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教#010|中学受験ではハックルベリーにはなれない~「漫画:二月の勝者」を読んで⑤~(たかやんnote)

 先日、吉祥寺のヨドバシに行こうとして、駅ビル(東館)の北口を出て、道路を渡ると、すぐ目の前に、enaの教室があることを、発見しました。が、ドアは閉まっていて、教室は閉鎖されています。新型コロナウィルスの影響で、学習塾も学校と同じように、休校になっているわけです。入り口に、お知らせが何枚か表示されています。読んでみました。それを読むと、enaは、時間割通りに授業を、ネットで配信していることを知りました。enaは、主に高校受験(都立高校中心)のための塾ですが、中学受験コースもあります。どちらも3月4日から新学期は、スタートしている様子です。時間割通り授業を行って、それを配信し、授業終了後、電話やメール、Faxで、質問を受け付けているそうです。問題を解いて、事務室に持って来れば(生徒の登校は禁止しているので、持参するのは保護者です)採点して返却すると、書いてあります。

 塾だからこそ、ネットでの授業配信と云ったことが、即座にできます。公立高校ですと、相当な準備期間と、法的な整備をしないと、不可能です。パソコンのネット環境がない家庭も、多くはないでしょうが、確実に一定数、存在しています。教育の機会を平等に確保するのが原則ですから、ネット環境が整っている家庭の子弟のためだけには、配信できません。最近は、年賀状を出す人が減ったので、印刷機を使わない家庭も、かなり、ある筈です。印刷機がないと、問題&解答を紙ベースで、プリントアウトすることは、できません。ネット環境のない家庭の不利益には、目をつむって、多くのネット環境の整っている家庭の利益のために、即座にできることをする、民間の塾だからこそできることです。

 本来の春休み(3月26日)からリアルの塾を再開すると案内には、書かれていました。3月4日スタートなのに、出鼻をくじかれた形です。このまま、ずるずるとリアルの塾が休校を続けたら、それをやらない他塾に大きく水を開けられてしまいます。学習塾と云うのは熾烈な過当競争の世界です。いったん下り坂に入って、負のスパイラルに陥ってしまうと、たちどころに顧客は離れて行ってしまいます。

 大学受験の場合、たとえばスタディサプリを使って、計画的に自学自習をすると云うことは、本当はできる筈です。自分で計画を立て(plan)、実行し(do)、評価(check)した後、改善する(act)と云ういわゆるPDCAサイクルを回すことは、人間力がある程度ついている高校生には、できてしかるべきです。が、まあできてません。ですから、高いお金を払って、面倒見の良い予備校、塾に丸投げしています。

 中学受験の場合は、保護者が全面的に協力をして、辛くてハードな中学受験を乗り切ります。保護者の協力がなくて、自力で、中学受験をクリアーすることは、まずもって、不可能だと言い切れます。理由は、簡単で、子供は遊びたいんです。ほっとけば遊びます。その遊びを抑制して、勉強するためには、管理が必要です。塾も保護者も子供たちを管理しています。人は、どういう状況にも慣れます。ハックルベリーフィンのような子供だって(そんな子供が、今の日本にいるとは思えませんが)周囲のみんなが、猫もしゃくしも、中学受験をするとなると、筏を作って、荒川を下り、どっかの島を目指すと云ったことは、できないと思います。

 私は、四国の田舎のちっちゃな小学校を卒業しました。ちなみに、筏は作りました。冬の内に竹を切っておいて、半年くらい放置して、乾燥させます(乾燥させないと浮力が落ちます)。竹を紐で結わえ、底に発泡スチロールを貼りつけて、浮力を補強します。その筏で、湾内にあった無人島を目指しました。小さな島ですが、その島には誰もいないと云うことだけで、子供は、充分、わくわくします。学習塾は、私が知る限り、どこにもなかった筈ですが、同級生の女子8人の内、6人は私立の女子校に進学しました。塾はないので、行ってません。多くの母親は、その女子校が旧制の女学校だった頃、通っていた筈です。偏差値と云う概念は、その頃、存在してませんが、さして難しくなくて、普通の当たりまえの学力があって、しつけができている女子だったら、合格した筈です。女子が6人も、私立の女子校に行ったのは、地元の中学校が荒れていたからです。本当にヤバいくらい、荒れていました。多少なりとも、経済的な余裕があれば、地元の中学校は回避すると、子供も親も考えたわけです。勉強ができない女の子は、おそらく、母親が教えていたと思われます。

 中学の入試問題を見てないので、どれくらい難しいのか解りません。たまにクイズ番組で、中学の入試問題が出ます。主に社会ですが、かなり細かいです。塾講師として、4教科、教えることができるようになるためには、それなりの学習期間が必要です。小学校の先生は、一応、全教科、教えています。が、入試問題となると、おそらくまったく別種の難しさです。学校のテストは、満点を取って当たり前、これは中学受験生の場合、多分、常識です。

 方程式を使えば、簡単に解ける問題を、わざわざ、難しく考えて、解いています。塾にお任せしないと、算数は、保護者(お母さん)の手に、負えないと推測しています。社会の単純な用語とかは、保護者と子供とが、問題を出し合って覚えることも可能ですが、記述式で、背景などを踏まえて要点をきっちり書き出すとなると、一定の訓練が必要です。受験のための訓練を受けないと、解けない問題が多い筈です。勉強がハードだとすると、子供に寄り添ってケアするソフトは、保護者が担当し、ハードは塾にお任せと云う役割分担になるんだろうと想像できます。

 保護者と云っても、まあ普通は母親が中心です。母子の絆が、受験勉強の3年間を通して、より一層、深まることになります。基本、これはいいことだと思いますが、ほったらかしにされた、ハックルベリーフィン的な野性的な強さや自律心は、まあ身につかないだろうし、それは、中学進学後の課題ってことに、きっとなりそうです。

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