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【FX】PIVOT(ピボット)全解説。チャートにおける「コンセンサス」への新たな視点。

ツールはその作られた目的と

その作られる過程について

深く知り、理解する事が

そのツールの正しい評価へとつながる

今回はPIVOTの作られた経緯・目的

計算式の意味や勘違いされている点

そして根本的な問題点に言及しつつ

コンセンサスへの新たな視点へ

◆ はじめに ◆

多くのトレーダーはインジケーターやラインツールに関してその正しい利用方法を知らずに利用している。

さらに多くのトレーダーは利用するインジケーターやラインツールが誰がどのような目的と経緯をもって作ったのかを知らない。

さらに多くのトレーダーは利用するインジケーターやラインツールの計算式やその意味について知らない。

そして残った極少数の賢明なトレーダーはそれらを理解した上で計算式やパラメーター等に疑問を投げかけ言及し再現性を担保し、はじめて本当の「検証作業」を実行出来る事を知っている。

パラメーターやタイムフレームをいじくりまわしてシグナルを拾う事は検証ではない。扱う理論やツールに深く言及するために今回はピボットポイント(PIVOTPOINT)の完全解説を通じて読者の皆さんを「賢明なトレーダー」の側へ引き込む機会と出来れば幸いです。

◆ ピボット(Pivot)とは 


~ 概要 ~

ピボットポイントは別名「リアクション・トレンド・システム」と呼ばれるトレーダーが市場の転換点を予測し、売買のタイミングを判断するために考案された罫線ツールを指す。

特に日中取引(インターデイ・トレーディング)で多く使われ、短期の市場のサポートやレジスタンス(抵抗)レベルを特定するのに利用される。

ピボットポイントは、前日の高値・安値・終値を基に計算され当日のサポートとレジスタンスのレベルを示すことにより相場が反転する可能性のある重要な価格帯を示すとされる。

~ 考案者 ~

PIVOTの考案者は一般的にRSIやADX、パラボリックSARの開発者として有名なJ・ウェルズ・ワイルダー(J. Welles Wilder)と紹介される事が多いがこれは間違いです。

ピボットポイントは、20世紀初頭から株式市場のフロアトレーダー(特に場立ちトレーダー)によって使用されていた非常に古典的な手法であり、当時のトレーダーたちは日中の値動きを予測するために、前日の高値、安値、終値を基にして、その日の重要な価格帯(サポートやレジスタンス)を見積もるためのシンプルな指標としてピボットポイントを利用していました。

このため、ピボットポイントの起源は場立ちの伝統的な経験則に基づくものだと考えるべきでしょう。

場立ちトレーダーたちは、短期的な市場の価格変動を素早く予測し、売買判断を行う必要があったがその過程でピボットポイントのようなシンプルな計算を通じて、重要な価格レベルを特定しようとしました。このため、ピボットポイントは実務的なトレードツールと解釈され発展し、広く使われるようになったとされています。

~ J・ウェルズ・ワイルダーとの関係 ~

ではなぜJ・ウェルズ・ワイルダーが考案者と言われる事が多いのか?正直な所、正確な理由はわかりませんがワイルダーの代表的な著作で、1978年に発表された 『New Concepts in Technical Trading Systems』(『テクニカル取引システムの新しい概念』は非常に多くの人々の関心を集め彼の人気を大きく引き上げました。以下の指標は、この本で紹介されたものです。

・相対力指数(RSI: Relative Strength Index)

・平均方向性指数(ADX: Average Directional Index)

・パラボリックSAR(Parabolic Stop and Reverse)

・ボラティリティ指標としてのATR(Average True Range)

・DMI(Directional Movement Index)

ワイルダーは、単に新しい指標を開発するだけでなく、それらの実用性と計算方法を分かりやすく説明し、多くのトレーダーが使えるようにしました。彼の指標は、今日のほとんどのトレーディングプラットフォームに標準搭載されており、個人投資家からプロのファンドマネージャーまで幅広く利用されています。

ワイルダーの功績の一つは、彼がこれらの指標を単純かつ直感的に使える形にまとめたことです。ワイルダーがpivotについて話す事もあったでしょうが、もしかしたらそれらの功績が強いバイアスを生み彼を考案者として誤解させてしまったのかもしれません。

~ 使用目的と背景 ~

ピボットポイントの主な目的は以下の三つ

  • サポートとレジスタンスの特定: 市場がサポートやレジスタンスのレベルで反転する可能性を探るため、トレーダーはこれらの価格帯を重要な指標としているという事を前提にエントリーやエグジットのポイントが見つけやすくなると考えられている。


  • 市場の転換点の予測: ピボットポイント自体が、短期的な価格の方向を示す傾向があるとされ、市場が反転する可能性のあるレベルとして使用されます。特に、価格がピボットポイントを上抜けると強気、下抜けると弱気とみなされます。


  • リスク管理: ピボットポイントやサポート・レジスタンスレベルに基づいて、ストップロスやターゲット価格を設定に利用する事も目的とされています。

厳密な考案者が不明である古典的ツールであるため、実際にはどのような目的と意図をもって作成されたのか正確な所はわかりませんが一般的な認識としては以上の三点が挙げられます。

ピボットポイントが作られた背景には、テクニカル分析の進化と日中取引に対するニーズの高まりがあったと考えられます。特に1980年頃のワイルダーの時代には、トレーダーたちは複雑な数学的モデルやアルゴリズムに頼ることなく、シンプルで実用的な方法を求めていました。

ピボットポイントの計算は非常にシンプルであり、トレーダーが手早くサポートやレジスタンスを把握し、瞬時に意思決定できるように設計されています。そういった事もあり普及していったと考えられます。

◆ PIVOTの計算式と描写方法 ◆

今回は計算式の紹介という事ももちろんありますが、そうでない場合にもエクセルや電卓等を用いてご自身で計算される事をオススメします。自動描写されるindicatorも無論複数ありますが個人的には研究や考察のためにも自身でデータに触れ、計算する過程を経た方が良いと考えます。それでは見て行きましょう。

0.計算元

同じ計算元を使って一緒に描写して行きましょう。今回は2024年10月16日のGOLDチャートを利用していきます。高値:2685.24、安値:2658.59、終値:2673.59となります。チャート画像は15分足に日足のマルチキャンドルを表示しています。

1.計算式

ピボットポイントの計算には、基本的に次の計算式を使用します。これらの計算式は、基本のピボットポイント(PP)を中心に、サポート(S)とレジスタンス(R)レベルを求めます。計算元は前日の高値・安値・終値を使用します。

チャートへPPを追加
R1・S1を出力
R2・S2を出力
R3・S3を出力

◆ 計算式の意味と根拠 ◆

ピボットポイント(PP)

ピボットポイントは、「高値・安値・終値」の単純平均であり、マーケットがバランスを取る中心点を表します。過去のデータ(特に前日の価格データ)から現在の市場の傾向や方向性を判断するための基本値として考えられています。

  • 意味: 市場が次の取引日でどちらの方向に動くかを予測する基準となる。このポイントより上に価格が動けば強気相場、下に動けば弱気相場と判断する。

  • 根拠: 前日の高値、安値、終値は、その日の市場参加者の感情を表す重要なデータと考える。その3つのデータを平均化することで、市場の中間点、つまり均衡点が計算され、次の取引日での動きを予測する基礎となると考える。

サポートとレジスタンス

サポートとレジスタンスは、PPから上下に価格の振れ幅(高値と安値の差)を加減することで計算されます。

第一レベル(R1, S1):最も近いサポート・レジスタンスのレベルです。価格がここに到達した際には、反発するか、突破するかで次のトレンドが決まることが多いと考えられている。

第二レベル(R2, S2):さらに重要なトレンドの転換点として考えられます。第一レベルを突破した場合、次の到達点として意識されると考えられている。

第三レベル(R3, S3):価格が急変動した場合の最終的な反発点や到達点を示しすとされ通常、これらは極端な市場条件でのみ達成されると考えられている。

◆ 根 拠 ◆

ピボットポイントとそのサポート・レジスタンスは、前日の価格範囲(高値と安値の差)を基にして構築されているため、市場の過去のボラティリティを反映していると考えられています。これにより、価格が過去のボラティリティの範囲内で反発する可能性や、範囲を超えてトレンドが継続する可能性を予測しようと試みている訳です。

以上が意味と根拠となります。しかしここで紹介しているのはPIVOTの計算式に対する一般的解釈であり絶対的な解釈ではありません。

先述した通り、考案者が不明であり明確なコンセプトや目的・意図を確認しようがありません。ですのでここで記載しているのは恐らくこういった意味であろうという意見の平均化された物だと捉えた方がいいでしょう。

◆ PIVOTの利点と問題点 ◆

〇 利点について 〇

PIVOTの最も評価されるべき点はその再現性にあります。最小単位に対する厳密な観測基準や出力ルールの存在しない致命的欠陥を抱えるダウ理論やエリオット波動論とは違い、PIVOTの場合にはそれが備わっています。

利用するタイムフレームは日足であり、利用する情報は高値・安値・終値の三つの価格情報であり、価格を通す計算式は決まっている。

プラットフォームが同じであり提供される価格情報が同じである以上、描写に関しては必ず同じ結果を出力する事が出来る。

次に評価方法における再現性や一貫性についても考えて見よう。これはPIVOTの利用目的を整理する事で理解する事が出来る。要約したPIVOTの主な目的は以下の三つ。

①サポートとレジスタンスの特定: 市場がサポートやレジスタンスのレベルで反転する可能性を探るため。

②市場の転換点の予測: 市場が反転する可能性のあるレベルとして使用。、価格がピボットポイントを上抜けると強気、下抜けると弱気とみなす。

②リスク管理: ピボットポイントやサポート・レジスタンスレベルに基づいてストップロスやターゲット価格を設定に利用。

つまり基本的に環境認識がまず先に有り、その上でエントリー対象・決済対象をその限定された値の範囲(詳しくは過去の投稿を)の中においてPIVOTで条件を絞る。そういった使い方がベースになるはずであり、PIVOTが持つ三つの目的を考えると単体で利用する事は適切とは言えません。

よってPIVOT有りきで検証する事は困難である。仮にラインタッチで逆張り、抜けたらドテン、損切幅は直近X日の統計データーを基準に、というような事を行なえば一応の再現性と一貫性は担保されたデータの採取も可能ではあるでしょう。しかしそれを調べるとなった場合、結果として次に紹介するPIVOTの欠点をすぐに知る事になります。

✕ PIVOTの欠点・問題点 ✕

(1)

PIVOTの欠点からは大きく分けて二つあります。そのうち一つからはとても重要な視点を得る事が出来ます。

まず一つ目。PIVOTの概要・誕生経緯についてはした通り、このツールは特に考案者がいる訳ではなくどのような根拠によってその計算元や計算式を組み立てられたのか不明であるという事。簡単に言えば根拠が不在なのです。

「オリジナル」が存在しないため、主要な用途や計算式について「そういうい物」、という認識で利用されて来たにすぎません。これは非常に大きな問題であると考える。なぜなら検証や考察を行なおうとしても、そもそもの用途や計算式・その根拠や意味について言及しようがないからです。

よくわからない物をよくわからないまま利用する。なぜなら「みんなが利用しているから」「常識」「そういう物だから」。これがまかり通ってしまうのが相場の9割の人々であり、9割の人々は相場の多数派であり「大衆」を指します。そして相場の多数派である「大衆」とは結果を得る事が出来ない人たちであるという事を忘れてはいけません。

(2)

~ コンセンサスを考える ~

そして次に紹介する欠点については是非一度よく考えて頂きたい。個人的には非常に重要であると考える。まず先程述べたPIVOTの利点を思い出し欲しい。それはPIVOTには完全な再現性がある、という点。

尚且つPIVOTの歴史は古く長い期間の中で多くのトレーダー達に利用されて来た。という事は他の理論やツールに比べての非常に多くのコンセンサスを得やすい前提が整っているツールだと言えます。

通常、理論やツールはコンセンサス=合意を多く得ている方が機能するはずと考えられる。例えばチャートに波を見る時、世界で一人しか見ていない波より、世界の半数が同じ波を見ている場合の方が一般的なイメージとしては機能すると考えるでしょう。

が、しかしPIVOTがその恩恵を受けているとは考え難い。なぜなら検証数をいくら増やしもこのラインに顕著な傾きは確認出来ない。つまりPIVOTの欠点の2つ目は単純に、

大した精度を有していないという事

不確かな前提の上に構築されたダウ理論やエリオット波動論と比べ、多くのコンセンサスを得られる充分な前提を備えたPIVOTがなぜ強い優位性を持たないのか?認知されるまでの充分な時間が経過しており、その計算式は非常にシンプルで入力変数の選定や調整は不要である。で、あるのになぜか?

これはつまりチャート上にとって「参加者」のコンセンサスは重要ではないという可能性を示している。

別の物を例に話そう。例えば酒田五法を思い浮かべて欲しい。酒田五法とはローソクの足の「形」を分類し、そこに市場心理を見てシグナルに転化し利用しようというアプローチである。そのいくつかのシグナルは世界的にも人気で「形」を検出するindicatorも出回っている。

例えば時代背景を考え、その観測対象が「日足」だと断定し、検証を行ったとする。とするとやはり検証数を増やせば増やす程、そこに顕著な傾きが表れる事は無いとすぐに知る事が出来る。

タイムフレームを一つに固定し、「形」でアプローチを取る。再現性は高いはずである。コンセンサスは得やす部類にあるはずだ。しかしその恩恵はやはり無い。では次は少しマクロな視点に移行して考えて見ましょう。

世界中でトレードは行われている。それぞれの国のそれぞれの人々はそれぞれのタイムゾーンの中で生活している。

取引しているペアや銘柄はそれぞれであり、見ているプラットフォームもそれぞれであり、見ている時間足もそれぞれであり、取引時間もそれぞれに行われている。

ここで客観的視点と論理的思考を持って考えて頂きたい。ロウソク足の形に市場心理が偏った形で現れる事等あるだろうか?

少なくとも、ロウソク足に心理を見る酒田五法にエッジが無い事は確かだ。それはつまり心理が表面化しコンセンサスを得る事は可能性として非常に低い事を示唆する根拠の一つと言えるだろう。

そしてこれらのアプローチは全て「参加者側」の視点から考えられた理論や手法である。しかしそれらは「チャート側」からしたら全く関係の無い話だ。事実に対して私はこう思うからこうなんだ!と言った所で事実は変わらない。物理法則を否定してファンタジーな世界に見られる法則を現実世界に当てはめても無論、私達の手から魔法が繰り出される事は無い。

参加者サイドの主観的アプローチでは無理があり、コンセンサスは傾きとして表面化しない。PIVOTの欠点はこの事について考えるキッカケとなるが、同じような事はこの相場の世界にある多くの「常識」を通していくらでも容易に確認する事できるでしょう。

(3)

ではチャート側にとって意味のある事・物とは何だろうか?これは過去の記事の中でも何度か触れているので良ければ探してみて下さい。ただ少し触れるのであればチャートに限らず、その世界で使える物はその世界に存在する物だけです。当たり前な事ですがこれは非常に重要な視点です。

例えばチャートを見た時、あなたの目には何が映るでしょうか?チャート自体の構造はどうでしょうか?どのような情報で構成されているでしょうか?観測出来ない情報は単純に存在しない情報です。

存在しない情報は存在しない訳ですから使えません。構造、構成要素、その分類、最小単位。そういった情報をまずは列挙し、初めてそれらを元に現実的な仮説を組み立てる事が出来る。

◆ 最後に ◆

チャート上で利用出来るトレードツールは星の数程有ると言っていいだろう。どのプラットフォームを利用するにしろ、20年前と比べれば比較にならない程充実している。

しかし容易に利用できるが故に、そのツールそれ自体に言及するトレーダーは恐らく非常に少ないであろうと思います。なぜ作られたのか、どう作られたのか、その計算式と、その計算式の意味は何か、等について何も知らない。

知らなければ理解出来ず、理解出来なければ言及できず評価も出来ない。いくらパラメーターをこねくりまわしても意味はない。

一番望ましい事、それが理論にせよツールにせよゼロから自分で作る事だと私は考えます。疑問や矛盾を抱える1に対して2を作るようなアプローチより、仮説・目的・定義・ルールそのすべてに言及出来るゼロ、あなた自らがそのゼロから1を構築する事が望ましいと私は思います。そして私はこのケースでした。

その場合あなたは最初に立てる仮説についても、仮説立証のために立てた道筋についても、そこに用いる手段やアプローチ、そしてその根拠や意図についても全て明確に把握し説明する事が出来る。

プロセスのその全てに理解を置けるならそこにある矛盾や問題点にも言及し易くエラーを拾いやすい。そしてそのエラーにも対応し易い。私は自分でゼロから理論を生み出す道を選んだ事を非常に幸運な選択だったと考えています。

人によってはゼロから何かを作る作業が苦手だという方、自信が無いという方はもちろんいるでしょう。人には時間が限られている。全方向には時間は避けない。その場合、誰かに指導を仰ぐのもいいでしょう。

しかしその場合、特に情報選択の際にはその発信者や指導者がどこまで自身の理論や手法構築に携わり、どこまで言及出来るのかについて考えるべきだと思います。その人の主張や言動における一貫性をシステムやツールのコンセプトとよく照らし合わせた上で選択する事を心掛けましょう。本日は以上となります。最後までお読み頂きありがとうございました。

それではまた。高 山

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