『G戦場ヘヴンズドア』
お題を見た時から、どうしても挑戦したかった。
私にとっての神マンガ!
『G戦場ヘヴンズドア』(日本橋ヨヲコ/小学館/全3巻)
人気マンガ家の父に反発する町蔵とマンガだけを支えに育ってきた鉄男。天才とも言える鉄男に足りないものを見抜いた町蔵は、原作としてマンガに関わることになる。
そうして足を踏み入れた「表現」の現場は、町蔵が思う以上に苛烈で熱いものだったーー。
青少年たちの挫折と成長、「表現」の現場に立つ大人たちの苦悩と信念、立場は違えど誰もが経験するだろう現実の壁へ立ち向かう人々を描いた群像劇であり、応援歌でもある作品だ。
…と書いてみたものの、実際のところ一般的にどう受け取られるものか、私にはわからないのが正直なところだ。
私がこの作品に出会ったのはマンガ家を目指していた頃である。マンガという世界を舞台にし、マンガ家を目指す主人公たちに激しく共感するのは当然である。マンガが好きだ、という人には深く刺さるのかもしれないが、それ以外の人にはどうなのだろうか。
だが、この作品の持つ熱量は、すべての人間へ届くはずだ。
日本橋ヨヲコ作品はどれも鋭く尖っている。中でも『IKKI』という、「新しいマンガを届ける」ことを目的にした新しい媒体で始まったこの作品は、あまりにも鋭利で、喉元にナイフを突きつけられながら読むような、ヒリヒリとした感覚を齎す最高傑作である。
登場人物の台詞ひとつひとつが、血を吐くような生々しさを持ち、心臓を抉ってゆく。これほど「生きた」作品を、私は知らない。
生きることは楽しいばかりではなく、むしろ苦しいことが多い。この作品はそれらを凝縮し、圧縮し、とんでもない濃度で描いている。ドロドロとした、足掻いても足掻いても抜け出せない苦悩と絶望ーー生すら手放したくなるほどの暗闇、しかしそこに一条の光が差す如く希望が生まれる。
救いようのない世界を描きながら、けして光を失わない、厳しさの中の優しさ。
結果として、爽やかな青春の物語でもある。
この結末に至る過程を、丁寧に描き切ったこの作品は、日本橋ヨヲコの作家性を浮き彫りにした。日本橋ヨヲコ作品には嘘がない。本気の魂の叫びを、マンガという最高の嘘で描き出すのである。
つまんねえ大人になっちまったな、と思っている人にこそ読んでいただきたい作品だ。
私はうつ病を患って長いが、死にたくなる度に読み返す。読むと、「死んでる場合じゃねえな」と思う。何度救われただろうか。
私にとっての神マンガであり、聖書(バイブル)である。
ちなみに、日本橋ヨヲコ作品の世界はすべて繋がっている。例えば、『少女ファイト』のメインキャラクターの一人は、『G戦場ヘヴンズドア』のキャラクターの娘である。
今までの短編を含めた作品キャラクターとの再会を果たせる楽しみがあるので、是非とも過去作も読んでいただきたい。成長したキャラクターがまさかの人生を歩んでいて、驚きと喜びを感じられる粋な計らいだ。
もし、日本橋ヨヲコ作品の何かひとつでも感じるものがあれば、他の作品にも触れてほしい。そこには新しい出会いと、懐かしい面々との再会が待っている。
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