
変化を語れる企業が勝つ。AI時代の新卒採用で“選ばれる会社”になるための伝え方とは?(新卒採用の教科書 #3)
現在、都内の採用・組織コンサルティングファームにてコンサルタントをしている奈良高志です。本記事では、中小ベンチャー企業の新卒採用活動において非常に大事な「自社の伝え方(見せ方・表現の仕方)」がテーマです。多くの企業様が自社の表現の仕方・見せ方で悩まれている様子を目にしてきました。また、これからは時代の変化の中で「AI」などのテーマも避けては通れません。これらの流れの中で、自社をどう伝えていくべきか、それが本記事のテーマになります。このテーマについて、これまで社員数数万名のグローバル外資企業の採用戦略策定から、社員数10名未満の地方中小企業の採用伴走支援まで、50社超の採用プロジェクトを歴任してきた私なりの視点から、AI時代の変化を踏まえながら、自社をどのように候補者に伝えていくとよいか、個人的な見解・考えをシェアできればと思います。(個人的な考え・意見になるので、ぜひ別のご意見や観点あれば教えていただき、学び合えるとうれしいです!)
さて、今回、この記事を書こうと思った背景は3つあります。
1. 昨今の新卒採用市場の大きな変化の中で、従来の考え方や固定概念に囚われていることはリスクであり、過去の「当たり前」を捨てる勇気を持つことが大事だと感じているため。(今回だと、まさにこれまでと異なる発想から自社を再定義し、候補者に伝えていく必要があるなと感じています。)
2. 具体的なアクションの伴わない指針は机上の空論になりかねないため、一社でも多くの企業の採用活動が具体的なアクションや変化を通じてよくなり、学生と企業の双方がWIN-WINになれる採用活動を実現してほしいと思っているため。
3. わたしの志が「情報と機会の格差をなくし、”最高の命の使い方”と”人生への決断”を日本中に広める🔥🔥🔥」(突然の絵文字w)というものであり、学生の出口であり社会人の入り口となる採用活動を本質的かつ効果的な活動にすることが、自分の志の実現にも通じているため。
また、本記事は具体的な内容にも触れつつ、あくまで指針となるものを示しています。そのため、ぜひこれらの指針をベースに、みなさまの会社に眠る魅力や強みを掛け合わせ、変化の激しい新卒採用市場において自社ならではの採用活動を確立していただく一助になれば幸いです。
本記事は、主には中小ベンチャー企業の
1)経営層の方(経営者/CXO)
2)人事担当者の方(人事部/採用責任者/リクルーター)
を想定読者に執筆しております。
また、こちらの記事は「無料記事」としています。その理由は、先ほどあげた記事を執筆した背景にある通り、一社でも多くの企業と学生の双方がWIN-WINになれる採用活動を実現してほしいという想いからです。お読みいただき価値を感じられた場合は、ぜひ「スキ❤️」や「チップで応援する」、Xでの拡散などでリアクションや応援をしていただけますと幸いです!
それでは、レッツゴー!
「n=1の極めて個人的な物語」を語ろう
まず、採用活動を行っていく上では、会社として次の3つの問いに答えられる必要があります。それが・・・
「これからの時代に、なぜこの会社が存在する必要があるのか?」
「これからの時代の変化の中で、自社が何を目指しており、何を実現したいのか?」
「そして、候補者はなぜこの会社に入る必要があるのか?」
採用活動での伝え方を考える前に、そもそも経営陣から採用チームまで、一人一人がこれらの根源的な問いにアンサーできる必要があります。なぜなら、採用活動とは候補者の未来の命を自社に投資いただく活動だからです。何物にも代えがたい相手の命を自社に使っていただく選択を促すわけですから、これらの問いに答えられないことは極めて不誠実であるとも言えますし、その状態では熱を込めて相手にメッセージを伝え、候補者を自社に惹きつけていくことは非常に難しいと言えます。(少し言葉が強いかもしれませんがご容赦いただければ幸いです。)
また、ありきたりの「持続可能な社会を〜」とか、「社会に貢献するために〜」みたいなものは(ちょっと強い表現ですが)誰も求めていないとさえ言えます。大事なことは「そこに気持ちや想いが込められているか?」という一点です。ですから、伝え方という「HOW(手段)」を考える前に、「BEING(自社の状態・在り方)」をしっかり問うてみましょう。
そして、これらの問いへのアンサーは、極めて個人的で身勝手かもしれないが、自分たちだけは本気でそれらを信じている「世界をこうしたい」という想いや熱狂からはじまるものなのです。そして、人はそんな想いや熱狂に惹き込まれていきます。
つまり、他の会社や他の人たちでは絶対に語ることができない、自分たちだけの「n=1」の物語を語っていくことが必要であり、これは一般論ではなく、「n=1」の超個人的で恣意的で私的な自分だけの物語なのです。
大卒の有効求人倍率も高まってきており、候補者の方が選択肢が多い時代。だからこそ、候補者個人が心から共感し、熱狂でき、自分事にできる物語を一人一人が選択することが就職活動になっていく時代になると思っています。ここには一定の合理性を超えた、ある種の会社や組織というマイクロ宗教のようなものがあり、それらに対する没入感や熱狂が存在していく世界線が就職活動になっていくと個人的には考えています。
(余談)
話は逸れますが…最近は宗教の若者離れが謳われています。そして、その宗教の代わりになっているのがまさにベンチャーやスタートアップ企業など、強烈な想いを持った集団です。すでにこの動きは肌感覚的にもじわじわ動き始めてきており、今後はある種の宗教性を持った会社への求心力が採用活動においても高まっていくのではないかと思います。
本題に戻すと…そして、これらをまずは会社の経営者が率先して語っていく必要があります。経営者が最も過去から現在、そして未来までを知り、捉え、イメージし、当事者として熱狂しているからです。ですから、しっかりと経営者が候補者に対して語るパートを設け、その中では「n=1」の世界観を熱量をもってアツく語りかけていく必要があるのです。プレゼンの上手さは究極あまり関係ありません。熱があれば、人の心は動きます。ここの熱を候補者に語り掛けられるか、語り掛けられないか。ここが採用活動の中長期的な持続性に大きく関わっていきますし、特に新卒の採用活動は毎年の活動が「資産」としてマーケットに蓄積していきます。ですから、今のウチからしっかりと自社の世界観をマーケットに浸透させていけるかが大事になるのです。
「AIに生み出せないもの」が自社の付加価値であることを語ろう
2つ目のテーマが「AIに生み出せないもの」というテーマです。
AIが生み出せないものを考えると、例えば「時間」「物語・プロセス」「体験・記憶」「関係性」「人との繋がり」などいろいろあります。「時間」は増やせないし、「物語・プロセス」や思い出なども作れないし、「体験・記憶」も同様にAIが生み出せないものになります。そして、人と人との「関係性」「人との繋がり」も生み出せないので、たとえば「あの人にお願いしたい」みたいなものは人間が生み出せる付加価値として残っていくはずです。なので、大前提はビジネスの中にこれらが埋め込まれているかが大事であり、これらがないビジネスは中長期では淘汰されていく可能性が高い(と個人的には思っている)ので、採用活動の前に自社のビジネスモデルや経営戦略の見直しからスタートする必要があると思います。
では、これらの「AIに生み出せないもの」をいかに使って候補者に伝えていくとよいのか?
わかりやすいのは「事業」に埋め込んで伝えていくことです。簡単にたとえるなら、「AIによって~な時代になっていくので~が求められていきます。なので、我々のビジネスはこれからますます社会から求められていくのです。」といった具合です。特に社会経験がない新卒の採用においては、いかに考え方や世界の見え方を広げてあげる啓蒙活動ができるかが大事になります。ですから、事業に埋め込んで表現していくのは候補者にも伝わりやすく、イメージも持ってもらいやすいと言えます。
ただ、実は最後の最後に決め手になったりするのは「組織」の部分です。「事業」はAIによりコモディティ化していく可能性があります。言い換えると、どの会社も出すアウトプットは大して変わらなくなってくるということです。しかし、「組織」だけは他社が再現しづらいものであり、まさにコモディティ化しづらい部分であると言えます。つまり、「そして、候補者はなぜこの会社に入る必要があるのか?」という冒頭での問いに通じますが、まさにどの会社も同じような仕事になっていく中で、最後の最後に選ぶ決め手として出てくるのが「組織」になっていく可能性があるということなのです。
ですから、「組織」にもこれらの「AIに生み出せないもの」をいかに埋め込み、求人やプレゼンでの訴求はもちろんのこと、さらには選考体験の中で五感を通じて感じてもらうことが大事になってきます。
極論ですが、事業について共感が作れなかったとしても、最終的に「〇〇社がどんな事業をするにしても、自分はこの組織で働き続けたい」と感じてもらえさえすれば採用はできます。むしろ、事業サイドはAIなどの影響を受けて非常に変化の激しい時代になっていくと思います。そんな中で、「〇〇社には~の仕事をしたくて入りました」という入社動機は、むしろ離職リスクの高い動機とすら言えるかもしれませ。入社後のミスマッチや離職リスクも最小化する意味でも、しっかりと採用段階から「組織」への共感度を高め、組織の魅力を伝える際にも「AIに生み出せないもの」がいかに組織の魅力として散りばめられているのかを意識的に伝えていくと良いのです。
「答えがないものを正解に変えていく」「そもそもの問いを立てる」ことの価値を語ろう
AIは答えを見つけるのが得意です。そして、これからの時代は答えを見つけるプロセスは、むしろ思いっきりAIに任せた方が高速回転でバリューを生み出せると言えます。また、さらに「AI」の次は「AGI」、さらには「ASI」というフェーズがくるとさえ言われています。ですから、僕もやっているような戦略立案などの思考系の仕事も、今後はAGI、ASIが担っていく時代になるとさえ言えます。単純な「勉強⇒学習⇒応用⇒アウトプット」というプロセスはどんどん代替されていくのではないでしょうか。

ただ、ポジティブに考えると人間が単純な知的労働から解放されるということでもあると捉えると、むしろ人が本質的に考えるべき問いや、本質的に解決すべきテーマに集中できるとも言えるはずです。(もしこんな世界になったとしたら、さらに仕事はエキサイティングなものになっていくでしょうね!)
ですから、これからは「本質的に考えるべき問いを立てること」「答えのない解決すべき問題を、無理を押し通してでも正解に変えていくこと」そして、「正解を作るための新たな方程式づくり」に人の付加価値は凝縮されていくのではないかなと思います。
そして、採用活動においてもこのような未来の変化を自社の物語と併せて伝えていき、人の付加価値が凝縮されていく部分に自社の事業成長をイメージして経営を進めていくことや、その中で「~な人材になってほしい」という新卒への期待などをしっかり伝えていくことが求められます。これらは採用担当から伝えてもなかなか刺さりづらい面もあるので、CHROをはじめとしたCXOレイヤーから訴求していくことをオススメします。
おわりに
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。少しでもここまでの内容がみなさまの採用活動のヒントになればうれしいかぎりです。わたし自身もまだまだ勉強中の身なので、ぜひみなさんの意見や感想、さらには「こんなやり方もあるよ!」みたいのがあれば、ぜひコメント欄やXでのツイートで教えていただけるとうれしいです!ありがとうございました!
※最後に・・・価値を感じていただけましたら、ぜひポチっと「スキ❤」の応援もよろしくお願いいたします!!記事を書く励みになります!!
↓