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書評『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』
オススメ度:★★★★
【本書の概要】
網羅思考とは対となる仮設思考について、東大卒でBCGコンサルタントの内田氏によって書かれた本著。
コンサルタントの世界で仮説とは、「まだ証明はしていないが、最も答えに近いと思われる答え」のこと。
一見難解そうだが、平易な文章で書かれており大変読みやすく、私のようにコンサルタント以外のビジネスパーソンにもオススメ。
下記本書の具体的な内容に関して少し長めに言及する。
一般に企業やビジネスマンはできるだけたくさんの情報を集めてから、意思決定しようとする傾向が強い。
経営陣から社員まで大半が情報コレクター(網羅思考)になっている。
しかし、意思決定に使える時間には限りがあり、完璧な答えが出るまで意思決定を先送りしたくても、相手は待ってはくれない。
迅速な意思決定のためには、今ある選択肢をいかに絞り込むかという視点で情報収集すべきである。
仮説思考を使えば、手元にあるわずかな情報だけで、最初にストーリーの全体構成を創ることができる。
例えば棋士羽生は、一瞬で答えを絞り込む。1つの局面について、80通りくらいの指し手があるが、その80を1つ2つとつぶさに検証するのではなく、まず大部分を捨ててしまう。
80の内、77,78については、これまでの経験から、考える必要がないと瞬時に判断し、そして「これが良さそうだ」と思える2、3手に候補手を絞り込む。
羽生は「直感の7割は正しい」とも言っている。
直感は、これまでの対局の経験の積み重ねから「こういうケースの場合はこう対応したほうがいい」という無意識の流れに沿って浮かび上がるもの。
そして仮説思考では証拠が不十分でも、問題に対する解決策や戦略まで踏み込んで、全体のストーリーを作ってしまう。
そうすると、ごく一部の証拠は揃っているけれども、大半は証拠がない状態になり、そこから証拠集めを開始することになる。
その場合には、自分が作ったストーリー、つまり仮説を検証するために必要な証拠だけを集めればいいので、無駄な分析や情報収集の必要がなくなり、非常に効率が良くなる。
「いろいろな可能性が考えられる段階で、大胆に1つのストーリーをつくり上げたりしたら、重大なことを見逃し、間違ったストーリーを作ってしまうのではないか」と心配する人がいる。
だが、それは杞憂だ。
そのような場合には、ストーリーの証拠集めをした段階で、仮説を肯定する証拠がなかなか集まらない。
そして必然的に自分のつくったストーリーが間違いであることにすぐ気付き、初期段階であることから、余裕をもって軌道修正ができる。
【自分が付箋をつけた箇所】
・仮説思考とは物事を答えから考えること
網羅思考では時間的制約がある為、あらかじめ答えを絞り込むこと、仮説を立てることが重要
・意思決定をする際は今既にある選択肢を狭めてくれる情報だけが役立つ
・仮説思考とは効率的に不要な問題や役に立たない解決策を消去するプロセス
・ディスカッションで相手から答えを引き出したいなら、必ず自分なりに仮説を立てておき、それを先にぶつけなくてはならない
・仮説思考をトレーニングする方法は、日頃から「So What?」(だから何?)と考え続けることと「なぜ?」を繰り返すこと