『見た目そのまま、やわらか食』は新しい食文化を形成できるか?
「嚥下(えんげ)」という言葉をご存じでしょうか?
ザックリいうと、飲み込むこと。もうちょっと言うと、口の中で咀嚼したご飯を飲みこみやすい大きさに取りまとめ、喉の奥へ飲みこみ、食道から胃へ送り込むこと。
この嚥下機能は、年を取ったり、麻痺などの障がいによって、低下します。もしくは、赤ちゃんも嚥下機能は低いですね。
嚥下機能が低下すると、普通のご飯が食べにくくなります。飲み込めなかったり、誤嚥といって食道ではなく、気道側に食べ物が入ってしまったり。それを防ぐのに、使われるのが「嚥下食」という飲み込みやすい食べ物です。
嚥下食にも色んなレベルがあります。細かく刻んだ食事から、ゼリー状になっているもの。とろみが付いたものなど。
専門的に知りたい方は、【こちら】などが比較的わかりやすいかも。
「嚥下 舌で潰せる」でGoogle画像検索すると、以下のようなものが出てくる。このようなモノをネガティブに言うつもりは全くありませんが、舌で潰そうとすると、どうしてもトロトロにする必要があり、専用の食事が必要になるし、誤嚥しないことを最優先するので、見た目は通常調理した食事とは異なる感じになってしまいます。
そんな問題を解決しようとしている会社があります。『ギフモ(GIFMO)』という会社です。
ギフモが作ったDelisofter(デリソフター)
ブロッコリーも唐揚げもこんな感じに箸で潰せるようになります。
仕組みとしては、圧力鍋に近いもので、2気圧という高圧とスチームの高熱で調理します。税込47,300円とのことです。
調理後に、蒸気が抜ける様子は、蒸気機関車みたいで楽しいです。笑
パナソニック発のベンチャー、かつ、京都に会社を作ったということで、久しぶりにメンバーの方にお会いしてきました!
この会社は、パナソニックの未来の家電に関する新規事業の創出する「Game Changer Catapult」という取組みから生まれたのですが、その中でご自身の経験も踏まえて、嚥下食を問題を解決したいということを考えていた2人の女性メンバーがいらっしゃいました。
確か2016年に、たまたま同じプログラムに参加していた妻から「嚥下に詳しい人を知らないか?」という相談を受けました。
「過去自分がリハビリロボット開発しているときにお世話になった先生で、嚥下に日本トップレベルに詳しい人いるよ~」ということで、一緒に東京の病院のリハビリ部に行きました。とても熱い先生なので、多くのご助言、叱咤激励、そして『「ケア家電」という新しい世界を作りましょう!』という力強い言葉を頂いたのを、今でも覚えている印象的な打合せでした。
会社に訪問させてもらった際に、現在でもその先生と繋がっていて、定期的に熱い助言を頂いているという話を伺い、改めて紹介して良かったなぁと思いました。
新しい食文化
そんなことを思ったのと同時に思ったのが、「見た目そのままで食事を柔らかくする」というのは、新しい文化を創るのではないか??ということでした。
私自身、試食もさせてもらったのですが、嚥下食という概念を知らなければ、新しい食感の食べ物です。
見た目も綺麗で、ユニークな食感を実現できているなと思います。もちろん、高齢者や赤ちゃんなど嚥下機能の低い方が、文字通り目でも楽しみながら、健常者と同じ食事を体験するということも素晴らしい提供価値だと思います。加えて、健常者が食べたとしても、新しい食体験を提供できるという意味では、ユニバーサルデザインに近い存在に感じました。
これまでの嚥下食の概念を超え、「見た目そのままのやわらかフード」という新しいジャンルの概念を、自宅で手軽に実現できるというは面白いですね。
Well-beingのプロフェッショナルである石川善樹さんと話をしているときに面白いこと言われていました。
文化というのは、概念、道具、所作の3つが揃うと成立しやすい
まさに茶道みたいなものが、この3つを体現しているともいます。
「見た目そのままやわらかフード」という概念を、ケア家電という新しい道具とともに実現する。さらには、食事の準備段階では、以下のデリカッターというこだわりの隠し包丁で前処理するという所作(ちょっと言い過ぎかも。笑)を組み合わせることで、新しい食体験を提供可能なレベルにまで高めるという、なかなか面白い取り組みだなと思いました。
最近は、コロナの影響もあり、自宅で料理を作るだけではなく、フードデリバリーで自宅でお店のごはんを食べるということも当たり前になってきつつあります。
何歳になっても思い出のお店の味を自宅でやわらか食として楽しめる時代と言えるのかもしれません。
ギフモさんも含めてたまたま今週は2つほどフードテックと言われる企業を訪問させて頂きました。食というものが「くらし」に与えるインパクトは大きく、ますます大注目の分野だと思いました。
では、また来週〜
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安藤健(@takecando)
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