多裂筋(Multifidus)
背骨に広く付着する多裂筋は腰痛との関連が多く報告されていますが、
実際に触診やトレーニングを指導できますか?
実は体幹の背面に広く付着している多裂筋。
少しでも不安があるという方はぜひ一緒に整理していきましょう!
多裂筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:部位に応じて頚・胸・腰多裂筋に分かれる。
仙骨、仙腸靱帯、腰椎乳頭突起、胸椎横突起、頸椎関節突起
停止:第5腰椎から第2頸椎の隣接する(2~4椎骨を飛び越える)椎体の棘突起
支配神経:脊髄神経後枝
作用:脊柱の後屈、わずかの回旋
(基礎運動学第6版)
起始:半棘筋に覆われ、かつこれよりも強く傾斜し、仙骨後面、全腰椎の乳頭突起、全胸椎の横突起、第4~5頸椎までの関節突起
停止:腰椎以上、軸椎までの棘突起につく。筋束は2~4個の椎骨を跳び越す
支配神経:脊髄神経後枝の内側枝
作用:片側が働けば脊柱をその側にまげ、対側に回す。両側が働けばこれを後ろに反らせる。
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:仙骨の後面、脊柱起立筋の筋膜、上後腸骨棘、と仙腸靱帯、腰椎の乳頭突起
停止:表層は3~4上位の椎骨に、中間層は2~3上位の椎骨に、深層では下方の付着部直上の椎骨に付着する。
支配神経:脊髄神経後枝
作用:体幹伸展
(オーチスのキネシオロジー第2版)
仙骨部のみが焦点にされがちですが、実は頚部まで続く長い筋です。
脊柱起立筋の多くが骨盤から肋骨などに付着するため、
非常に長いモーメントアームを有しているのに対し、
多裂筋は2~4個しか椎骨をまたぎません。
それが多裂筋の収縮が脊柱の安定性に関与する理由の1つになります。
筋機能
多裂筋の主な作用は脊柱の伸展です。
(同時に非常に小さな回旋・側屈トルクが産生されることも証明されています)
また、筋の走行が脊柱の圧縮軸に対して水平に近いため、
応力が集中している関節の補助的な役割を持つと推察されています。
また、腹圧の観点から考えると、腹腔の後ろの壁を作っているのが多裂筋です。
(前方と側方が腹横筋、上方が横隔膜、下方が骨盤底筋)
腹腔を囲む筋群の共同収縮によって腹圧は高まるため、多裂筋の等尺性収縮は体幹の安定化においても重要な役割を果たします。
また、慢性腰痛患者の多裂筋が脂肪組織へ変性しているという報告もあり、
腰痛患者においては多裂筋の収縮が起こらなくなっていると考えられています。(腰痛が先か、筋の問題が先かは不明ですが)
有名なトレーニングとして、四つ這いで片手片脚を上げる「バードドック」というトレーニングがあります。
このトレーニングで大事なことは、骨盤と背骨を一直線にキープしたままで行うことです。
多くの方が背中が丸まったり、逆に反りすぎたりしています。
そのやり方を続けていると、逆に腰痛を発生させたり悪化させてしまう危険がありますので、注意してください。
難しい方はまずは片手だけ、片脚だけなどにして、鏡や誰かに動画を撮ってもらうなどして、実際に自分がやっているところを見ながらやってみましょう。
思っているよりも骨盤や背骨が動いてしまっている方が多いはず。
患者さんや選手に指導するときも視覚的なフィードバックを用いて、
自分で修正していくように促すことが重要です。
多裂筋の周辺組織
多裂筋の周辺は主に最長筋などの脊柱起立筋が表層を覆っています。
そのため、立位で腰をそらすなどの大きな運動では脊柱起立筋が優位に働いてしまい、もともと収縮ができない場合には単独で収縮させるのは難しいです。
さらには仙腸関節や仙腸靱帯にも付着を持ち、
仙腸関節の運動にも関与していると考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
多裂筋は単独で収縮を促すことが最初は必要な場合もありますが、
基本的には腹圧を高める目的で共同収縮の1つとして捉えていくことが重要です。
四つ這いやパワーポジションで腰が丸まりやすい選手や患者さんはぜひチェックしてみてくださいね!
それではまた来週!
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