我が人生も初冬の頃に差しかかってきたのか、それは僕にもよくわからない。

 思えば、僕の人生、季節に例えれば初秋の頃の愁いを経て、さあこれから冬が来る前の彩り鮮やかな季節が来るぞと思う矢先に大病を患い、今年の季節の移ろいのように一番楽しみにしていた季節がごっそりと抜け落ちてしまったような気がする。爽やかに澄んだ空気と華やかな彩りに満ちた季節を楽しむ事なく思い出の中でのみ生きていくなんてあまりにも悔しすぎる。幸いにも強力に支えてくれる人もいる。力尽きるまで何度でも立ち上がってやろうじゃないか。そんな事を考えながら歩いた初冬の散歩道だった。

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