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Sell a Life That's Life(改題前・人生売買人生)#パルプアドベントカレンダー2024
この小説は、ご覧のイベントの一環でお送りいたします。
男が椅子に座っている。
その手は後ろに回って、腕の付け根と目の上に黒いテープががっちりと巻き付いている。
不自然だったのは、テープの間から流れる涙がそのまま口の側を通り過ぎていくことだった。
その口には、8mmテープが突っ込まれていて、男の身体は時折跳ねるように震えていた。
「保存とは所有することだ」
黒い女だった。
歌舞伎町オーバーボディ
「それじゃあよォ、ワレそん外道を放ってノコノコ帰ってきくさったんか!」
若頭のライ太郎が、ぷに丸に怒りを示すように応接机を蹴りつけると、水晶製の灰皿が浮き上がった。ぷに丸は何も口を挟めず、ただエアポンプの音を小さく響かせながら、俯いて揺らいでいるばかりだ。デザイン的に顔のない彼だが、どうやら反省しているらしかった。
粗製濫造された着ぐるみ達に目をつけた日本政府は、安価な労働力として彼らに魂
グリッチマン(完全版)#パルプアドベントカレンダー2023
この企画は#パルプアドベントカレンダー2023 の提供でお送りします。
叙ンは墓場に住んでいる。
正確には、叙ンは墓場の座標からマイナス数ポイント下に位置している。いつからこうだったのかはわからない。彼はそうあるべしとして作られ、設置された。
この墓場は所謂没データらしい。世界と繋がることなく、さりとて消されることもなく、プログラムの狭間でただ存在することを宿命付けられた叙ンは、
クレーマー・クレーマー
「馬鹿にするなよ貴様! 俺はなあ、五十年も警備員続けてンだ!」
つばを撒き散らしてもお客様。そしてお客様は神様だ。コンビニでタバコの銘柄が分からねえ程度で騒ぐ神様がいるのは参ったが、俺にとっての神は目の前のジジイより店長だ。首にならないように仕事をする。そうしてやり過ごすのが人生だ。
「てめェ! お客様は神様だろーが!! 適当な返事コくんじゃねェ!」
ジジイが唾を飛ばす。それはいい。だが
プラスチックのオブラートに包んで
やってしまった。
とうとう殺してしまった。
いや、アンドロイド同士だから破壊してしまったというのが正しいのだが、MS-1956型は間違いなく私のせいで死んでしまった。
MS-1956型はマックスを名乗っていて、私より形式が二年古いから、データベースに蓄積した経験が多いと自慢してくる──いけすかないという語彙がぴったりの機体だった。
しかしそれはもう過去の話だ。私はアンドロイドであり、いつ
現役ヤクザが教える最高に気持ちいいケジメの付け方
ケジメの前はいつも緊張する。
若頭の内藤はリップクリームを塗り終えて、そのままノックをして組長室に静かに入った。
島根県宍道市を舞台にした、暴力団蜆会と準暴力団出雲連合の抗争は、22世紀初の仁義なき戦いと呼ばれ泥沼化していた。
蜆会は60年の歴史を誇る某広域指定暴力団の二次団体であったが、山陰地方の少子高齢化の波はヤクザの世界さえも襲っていた。
「内藤ォ……ワレェ、ようやくケジメつけにき
侵略活動の軍資金に!即金融資いたします!
「困るんだよねェー、ダークバルメロイさんさァ」
黒くマッシブな鎧姿の男が、いかにも落ち込んでるのを見るのは気分がいい。
銃の代わりに金銭貸借契約書を突きつければ、大抵の連中はうなだれる。
そしておれはそういうのを仕事の生きがいにしている。
宇宙ギャング系大物侵略組織の大幹部・ダークバルメロイがこうなってしまったのにはわけがある。
日本征服を足がかりに地球侵略を企むやつらというのは、いま
24時間耐えきれますか!?
「クソーッ! 航空支援はまだか、イリヤ!」
CIA特別捜査官であるライアンはままならない状況に苛立ちながら叫ぶ。港湾区に広がる倉庫街、その1ブロックがとあるテロリストによって占拠されたという報告を受けてからまだ四十五分だ。
『大丈夫よ、ライアン。アルファチームが急行しているわ。到着次第、ヘリからの火力支援をすぐ──』
「グウーッ!!」
ライアンは突如腹を抑え、苦しみ出す! 無理もないこ
今日からエスコバル!
その木が植わっていたのは、どうってことない空き地の一角だった。
僕は不動産会社の一社員。長野県熊沢市。一地方都市の建物と建物の間、細い私道を通った先の、だだっ広い空き地。
不動産の常識として、通りに面してない土地というのは、大概価値がないものとして扱われる。地方都市の郊外ともなると、不動産の所有者が誰かわからないなんてことはザラで、それが建物まで及ぶと解体できない廃墟の出来上がりだ。この土地は
六人の孔明、一人は熊猫。
その日、蜀の丞相・諸葛亮孔明は、自分の寝所に見慣れぬ女が腰掛けていることに気づいた。
「誰ですか、あなたは」
孔明はその場に立ち止まり、冷静に言った。もう十数年より前になったが、女を使った連環刑なる企みによって一人の暴君が死ぬことになったことを、彼はよく覚えていた。不用意に近づくのは危険だ。
「わたしは、あなたね」
女は妙にキンキンする甲高い声でそう言った。仙人か妖怪の類であろうか。
エタり小説よろず請負! 短編仕立人 勅使河原まゆり『異世界転生ファンタジー編』
「さあ、勇者ケイよ! 魔王を倒し、この世に平和をもたらすのだ!」
王から下賜された言葉に、俺はなんだか誇らしい気持ちになった。トラックに撥ねられてよくわからない異世界に送り込まれたと知った時はどうしたものかと思ったが、世の中捨てる神あれば拾う神ありだ。
「伝令ーッ! 火急の伝令にございます!」
王宮の間に、泥と汗にまみれた兵士が飛び込んできたのは、その次の瞬間だった。王は訝しげにその兵士を見た